日本マクドナルドが2年でV字回復を成し遂げた理由とは?

――どこまでも顧客視点で考えた「ソーシャル時代」のマーケティング

2017/11/21
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2014年に相次いだ不祥事で業績不振に陥った日本マクドナルドであったが、ここ数年で業績がまさにV字回復している。

日本マクドナルドホールディングス 連結決算推移(日本マクドナルド発表データより編集部作成。数値は億円未満を四捨五入)

日本マクドナルドホールディングス 連結決算推移
日本マクドナルド発表データより編集部作成。数値は億円未満を四捨五入)
(※画像クリックで拡大)

この劇的な復活を支えたマーケティング戦略や施策は何だったのだろうか。数多くのメディアで取り上げられた記事(2017/10/20までのもの)を参考にまとめてみたい。

「基本」の重要性を再認識し、反省を行動に移す

いくつもの記事を通して見えてきたのは、V字回復につながる施策群のベースには、マクドナルドの不変の理念でもある「QSC&V」について、あらためて振り返り、向上させてきたことだ。
QSC&VはそれぞれQ=quality(品質)、S=service(サービス)、C=cleanliness(清潔さ)、V=value(価値)である。順に見ていこう。

Q=quality(品質)
業績悪化の原因と言える品質への不安を払拭(ふっしょく)するべく、品質や安全性について、以前よりも詳細な情報を公開することにした。
ハンバーガーの包装にはQRコードを付け、商品の原産国から栄養情報、安全性まで、あらゆる情報を見ることができようにしている。
また、ウェブサイトのグローバルメニューでは「メニュー」「キャンペーン」に続いて「見える、マクドナルド」が3番目に配置されており、品質や栄養に関する項目を多数設置し、消費者からの疑問約3,700件に対して、一つずつQ&Aサイトなどで回答している(※1)。

S=service(サービス)
業績が低迷している間、マクドナルドは安全策で無難なことやヘルシーさの訴求に走ってしまっていた。
しかしお客さまが求めているものは「おいしそうでワクワクするもの」であることを再認識し、より目立ってより楽しいキャンペーンを多数実施した(※2)。『Pokémon GO』とのコラボレーションがその筆頭と言えるだろう(※3)。

C=cleanliness(清潔さ)
業績が最悪であった2015年当時、マクドナルドの店舗は老朽化が進み、時代について行けていない姿が散見されており、決してモダンな場所とは言えない状況だった。
そこで、2015~2018年に全体の6割に当たる1,800店を改装。カフェ調の店舗を70%にまで増加したのである(※1)。

V=value(価値)
上述のQ、S、Cを通して、マクドナルドは“Fun place to go”であるとあらためて認識してもらい、実際に楽しい店舗体験を提供することで、消費者にとっての価値を再び上げることができ、それが業績にもつながったと言えそうだ。

ウェブメディアやSNSの真の効果とは

マクドナルドは、消費者が思い付きで食べることを決めるという意味で「インパルスビジネス」と言うことができ、常に消費者の目に触れるようにする必要がある。
しかし、業績不振により、マス広告を大量に投入できるだけのマーケティング予算が無かったことに加えて、当時のマクドナルドは直接消費者にニュースを伝えても信用してもらえない状況だった。

そこで、2015年10月に日本マクドナルド 上席執行役員 マーケティング本部長に就任した足立光氏は、マス広告だけでなく「PR(メディア)」、「SNS(ファン)」、「自社メディア」に力を入れた(※4)。今回はその中でもPRとSNSに焦点を当てて解説したい。

PR(メディア)
マクドナルド自身が語るのではなく、ウェブメディアなどで取り上げてもらうことにより、マクドナルドからの情報を「世間ごと」化させる。そうすることで、「世間で流行っているなら食べてみよう」と思ってもらえると考えた(※4)。

SNS(ファン)
マクドナルドの面白いキャンペーンなどをSNSで見た友人や家族からニュースが伝わると、それが今度は「身内ごと」となり、「それなら食べてみよう」という流れを作れるのではないかと考えた。
マクドナルドはSNS施策で主にTwitterを使っているが、Twitterは唯一マスに拡散する可能性があり、Twitter利用者に多い10代、20代は拡散力を持っていると考えているからだ。キャンペーン開始前にSNSで情報を拡散してもらってトレンドを作ってもらうこともできるという(※5)。

マクドナルドのマーケティング本部ナショナルマーケティング部部長である唐澤俊輔氏の「ソーシャルで話題にしてもらう3つの条件」として、
 1)コントラバーシャル(議論したくなる)
 2)ツッコマレビリティ(つっこみたくなる)
 3)フォトジェニック(写真に撮りたくなる)
を挙げている(※6)。

チキンタツタの例では、

1)「自分はタツタ派」「いやいや、タルタでしょ!」という議論を起こすことで、ソーシャル上でコメントしやすくなり、言及される数が増えた。

2)メディア発表の前日に、「チキンタ○タが発売!○に入る文字はなんでしょう?」というツイートをし、もっとも手軽にコメントできるツッコミ要素をいれた。

3)顧客がソーシャルで話題にすることを意識し、2016年から商品パッケージがわかりやすくインパクトのあるものに変わっている(下記パッケージを参照)。

人気メニュー「チキンタツタ」と新商品「チキンタルタ」(画像:J-CASTトレンド提供)

人気メニュー「チキンタツタ」と新商品「チキンタルタ」
(画像:J-CASTトレンド提供)

