ノスタルジーマーケティングで“おやじ”を釘付けにする

――So-netのオウンドメディア「ゴールデン横丁」

2018/06/08
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ポストペットのモモでおなじみ、「So-net」。
ユーザの信頼も厚い老舗プロバイダが切り盛りする “おやじの憩い場”がある。それが「ゴールデン横丁」だ。So-netが提供するコンテンツサービスのひとつで、昭和30~40年代生まれのおやじ世代のツボにハマるコーナーを次々と繰り出し、密かなブームを巻き起こしている。並行運用するFacebookページでは、記事更新を告知する投稿に「懐かしい……」「これ、好きだった!」というコメントが並ぶ。

結果を出すのが難しいとされるコンテンツマーケティングの世界。多くの企業がオウンドメディアに挑戦しているものの、運用の難しさから撤退するところも少なくない。そんな中、トレンドとは無縁な“おやじ”たちの心を鷲掴みにし、PV数を伸ばし続けている秘密はどこにあるのか。自らを「ゴル横の店主」と称する会長氏(またの名をゴルさん)と、宴会部長ことミノ氏に語ってもらった。

おやじによるおやじのための本気メディア

「ゴールデン横丁」は、数多くの人気コーナーを有している。往年の名車・クラシックカーを紹介する『懐カーコレクション』、オーディオ全盛期の名機たちを紹介する『オーディオ名鑑』、70~90年台の洋楽ヒット曲や名曲をセレクトする『懐かしの洋楽・Golden Tunes』、昭和~平成初期のニュースを写真入りで紹介する『あの日あの時』など。趣味多き少年時代を過ごした大人男子(推定40歳以上)なら、ひと目見ただけで胸を締め付けられるようなモノやコトがあふれている。

人気雑誌『おとなの週末』とコラボレーションする「ゴールデン酒房」も、ゴル横の名物企画。雑誌で紹介された店で自腹飲みするレポートだ。シズル感あふれる食の画像に、酒好き・美味いもの好きのスタッフたちによるゆる~い会話が彩りを添える。まるで古き良き昭和の宴会風景だ。

「自分たちが純粋に好きなもの、楽しいと思うことだけ紹介しています。言ってみれば読者と同じ目線。『ねえねえ、こういうの好きじゃなかった?』『コレ流行ったよね?』と伝えたくなるものを共有して、おやじ世代が盛り上がれる場を作りたかったんです」と会長氏。

「大人になっても、昔好きだったものはずっと好きなままだったりします。スーパーカーブーム世代なら、今はミニバンを転がしていても、カウンタックの写真にグッときたりしますよね。僕らも読者の皆さんと同じ洗礼を受けた世代ですから、ツボがわかるんです(笑)」とミノ氏も楽しそうだ。

取材に応じてくれた会長氏やミノ氏を含め、「ゴールデン横丁」運営に関わるスタッフは、ほぼ全員が紛れもないおやじ世代。取材も撮影も自分たちの足を使って行う。『懐カー』に掲載する写真も、会長自らが休日返上でクラシックカーイベントを巡るほどの熱の入れようだ。単なる懐古趣味ではなく、今も夢中だからこそコンテンツの熱量も高くなる。ホンモノのおやじたちが、損得勘定抜きで(目をキラキラさせながら)奔走する姿が、ここにはあった。

リアルとバーチャルをクロスして熱烈ファンを獲得

「一杯呑みたくなる雰囲気を心がけている」というミノ氏の言葉通り、どのページをのぞいても肩の力の抜けた心地よさが満ちている。仕事を終えて立ち寄った居酒屋で、ネクタイを緩め、オシボリで顔をぬぐいながら他愛のない話を聞いているような……。「ゴールデン横丁」は、昭和生まれのサラリーマンがリラックスできるムードを心得ている。これこそが、一度訪れた“おやじ”が定期的に立ち寄りたくなる=リピーター率が高い理由でもある。

作り手の顔が見えることも、密かな工夫のひとつ。各コーナーに登場するイラスト化されたキャラクターは、すべて実在のスタッフだ。文章のトーンも居酒屋語りのようで、こちらの心も緩む。

「ウェブメディアでありながら作り手の顔が見える。しかもおやじ全開なので、親しみやすいのでしょう。ときどきサイトを覗いて、『なんか楽しそうにやってるな』『ちょっと寄ってみるか』と思っていただければうれしいですね」(ミノ氏)

Facebookページ「ゴル横かわら版」は、サイト更新の告知が主だが、コメントを通じてフォロワー同士が交流する姿も見られる。クラシックカーやレトロラジカセなど、懐かしい写真を肴に盛り上がっているようだ。管理人でもある会長氏がフォロワーのコメントに応えることもある。

「ここでの僕の役割は店長で、投稿するネタや写真は酒や料理のようなもの。それを見てワイワイやっているお客さんを見ながら、ときどきちょっかいを出したり、違うネタを提供したり。Facebookではそういう世界を作りたいんです」と会長氏。

