コンテンツマーケティングの新たな手法を考える

――「第3回FOUND Conference in Tokyo 2016」レポート【第1部】画像・動画・VRを使ったコンテンツの可能性

2016/02/19
  • facebookでシェア
  • twitterでシェア
  • G+1
  • はてなブックマークに追加

1月27日、Ginzamarkets主催のイベント「第3回FOUND Conference in Tokyo 2016」が開催された。コンテンツマーケティングに先進的に取り組む9社が登壇し、3つのテーマについてパネルディスカッションが行われた。

満員の会場では、参加者がディスカッションに興味深く耳を傾けていた。

満員の会場では、参加者がディスカッションに興味深く耳を傾けていた。

第1部のテーマは「画像・動画・VRを使ったコンテンツの可能性」。コンテンツマーケティングといえば、画像とテキストからなる記事コンテンツやオウンドメディアを思い浮かべる人も多いだろう。当日は、そのような従来の手法ではなく、画像・動画・VRによるコンテンツマーケティングを行っている3社がノウハウを共有した。

パネラー:
土屋鞄製造所 お客様コミュニケーション本部 バッグマーケティング室 沼田 雄二朗氏
資生堂 技術企画部 技術コミュニケーショングループ グループリーダー 藤岡 智愛氏
ネクスト HOME’S事業本部 リッテルラボラトリーユニット ユニット長 秋山 剛氏

モデレーター:
インフォバーン DIGIDAY[日本版]編集長 長田 真 氏

「SNS×画像」でブランドイメージ伝える
――土屋鞄製造所

土屋鞄製造所は大人向けファッション鞄・革小物、子供向けランドセルなどを製作販売している。創業50周年を記念して生産した「大人ランドセル」は、丁寧な職人仕事とスマートな佇まいで即日完売、再販されるヒット商品となった。同社はFacebookやInstagramでの画像を使用したマーケティングで、ブランド認知向上に成功している。登壇はソーシャルメディア運用・カートシステム企画開発・E-commerceブランドリサーチを担当する沼田氏。

同社は品質の高さや情緒的な価値を伝える手段として、SNSでの画像投稿を行っている。SNS参入当初は商品のリンクを貼って投稿していたが、反応は芳しくなかった。「SNSのようなパーソナルな空間で宣伝色を出しすぎた」と沼田氏は分析する。
現在は「ちょっとセンスのいい友だち」をイメージして宣伝色を控え、時には商品と関係のない画像を投稿するなど、あらゆる角度からブランドメッセージを伝える工夫をしている。「機能的だから買うという商材ではないので、ブランドの世界観に興味を持ち、共感してもらう必要がある。世界観を伝えるために、画像という手段は直感的で効率的」と話す。

運用面ではSNS担当者を置いているものの他の業務と兼任で、大きなリソースは割いていないという。美大出身で写真が得意なスタッフも多いため、担当者以外のスタッフが撮影した画像も投稿するなど、うまくリソースを調整しているようだ。また、社内でInstagramのコンテストを行うなど、会社全体を巻き込んで取り組んでいるという。

現在のフォロワー数は、Facebookが約30万人、Instagramは約3万人と順調に数を増やしているが、その効果測定には課題を感じているという。SNSでのブランディングが、お客さまの来店・購買などの行動にどの程度結びついているのかを読み解く方法を模索中のようだ。一方で、Instagramはブランディングに活用しやすいチャネルであり、今後はインスタグラマーをどんどん巻き込んでいきたい、と語った。

自社の技術力を動画で紹介、多目的に活用
――資生堂

資生堂は2010年から自社の技術力を紹介する動画コンテンツをメインとするサイト「PICK UP TECHNOLOGY」を運営。動画は、マトリョーシカを用いて細胞分裂を表現したり、口紅のオイル成分を分離させた試験管をグラフィックイコライザー風に見せたりと、専門的な知識がなくても楽しめる内容だ。登壇は、技術コミュニケーショングループ グループリーダー 藤岡氏。