商品名も、カタカナで長かった名称を、「超グラコロ」など語呂が良いネーミングを採用するようになった(※7)。
これは企業目線で素材をアピールするのではなく、顧客目線に立ち、お客さまがソーシャルでシェアすることを考えたことによる変更であることがわかる。こうしたところでも顧客視点のマーケティングが徹底されている。

斬新なキャンペーン

マクドナルドはSNSを使ってキャンペーンを拡散していると上述したが、そのキャンペーン自体も斬新で面白い。以下に2016年1月~2017年8月に行われたキャンペーン中から主だったものいくつかを抜粋した。

ファン参加型キャンペーン(日本マクドナルド ニュースリリースより編集部作成)

ファン参加型キャンペーン
日本マクドナルド ニュースリリースより編集部作成)

それぞれのキャンペーン内容をまとめてみよう。

【チキチキランチ チキンレース】
期間中毎日正午12:00にもっとも近い時刻にリツイートしていた方1名に、優勝賞品として、ランチにぴったりの「チキチーセット」(税込500円)を1年間楽しめるようにということで、500円玉366枚(183,000円)をプレゼント。

【名前募集バーガー】
新商品の正式名称を公募から決めるキャンペーン。総応募数は5,016,926件となり、国内の「名前募集キャンペーン」史上最大級の応募数となった。受賞者の方にはバーガー10年分に相当する142万3,500円がプレゼントされ、応募者全員にマックフライポテト特別クーポンが配布された。

【マックの裏メニュー】
人気定番バーガーに、期間限定のスペシャルトッピングをアレンジしたマクドナルドお勧めの“裏メニュー”。合計で285通りのオリジナルハンバーガーをアレンジできた。

【『Pokémon GO』コラボレーション】
『Pokémon GO』が日本でリリースされたと同時にコラボレーションを始め、日本で最初の『Pokémon GO』パートナー企業となった。国内のマクドナルド店舗が、さまざまなアクションができる場所としてゲーム上のマップに登場する。

【マクドナルド総選挙】
 “あなたの推しバーガーを、日本一に。”というキャッチコピーのもと、立候補する12種類のバーガーがそれぞれ驚きの“公約”を宣言し、総選挙でマクドナルドの日本一のバーガーを決めた。

【マックvsマクド】
公式史上初となるマクドナルドの“愛称”をバーガーのおいしさによって対決するキャンペーンを開催した。各応援メニューの商品名が書かれたツイートの数で勝敗を決め、勝利軍のバーガーのお得な“優勝セール!クーポン”を、マクドナルド公式アプリとTwitterとで配布した。

期間限定商品のみではなく、実は売上の7割を占めるという定番商品のキャンペーンも頻繁に行うようになった(※8)。総選挙や裏メニュー、チョコポテトなどがその例だ。
定番商品はニュースがなく、話題にしにくかったため、長い間キャンペーンでは使われていなかったのだが、斬新なアイディアでニュースを作ることを試みたのである。

上記のようなキャンペーン自体の面白さと、SNSの拡散力と気軽さを利用することにより、キャンペーンは広く拡散され、毎回大成功となっている。

 

どんな時でも「ワクワク」を感じられ、必要があれば「安全性」を確認できる。そんな基盤の上に、SNS上での斬新で面白いキャンペーンの拡散によって、かつてのようにマクドナルド=Fun place to goであることが多くの人に再認識されている。時代の流れに沿って、顧客視点で変化を成し遂げたからこそ、マクドナルドは復活を果たしたと言えそうだ。

 


【脚注】

※1:マクドナルド・カサノバ社長独占インタビュー「あの会見とV字回復」 マクドナルドの復活
(2017/6/27 AERA dot.)
https://dot.asahi.com/aera/2017062600057.html

※2:成長する企業のビジネス戦略 Vol.24 日本マクドナルド株式会社
(2016/10/11 ISS Consulting 企業インタビュー)
https://www.isssc.com/special/interview/biz/1510

※3:マクドナルドが実践する「広めていただく」マーケティング【第1回】
リリース1枚で爆発した「ポケモンGO」プロジェクト
(2017/3/14 DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー)
http://www.dhbr.net/articles/-/4723

※4:「プレバズのKPI化」「話題化を軸にした商品設計」マクドナルド足立氏が明かすマーケティングのツボ
(2017/10/6 Web担当者Forum)
https://webtan.impress.co.jp/e/2017/10/06/26935

※5:マクドナルドV字回復は本物か?幹部が明かす、どん底で再認識した「強さ」の源泉 ヘイト超える“マック愛”、ツイッターで大拡散
(2017/9/14 日経ビジネスオンライン)
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/interview/16/090800019/090800002/

※6:マクドナルドが実践する「広めていただく」マーケティング【第3回】
なぜ「チキンタツタ」の復活に、「チキンタルタ」も同時発売したか
(2017/3/21 DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー)
http://www.dhbr.net/articles/-/4725

※7:マクドナルドの復活で見落とされがちな本質 「不祥事を消費者が忘れただけ」の見方は違う
(2017/3/29東洋経済オンライン)
http://toyokeizai.net/articles/-/164326

※8:マクドナルドV字回復は本物か?幹部が明かす、どん底で再認識した「強さ」の源泉 「裏メニュー」「チョコポテト」誕生の舞台裏
(2017/9/13日経ビジネスオンライン)
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/interview/16/090800019/090800001/

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