動画マーケティングの最前線を探る

――リクルート Media Technology Lab.「動画マーケティング勉強会」レポート

2017/02/17
  • facebookでシェア
  • twitterでシェア
  • G+1
  • はてなブックマークに追加

文:大下文輔

動画のマーケティング活用への関心が高まる中、それを主題にした勉強会が催された。主催はリクルートホールディングスの事業開発組織であるMedia Technology Lab.(メディアテクノロジーラボ、以下MTL)。2006年に始まった同社の「調整さん」が各種イベントのスケジューリングツールとして利用されるようになった状況で、自らイベントを主催しようと考え、FacebookにSNSマーケティング部を立ち上げ、リアルイベントとしての勉強会を開催している。当日はMTLのゼネラルマネージャーである古川央士氏が進行役とディスカッションのモデレータを務めた。本稿では、4人の登壇者によるプレゼンテーションの内容をダイジェストしてお届けする。

顧客の心理状態に応じた動画の企画を

ローカスのセールス&クリエイティブ局チーフコンサルタントの満留幸治氏は、「動画の強み」「市場環境」、そして「顧客の心理状態に応じた動画企画の考え方」、いわば動画マーケティングを成功に導くための制作/活用の基礎的な考え方について論じた。その内容をごく手短にまとめると次のようになる。

動画の強みのポイントは、

1)文字や写真で伝わりにくいニュアンスを伝えることができる情報の伝達力がある
2)情報量が多い
3)記憶されやすい

という点にある。その結果、静止画に比べて訴求する力が強く、商品・サービスへの購入意向を高めやすいため、BtoCだけではなく、BtoBへの活用が進んでいる。

動画マーケティングのポイントとして、過去にはCM内容を最適化することに主眼が置かれていたが、近年ではスマートフォンの普及などにともない、配信先の多様化、配信面の増加が進んだことで、目的やターゲットに応じた動画内容や配信先を変えつつコミュニケーション効果を高めることに向かっている。
例えば、売上に直結するパフォーマンスを狙う場合には短尺で興味を惹くことが有効であるし、優良顧客やファンの育成を狙う場合にはコンテンツへの共感を目指すことが効果的である。

動画の制作にあたり、「企画」「表現」「構成」の三要素について、顧客の心理を踏まえることが重要になる。動画制作の目的やターゲットは、5W1Hでしっかりと捉えるべきである。それは、誰に(Who)、なぜ伝えたいのか・どう感じて欲しいのか(Why)、何を伝えるのか・製品の提供価値は何か(What)、いつ(When)、どこで(Where)、どのように伝えるのか・どんな表現か(How)ということである。

消費者の興味関心をもっと高めるためには、SNSやウェブメディア等でシェアされやすいコンテンツ(満留氏の用語では「Engagement重視のブランドコンテンツ」)が有効になる。視聴者が意図的に「つっこめる」余地を残した、ネット上でバズが発生するような動画は、一方的にメッセージを伝える広告と違い、コンテンツの面白さによって広告主と視聴者・消費者との橋渡し(Engage)ができる。興味を持ってもらえるようにするためには、「感動」「笑い」「驚き」といった感情が揺さぶられる普遍的な事象を提示し、そこにブランドのメッセージを添える、というやり方で視聴者の共感を促すように作る。

パフォーマンスの高い動画の要件

スマートフォン用ニュースアプリである「SmartNews」はよく知られた存在である。「SmartNews」のマーケティングディレクター松岡洋平氏は、同社のサービスにおける動画についての状況と事例について発表した。
動画広告のパフォーマンスは、「オートプレイ開始後、あるポイントまで見てもらえるか」と「最後まで見てもらえるか」という2つの要因の組み合わせで検証しているが、同じフォーマットの動画であっても、パフォーマンスは大きくばらついているという。パフォーマンスの良い動画広告のポイントは、

1)開始後一定の秒数内に何の広告かがわかること
2)開始後一定の秒数内にシーンの切り替わりがあること
3)被写体に近づいている(寄り画である)こと
4)後半に広告のメインの訴求要素の振り返りがあること
5)上部分を動画、下半分をテキストに固定しているパターン

