「認知は金で買えるが、愛は金では買えない」

――トライバルメディアハウスが勧める「熱狂ブランド戦略」

2016/02/17
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トライバルメディアハウスは1月27日、「熱狂ブランド戦略セミナー」を開催。同社の代表取締役社長の池田紀行氏が、ブランド愛顧度の高い「熱狂顧客」を育成する必要性とその方法を説き、ヤッホーブルーイングとコーセーが顧客育成における事例を紹介した。本記事では、池田氏の講演をレポートする。


 

トライバルメディアハウス代表取締役社長の池田紀行氏

トライバルメディアハウス代表取締役社長の池田紀行氏

「従来型のマーケティングがいよいよ限界に達しつつあるという非常に強い想いがある。いま、これだけ高度に市場が成熟した中で、従来の手法、同じようなフレームワークを用いて戦略を立てるのはもう限界」

講演の冒頭で池田氏はこう強調した。トライバルメディアハウスの池田氏は、これまでトップブランドの熱狂的な顧客と共創マーケティングを実施してきた中で、「熱狂顧客」が持続的な競走優位性の源泉になるとの確信を得たという。これを受け、今後の低成長時代におけるブランドマーケティングは、コアファンを中心に関係性を作って進めるのが良いという考えに至ったと言う。

「これからの世の中で売れる製品は?」――池田氏はその条件として河野武氏が提唱した「最高」「最安」「最愛」のポジションを紹介。技術競争が顧客ニーズに追いつくまでは「最高」すなわち製品のスペックが高いことが選ばれる理由になる。しかしその後はコモディティ化し価格競争になる。値引きやキャンペーンといった施策は一時的な売上アップやブランドの再想起になるが、持続しない。
「こうした施策でしか買ってくれないお客様は本当にみなさんにとって大事なお客様ですか?」と、池田氏は様々な業界の参加者が集った会場に向かって問いかけ、「最愛」ポジションをブランドとして重要視していくべきと説いた。

「最愛」ポジション獲得は持続的な競走優位をもたらす

「最愛」ポジションを獲得するメリットは、売上増とコスト減による利益率向上。顧客満足から顧客ロイヤルティへ、そして熱狂状態になれば、顧客は他に乗り換えずそのブランドを買い続けてくれる。その一部は「熱狂的推奨者」となり、顧客が顧客を呼び込んで売上が上がる。さらに、宣伝・マーケティング予算も圧縮される、という訳だ。その上で、こうしたメリットが、3年~5年のスパンで持続的な競走優位の源泉になるところが、一番重要だと池田氏は解説する。
「なぜなら、認知はお金で買えるが、愛はお金では買えないから。競合が真似しようとしてもすぐにはできない。お客様の愛は、お金で簡単に買うことはできません」

持続的な競走優位の源泉になるところが一番のポイント。「熱狂顧客に買い支えられているブランドが、1,2年後に売上が急降下することはまず考えられない」と池田氏

持続的な競走優位の源泉になるところが一番のポイント。
「熱狂顧客に買い支えられているブランドが、1,2年後に売上が急降下することはまず考えられない」と池田氏

 

パレートの法則も用いながら2割の顧客が利益の8割を創出している点を指摘し、池田氏は、マーケティング予算の多くは低関与層の認知拡大に充てられているが、高く関与する層が離脱しないよう、熱狂顧客や熱狂的推奨者になるよう、そこにこそ予算を割くべきと提言した。

「顧客満足度(CS)やブランド・エクイティインデックスなど様々なKPIが存在するが、一番重要視されているのは、ブランドの数年後の売上の先行指標は何かということ。それが『熱狂度』だと考えている」と池田氏。顧客ロイヤルティの指標として知られるNPS(Net Promoter Score)では、あるブランドについて、「友人や同僚にどのくらい勧めたいか」を質問し、0~10の11段階でスコアリングする。NPSは高関与商材における持続的な利益成長と相関があるものの、スーパーやコンビニで販売されている低関与商材においては課題もあることを紹介し、熱狂ブランド戦略ではもう一つ「熱狂度」指標をNPSと併用して、まず自社ブランドへの「顧客の感情の構造」を把握することを勧めた。

顧客を熱狂させ、推奨者に育成するには、ブランドに対する顧客の感情を把握し、ブランドに合った施策を設定する

顧客を熱狂させ、推奨者に育成するには、ブランドに対する顧客の感情を把握し、
ブランドに合った施策を設定する

無印良品、ハーレーダビッドソン、ヤッホーブルーイング……熱狂顧客と商品開発し、コミュニティ醸成に取り組む企業群

続けて池田氏は、熱狂顧客の育成方法や商材カテゴリに合わせた戦略内容を解説。随所で実際の企業の施策を交えて説明したが、その中からいくつか紹介したい。

戦略の一つとして挙げられた「熱狂顧客との商品開発・商品改善」では、無印良品「IDEA PARK」、伊藤ハム「ハム係長の商品開発部」、LEGO「LEGO IDEAS」などの取り組みを紹介した。
また、顧客を惹きつける「熱狂プログラム」戦略として、ハーレーダビッドソンの「10の楽しみ」、ヤッホーブルーイングや、キャンプ用品メーカーのスノーピークのオフラインイベントとオンラインコミュニティの連携事例などを例示した。

終盤には、熱狂・共創戦略の効果測定法が解説された。どのような施策でどれだけ熱狂度が上がったかを測ることが重要だが、企業ごとに指標を設定する必要がある。「ブランドの未来の競争力を測る“売上の先行指標となり得る”客観的な指標を設定し、PDCAを回していくところから逃げてはいけない」と池田氏は語り、「熱狂」がどれだけマーケティングのROI向上につながっているか測っていく必要性を説き、講演をしめくくった。

講演の中で、顧客のLTV(Life Time Value 顧客生涯価値)向上がたびたび謳われ、また、さらに理解を深めるための書籍として、『売上につながる「顧客ロイヤルティ戦略」入門』も紹介されていた。「熱狂顧客」「NPS」「LTV」「顧客ロイヤルティ」といったキーワードに代表される顧客価値の追求は、今後のマーケティング活動でより注目され、大きな流れとなっていきそうだ。