ここに来れば、“あの頃”の話題で盛り上がれる仲間といつでも会える。ただ眺めているだけでもいいし、自ら語ってもいい。バーチャルとリアルが程よく混じり合うこの場所は、日常から少しだけ離れてホッとしたい人にとって「ちょうどいい塩梅」なのかもしれない。

うっかりクリックしてしまう!?ゴル横のマーケティング戦略

2人の楽しげな様子を見ていると、遊んでいる(!)ようにも見えるが、もちろんマーケティング戦略も考えている。百戦錬磨のおやじのみで編成されたチームだけに、そこは巧妙だ。

So-netでポータルサイト運営に長く関わってきたミノ氏はこう語る。「クリックされるためには、ユーザの心理状態が非常に大事なんです。ユーザがリラックスしている状態のときには、バナーもクリックされやすい。反対に、どれほどいいネタでも、サイトに警戒心を抱いていたらクリックしようと思いません。“リラックス”はマーケティングのコンセプトとしても有効だと思います」。

…ということは、サイト全体を流れるゆる~い雰囲気も、親近感の湧くキャラクターも、すべて計算づく!?実際、商業アピールがほぼ皆無にも関わらず、ポータルサイトにおけるバナーのクリック率と遜色ない数字を得ているという。もちろん、「おやじ同士で盛り上がりたい」「読者に喜んでほしい」という気持ちに嘘はない。足を止めた客を名調子で楽しませ、「この人が勧めるなら」と最後はついクリックしてしまう…寅さんを彷彿とさせる人情味あふれるマーケティング手法なのである。

「こう見えても、綿密に作戦を練っているんですよ。ただ、肌感覚を優先しているところはあって、どんなに話題になっているネタでも『こういうのは世のおじさんはつまらないだろうな』と思えば取り上げません。欲を出して尖ったことをやろうとしても、読者離れを起こすだけ。目先の数字にこだわるより、共感してくれる読者と末永く仲良くしたほうが、良いサイトに育ちますから」(会長氏)

数字が取りやすい芸能人のゴシップネタやお色気企画をやらないのも、同じ理由だ。少年時代から愛してきたものを語る場に、下世話な話はふさわしくない。堂々と盛り上がれる、懐かしくて、健全で、おもしろいネタしか取り上げない。ゴル横が目指すのは「おやじによる、おやじのためのファンタジーワールド」だ。明確なコンセプトの元、俗に染まらない大人の楽しみを提案し続けている。

だれも共感してくれなかった企画が人気サイトに成長するまで

「ゴールデン横丁」の記事制作や企画を手がけるのは、コンテンツ制作会社「ライトアップ」。サイト立ち上げ前から関わり、「ゴル横メンバー」として数名がキャラクター化してサイト内にも登場している。編集会議では熱きおやじトークを戦わせ、「ゴールデン酒房」の取材では、自腹で酒を酌み交わす。ゴル横に欠かせないスタッフの一員として、今も奔走中だ。

「実は、最初にゴル横の企画を思いついた時、どこの制作会社さんからも冷たくされてしまって(笑)」と会長氏。アイデアを説明しても趣旨を理解してもらえなかったり、うまくいくはずがないと断られたりして、パートナー探しは難航を極めたという。唯一、面白がって「やりましょう!」と盛り上がったのが、ライトアップだった。

「制作パートナーというより、最大の理解者。社内でもなかなか賛同を得られなかった、数名の同志で立ち上げた小さな企画がここまで反響のあるサイトに育った。一緒に汗をかきながらここまで走ってこられたのは、感慨深いですね」(会長氏)

思いつきや勢いだけでは、コンテンツマーケティングは成功しない。
40~50歳の男性は何を求めているのか、アイデアレベルから企画をブラッシュアップし、実現可能なコンテンツに落とし込んでいくのも、制作のプロであるライトアップの役目だ。打ち合わせや取材で濃密な時間を共にしていく中で、次々と新しいコンテンツが生まれ、人気コーナーに成長した。

ゴル横おやじたちは、いまも青春まっただなか。自ら楽しみながら、ああでもない、こうでもないと悩んで、記事を手作りしている。効率は悪くても、妥協はしない。まじめにアウトプットを続けた結果、他メディアから注目される機会も増えてきた。今後は、企業とのコラボ企画や地方取材などにも力を入れ、さらにチャネルを広げていくことを考えている。ニッチなコンテンツマーケティングの成功例として、ますます注目が高まっていくことが予想される。

「やりたいことがたくさんあるんです」と会長氏もミノ氏も目を輝かせる。
シルバーでもプラチナでもなく、“ゴールデン世代”。
ダンディーとは言えないが、今が楽しくて仕方ない、リア充なおやじたちにふさわしい呼び名かもしれない。

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