BtoBマーケティングの新潮流「ABM(アカウントベースドマーケティング)」を整理する

2018/08/10
  • facebookでシェア
  • twitterでシェア
  • G+1
  • はてなブックマークに追加

文:椎葉 宏

BtoBマーケティングの中で、ここ最近注目されているテーマに、「ABM(Account Based Marketing / アカウントベースドマーケティング)」がある。

ABMについては、シンフォニーマーケティングの庭山さんが執筆され、すでにバイブル化していると言っても過言ではない書籍『ABM(アカウントベースドマーケティング)』があるので、このコラムでは少し違った切り口で整理してみたい。

庭山さんの本については、以下の書評記事、庭山さんへのインタビュー記事を参考にしていただければと思う。

一般的なデマンドジェネレーション(Demand Generation)の流れ

見込客を獲得し(Lead Generation)、育成し(Lead Nurturing)、絞り込み(Lead Qualification)、営業へと引き渡すプロセス全体が「デマンドジェネレーション(Demand Generation)」だ。

よく以下のような図で説明されるものだ。

図1:一般的なデマンドジェネレーションの流れ(ファネル)

(※画像クリックで拡大)

これまでのデマンドジェネレーションにおいても、ターゲット層を明確にするところからスタートし、それをもとに、どのようなセミナーを行うか、どの展示会に出展するか、どのような広告を出すかなどの施策を企画してきただろう。

だが、実際の施策が始まると、ウェブサイトからのセミナー応募やメールマガジン購読にしろ、展示会での名刺交換にしろ、接点を得られた企業担当者の情報は、ひとまずデータベースに格納され、その後のナーチャリング活動により、特定ページ訪問、資料ダウンロード、お問い合わせがあった見込客を「ホットなリード」と判別し、営業へと引き渡す流れが一般的だったと思う。

要するに、見込客/顧客視点での自社に対する興味関心度合いをもとに「ホットなリード」が営業に渡されるわけだが、実は、営業担当者からしてみると、
「ここは顧客にはならないのでは?」
「この見込客に新規訪問する時間があったら既存の顧客に訪問するよ」
といった反応になることも多かったのではないだろうか。

こうして、MQL(Marketing Qualified Lead)→SAL(Sales Accepted Lead)におけるマーケティングサイドと営業サイドとのギャップが発生していたかと考えられる。

ABMでは何が違うのか?

一方、ABMでは、はじめの段階から、営業担当者サイドが興味関心を持っているアカウント(企業名)を明確にし、そのアカウント群を戦略的にマークしていく。

上記の一般的なデマンドジェネレーションの流れとの違いを図で表現すると、以下のように整理できそうだ。

図2:デマンドジェネレーションとABMの視点

(※画像クリックで拡大)

この図を使って、従来の流れとABMとで何が違うのか、もう少し考えてみたい。

図3:ABMでの優先順位

(※画像クリックで拡大)

「A」の領域の見込客は、従来の流れであっても、ABMであっても営業にとっては非常に有望な見込客と言えるのは変わらない。

一方で、いくら見込客サイドの関心が高くても営業自身がターゲットとしていない「B」領域の見込客には、営業担当者としてそれほど労力を割こうとは思わないかもしれない。

それよりも、いまのところそれほど見込が高いわけではなくとも営業にとって興味関心の高い「C」領域のアカウントの動きの方が気になるだろう。

前回のコラムで説明したように、インターネット普及後は、営業担当者へのコンタクトタイミングが購買プロセスの後ろの方へとシフトしており、たとえ既存の顧客であっても、接触済みの見込客であっても顧客/見込客の動きが営業から見えにくくなってきている(毎日のように電話するわけにもいかないだろう)。

図4:BtoBでの購買行動の変化とMA

(※画像クリックで拡大)

そのため「C」領域のアカウントに関する情報であれば、たとえ、メールを開封した、サイトのあるページを見た、というだけの従来のプロセスでは重視されなかったようなアクションであっても、その情報は貴重なものとなる。

マーケティング担当者は、自社の見込客/顧客だけでなく、営業担当者サイドにも目を向け、そのニーズにも応えていくことで、効率的かつ効果的なマーケティング~営業プロセスを構築することができるのではないか、というのが、ABMの発想と言えそうだ。

 

もちろん、実践するのは簡単ではなく、一般的なデマンドジェネレーションの仕組みが構築できていない状態からいきなりABMに取り組むのは難易度が高いし、そもそも、BtoBであればどんな事業でもABMが有効、というような万能薬でもない。

ターゲットや事業モデル、デマンドジェネレーションの仕組みも含めた現在のマーケティング~営業の連携状況などにより、取り組み方やアレンジの仕方は変わってくるので、もしABMが気になるという方は、ぜひスペースシップまでお問い合わせいただきたい。

 

記事執筆者プロフィール

株式会社スペースシップ 代表取締役 椎葉 宏(Hiroshi Shiiba)

株式会社スペースシップ 代表取締役 椎葉 宏(Hiroshi Shiiba)

京都大学経済学部卒業後、アンダーセン・コンサルティング(現アクセンチュア)戦略グループ、ネットエイジ(現ユナイテッド)事業開発担当執行役員を経て、2000年11月にアルトビジョン(2012年に3社統合し、現チーターデジタル)を設立。アルトビジョンでは、各業界トップレベルの企業のメールマーケティングを、戦略、クリエイティブ、オペレーション、システムの各面から支援。2013年4月より、スペースシップにおいてデジタルマーケティングの戦略立案から実行支援までを行っている。

株式会社スペースシップ 人材募集中!