被写体から離れた画(引きの画)でありつつテロップがないもの、冒頭から音楽で惹きつけようとするものは、ユーザーの視聴環境に合っておらずパフォーマンスの悪さにつながるという。

松岡氏は、話題喚起を目的とした、宇多田ヒカル、ももいろクローバーZ、BIGBANGのプロモーションについて紹介。それを総括して次の見解を示した。

1)話題化するためには、リーチボリュームの絶対量が必要で、その指標としては100万再生/日以上であり、SNSで話題になるような瞬発力としては10万再生/時間が必要である。
2)広告といえども素材のパワーが必要であり、「限定」×「オリジナル」×「媒体に最適化されている」ことが必要である。要は広告が見たくてダウンロードするといった力がいるということである。
3)時間がないユーザーを対象として、動画のダイジェストを静止画とキャプションででまとめた記事を作成し、そこに動画を埋め込んで流通させることも有効なケースがある。

HowTo動画は、真似できる手軽さと実用性がキモ

C Channelビジネスマネージャーの武藤崇雄氏は、F1 層(20歳から34歳までの女性)を対象とした動画メディア「Cチャンネル」の概要とともに、効果的な動画のポイントについて発表した。

Cチャンネルは「女性の『知りたい』を1分で解決する」をコンセプトとしたライフスタイルメディアであり、96万人のユーザーを持つ。メイク、恋愛などといったジャンルごとに1分間の縦型ハウツー動画を制作、ストックしている。

ビジネス上、商品への興味関心や理解を深めることがCチャンネルの目的だが、そのために重要なことは、女子の「知りたい」に答えつつ、「自分ゴト化」させるようにすることである。そのためのチェックポイントは

1)真似できる手軽さや実用性があるか
2)動画の「頭」に興味を持たせるポイントがあるか
3)動画に「Wow」「驚き」があるか
4)その動画のテーマがコピー化されているか
5)ムービージェニック(見栄えのする動画)かどうか

であるという。

個人に最適化された情報を送るパーソナライズド動画

日本写真印刷コミュニケーションズは、「パーソナライズド動画」、すなわち、視聴者1人ひとりに合わせて作られた専用の動画コンテンツを生成、配信している。同社のOneDougaプロジェクトマネージャーの磯野周司氏は、その特徴や利点を解説した。

パーソナライズド動画は紙媒体のDMと比べると、誰が開封して、誰が見たか、どの程度見られたかがわかるとともにストーリー強制力が強く、個人ごとに可変できるデータとしてテキストや画像だけでなく、画像や音声が使える。

ユーザーごとの各種データに応じてフレームに画像や音声をマッチング・挿入し、さらにはN人分の動画を自動的に生成できる技術が、パーソナライズド動画を支えている。

定期点検や車検の顧客の取りこぼし防止にパーソナライズド動画を活用している。紙のDMによるアプローチでは、1人ひとりの状況に応じた情報提供ができないが、パーソナライズド動画なら、既存客ごとに点検の内容を変えて、検査の90日前、60日前に送信することで、よりきめ細やかな情報提供が簡単に、低価格で行えるという。

今後の活用について磯野氏は、セールス支援のみならず、既存顧客への顧客保全、リクルーティングなどに活用の幅を拡げ、HTML5によるインタラクティブ性付与、さらに動画の軽量化などに取り組んでいきたいと語った。

 

イベント日時:2016年11月10日
場所:ヒューリック銀座7丁目第2ビル B1F MTLカフェ

 

記事執筆者プロフィール

株式会社スペースシップ アドバイザー 大下 文輔(Bun Oshita)

 

株式会社スペースシップ アドバイザー 大下 文輔(Bun Oshita)

大学では知覚心理学を専攻。外資系および国内の広告代理店に18年在籍。メディアプランニング、アカウントプランニング、戦略プランニング、広告効果測定のためのマーケットモデリング、マーケティングリサーチの仕事に従事する。またその間、ゲーム会社にてプロダクトマーケティング、ビジネスアライアンスに携わるとともに、プロジェクトマネージャーとしてISPやネットワークビジネスの立ち上げに参画。
2011年よりフリーランスとなり、マーケティングリサーチやコンサルテーションを行っている。2015年12月よりMarketingBase運営の株式会社スペースシップ アドバイザーに就任。