「PICK UP TECHNOLOGY」は、資生堂の技術力を広く知ってもらうことを目的に開設された。動画中では専門用語を排除し、視覚から受け取るイメージで同社の技術力を理解できるよう工夫されている。動画コンテンツのメリットには、ニュースサイトで取り上げられやすいこと、イベントなどのリアルな場で流せること、製品の科学的根拠をわかりやすく示せることなどがある、と藤岡氏。 また動画は、視覚によって感覚的理解を促すため多言語展開も比較的容易で、売上のおよそ1/2が国外という同社にとって、非常に適したマーケティング手法であると言えるだろう。

技術力を伝えるための表現方法を選定するにあたって、長くテレビCMを作ってきた経験がある同社にとって動画は取り組みやすかった。しかし、「受動的に見ることが多いテレビCMとは違い、ウェブ動画では最初の数秒間で心をつかまなければいけない」とウェブならではの難しさを感じており、それは今後の課題であると述べた。

藤岡氏はこうした取り組みを振り返って、想定外の効果があったことに言及した。「動画の再生数やPVはコンテンツの評価として気にかけるが、イベントなどのリアルな場や社内教育の場での活用など、多目的に展開できている。最近ではニュースリリースを出す際も、ウェブ動画を使用して何かできないかなど、社内での連携を模索する動きが高まっている」と語った。

VRプロダクトで住まい探しをアミューズメントに
――ネクスト HOME’S

日本最大級の不動産ポータルサイト「HOME’S」を運営するネクスト。同社はスマートデバイスを他社に先駆けて開発するなど、不動産業界でテクノロジーに強い会社と認知されている。リッテルラボラトリーは同社の研究開発部門で、ユーザーエクスペリエンスの追求やレコメンデーション機能の開発を行う。登壇はユニット長を務める秋山氏。

秋山氏はリッテルラボラトリーの2つのプロダクト、「すごい天秤」、「GRID VRICK」を紹介。「すごい天秤」は、天秤型のタンジブルデバイス。住みたい場所の最寄駅を入力し、天秤の片方に家賃を、もう片方に間取りなどの条件をかけると物件検索が始まり、備え付けのモニターに検索結果が表示される。さまざまなリアルイベントで展示されている。「GRID VRICK」はおもちゃのブロックで間取りを作ると、画面上にバーチャルの部屋が現れるVRプロダクト。専用のモニターを着用すると室内をウォークスルーでき、部屋の雰囲気や日照などをイメージすることができる。現在、製品化を進めているという。

不動産検索は「エリア」「家賃」「間取り」など、さまざまな条件がある。ECサイトのようなレコメンド機能は不動産においては納得感が低く、上手く機能しない。「従来の不動産検索機能は便利だが、あまり楽しいと思ったことがない。家探しはもっと楽しいはずなのになぜだろうと考えた」と秋山氏は話す。
導き出した答えは「コミュニュケーションしながら家探し」と「大人だけではなくて、家族みんなで楽しめる家探し」だった。そこで、VRを使って「住まい探しをもっとおもしろく、楽しく、今までになかったかたちで提供すること」を目指した。

今後は、視覚だけではなく五感をフルに使ったVRに取り組んでみたいという秋山氏。VRでは専門的な技術との協働も重要であるため、研究開発とビジネスはもっと連携していくべき、と続けた。お互いを巻き込んで新たな価値を生み出すために、双方の立場を理解するコーディネーターが必要になるだろうと話した。

第1部を振り返って

ディスカッションの最後に、モデレーターの長田氏は「動画のプラットフォームといえばYouTubeだった時代から、2014年の『アイスバケツチャレンジ』ブームを経て、今や動画投稿数でいえばFacebookの方が上、というデータもある。たった1年半ほどで、コンテンツを取り巻く環境は急激に変化している」と語った。従来のコンテンツマーケティングは検索での流入を想定しているため、テキストが非常に重要であった。しかし、ソーシャルメディアが隆盛し技術が進歩した現在、画像・動画・VRを使用したコンテンツマーケティングの存在感は、日々大きくなっている。それぞれのフロンティアである3社のチャレンジに今後も注目していきたい。

株式会社スペースシップ 人材募集中!