一人ひとりの顧客行動を詳細に観察し仮説構築に役立てる

――ビービットが新ソフトウェア「Usergram(ユーザグラム)」をリリース

2017/02/03
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ビービットのデジタル行動観察ツール「Usergram(ユーザグラム)」が2017年初頭、ついにリリースとなる。ユーザグラムのリリース背景、ツールの特徴、今後の方向性などについて、同社ソフトウェア事業部 責任者の三宅史生氏と、同事業部 コンサルタントの生田啓氏にお話を伺った。

 顧客の行動観察から顧客像を浮かび上がらせる

3月半ばに配送先が地方から東京に変更された10代の会員が、4月になって急にお洒落なファッションアイテムのページを見始め、悩んだ挙句買わずに離脱する。その後7月初旬になっていくつかのアイテムを買い始める……。

これは架空の話だが、ユーザグラムによって可能となる顧客行動観察の一例である。このように顧客行動が可視化されれば、たとえばこの顧客はいわゆる“大学デビュー”をするかしまいか悩んでいたのだと想像できる。

ビービットの理念を具現化したサービス

同社のコンサルティングサービスでは、従来からリアルなユーザでの行動観察調査に基づいたサイトリニューアルなどのスポット案件を多数受けてきた。しかし最近になって、運用の中で継続的に改善を行って欲しい、とりわけ、行動観察調査を継続的、かつ、小規模に行ってほしいとの依頼が多くなっていた。

だが、コンサルタントが稼働するとなかなか小規模で行うというのが難しい点もあり、ツールとして顧客理解に基づいた成果改善を実現できないかを2013年から模索してきた。
ツールのプロトタイプを制作してはクライアントに使ってもらう、というサイクルを繰り返し、どのようなシステムがクライアントのニーズに答えているのかをブラッシュアップしてきた。

結果的に、「行動観察」に重点を置いたシステムとすることで主要なニーズに応えることができるようになったという。

「マーケターはみなさんデータを持っているけれども、どうしても統計データに依存しがちです。たとえば、ある企業では、ECで3回購入(CV)するとロイヤル顧客になりやすいというので、キャンペーンで購入回数を増やしていました。しかし、『なぜ』3回でロイヤル顧客になるのかという根拠がわからなければ、数字が独り歩きしてしまうのです。」(三宅氏)

ユーザグラムともっとも相性が良いのはウェブサイト上の行動が顧客の行動の大半を占めるECなどのサービスだという。このようなサービスの運営者が、ログデータを全体的に分析していては見えなかった顧客の特徴を把握し、その背景や心理を理解することが可能となる。

ユーザグラムで行う行動観察は、同社のコンサルティングサービスの一部を代替してしまう可能性もありそうに思えたので、カニバリゼーション(自社製品・サービスどうしの競合)について尋ねたところ、「もちろん一部そのような状況になることも考えられるが、逆にクライアント側で考えた仮説をもとにした改善策立案などの相談が増えるというシナジー効果も期待できるし、そもそもビービットが企業理念として最重視している顧客志向を広げるということにつながるので、大上段でOKだと考えている」ということだった。

ビービットが以前から展開している広告効果測定ツール「WebAntenna(ウェブアンテナ)」との関係についても尋ねた。ウェブアンテナは広告の効果“検証”(Check)を行うものであり、個々の顧客の嗜好は見ることはできない。一方、ユーザグラムは数字から読み取れない文脈を読み取り“仮説”を立てることを得意とする。そのため、PDCAで言えば、ユーザグラムでウェブ戦略や企画(Plan)を立て、ウェブアンテナでCheckを行い、結果をユーザグラムで深掘りし施策の改善(Action)につなげられるので、2つのツールの相性は抜群だとしている。

行動観察に特化し「シンプルさ」にこだわる

ユーザ一覧画面

ユーザ一覧画面
(※画像クリックで拡大)

ユーザグラムの実際の画面を見てみよう。横軸が時間になっており、顧客のページを閲覧するとその時間の棒グラフが縦に伸びる。顧客の行動が「購入」であった場合にはグラフは黄色く変化する。

各顧客のアイコンをクリックすると、顧客ごとの具体的な行動を見ることができる。いつ、何のデバイスで、どこから流入し、どのページに何秒滞在し、何を購入したのか、というデータが見られる。

ユーザ詳細画面

ユーザ詳細画面
(※画像クリックで拡大)

また、購入回数が多い顧客の行動データだけを絞り込んで見ることができる。商品を購入(CV)した際に付与される顧客IDをユーザグラムは取得できるので、購入回数の多い顧客のIDをデータベースから抜き出し、ユーザグラムに入力することで抽出ができるのだ。個人情報は企業サイドにあるままなので、情報管理の点からも安心できる。

ユーザグラムの強みは、そのシンプルさだ。行動観察に特化したUIとなっており、各顧客のカスタマージャーニーを見るまでの手順も実に簡単だった。

人間の心理や行動特性を探求し、真に役に立つ高品質な製品やサービスを創出したいという同社の理念にまさにぴったりマッチしたサービスである。

量的検証機能を実装予定。スマートフォン向けSDKも計画中

今回のリリースにより、クライアントには自社サイトに埋め込むタグが配布される。これを用いて自社サービスのデータを蓄積し、2017年3月~4月頃に予定されている正式版のリリースを境に料金が発生するという。

また、正式版のリリース後、量的検証機能の実装を予定している。これにより、ある顧客と類似した行動をとっている顧客が何名いるかを探索し、その類型の顧客を基準にマーケティングの改善を行うことが効率的といえるのかを検証することができるようになる。

さらに、まだリリースが確定しているわけではないが、ユーザグラムのスマートフォンアプリなどのSDKを提供する計画もあるという。アプリから情報を取得することが可能となり、顧客の行動がより鮮明に把握できるようになる。

これだけの機能ながら、初期費用は無料。月5万円から、PVに応じた従量課金制となっているのは魅力的だ。

ユーザグラムは、ビッグデータ活用や機械学習が叫ばれ、膨大なデータを全体的に分析することが良しとされる今日にあえて逆行し、「そのデータ、本当に理解していますか?」と疑問を投げかけて鋭く切り込んでいくサービスであると感じた。

ユーザグラムがどのようにデジタルマーケティングを変えていくか、今後を注視したい。

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