TikTok事例:デジタルネイティブへのアプローチ

――ad:tech Tokyo 2018レポート(後編)

2018/11/30
  • facebookでシェア
  • twitterでシェア
  • G+1
  • はてなブックマークに追加

文:大下文輔

ad:tech Tokyo 2018レポート後編は、今話題のTikTokを取り上げる。題して『TikTokが切り開く、新しいショートムービーマーケティング』。

TikTokは世界最大のユーザを抱えるショートムービーのSNSだが、いわゆるデジタルネイティブ層に広く浸透している。他のメディアでは困難なユーザ層に直接アプローチできることが、マーケターにとっての魅力だ。
最初にTikTokのプロダクトマネージャー孙朔(通称クレア)氏が登壇し、TikTokの概要を説明した。

TikTokのクレア(孙朔)氏

TikTokのクレア(孙朔)氏

世界一のショートムービービデオプラットフォームTikTok

TikTokは、AI技術の導入と独自のUXや操作性を用い、誰もが影響力のあるショートムービーコンテンツを発信することを可能にした「ショートムービーアプリ」で、昨年夏に日本に導入されてから1年を迎える。2018年の第1四半期中、AppStoreからのダウンロードランキングで世界一になった。
今年8月には北米やヨーロッパで展開していた同様のサービスであるmusical.lyを統合し、世界一のショートムービービデオプラットフォームになった。今やデジタルネイティブの生活の一部となっている。

日本での成長は著しく、7月現在、日本国内での月間動画再生回数が130億回を突破するに至り、デジタルネイティブを対象としたグローバルなマーケティングキャンペーンを行うことができる。

なぜ、デジタルネイティブがTikTokをこれだけ使うのかについては、3つのCで説明できる。3つのCとは、Creator、Content、Connectionだ。

まず、Creatorだが、音楽とエフェクトが豊富にそろっていることで、誰もが簡単にクリエイティブな15秒ビデオを作ってシェアすることができる。
2つめのContentに関しては、自社のAIアルゴリズムによって、ユーザの世界観を広げるコンテンツの推奨を行うことができる。
Connectionは、ユニークなインターフェースによって、つながりが加速されるように設計されている。

コンテンツの面白さでつながっていく例の1つとして、雨効果というエフェクトを使った動画を示したい。降っている雨が手のひらをかざすと止まる、というものだがこのエフェクトを使うと多くの「いいね」が集まりやすく、日本だけでもおよそ25万の作品が投稿されている。

ここでプレゼンターが田村氏に交代し、ブランドにとってのTikTokの価値は何かについての話へと進んだ。

TikTokでの「自己表現」がブランドとの距離を縮める

TikTokのユーザは、影響力の強いスマートフォンネイティブ/デジタルネイティブである。彼らの43%が「誰よりも早く流行をキャッチしている」、また64%が「いい商品やサービスを周りに薦める」と言っている。

そして、52%のユーザがハッシュタグチャレンジを楽しみ、48%のユーザが実際にそれを行っている。
ハッシュタグチャレンジとは、企業があるテーマをユーザに指定し、ユーザはそのハッシュタグ付きの動画を投稿するというもの。同一のハッシュタグ(#)が付いたページに集まるユーザの多彩な動画が、投稿者と視聴者を増幅するという効果を生んで、エンゲージメントを高めることができる。
たくさんのハッシュタグチャレンジが成功しているところから、デジタルネイティブの心の琴線に触れることができれば、彼らはブランドとの距離をいとわず、ブランド体験を積極的に広げていると言える(例:「ペプシお祭リミックス」)。
あるいは、「自己表現」を求める気持ちが、TikTok上でブランド認知から行動喚起までの距離・時間を一気に縮めているとも考えられる。

TikTokの田村氏

TikTokの田村氏

ブランドリフトへの効果を後押しするAI

TikTokの動画は、主に家で見られているのではないか、と思われているかもしれないが、90%のユーザが通勤時間や外出先、または学校でTikTokを使っていることから、TikTokの消費場所は自宅の外でもなされていることがわかる。
また、1人でではなく、友達と一緒にTikTokを閲覧しているユーザも88%と圧倒的に多く、リアルな場でのコミュニケーションの道具になっている。1つのコンテンツが短いので、電車の乗り降りの途中でも難なくコメントやシェアができるなど、隙間時間に利用しやすいのが特徴になっている。

TikTokはアクションを誘発しやすく、ハッシュタグチャレンジなどの広告キャンペーンの効果を、その広告に接触した層と接触していない層で比較することでほぼ純粋な広告効果(ブランドリフト)が測定できる。TikTokはニールセン社と共同で調査を行っているが、ブランド認知も購入意向もいくつか調べたものについては確実に広告接触層で高い値を示した(ブランドリフトの効果があったと言える)。言い換えれば、TikTokはブランドコミュニケーションのための有用性の高いメディアだと言える。

隙間時間をゴールデンタイムに変える秘訣(ひけつ)はAIによる動画配信である。AIはユーザのTikTok内での行動をつぶさに分析して、そのユーザが興味を持ちそうなジャンルの中から最適なコンテンツを選び出してスマートフォンスクリーン上に提示する。
学習に必要なだけのコンテンツは充実しており、1日の平均トレーニングサイクルは200億以上に及び、それだけ正確なユーザプロフィール(ペルソナ)も取得しやすく、ユーザが視聴行動を繰り返すことで、レコメンデーションの質は上がってゆくはずだ。
そして、広告コンテンツの配信の際には、それがふさわしいターゲットであれば、広告を見てアクションを起こすのに、それを促す(少なくとも足を引っ張らない)ユーザ発の動画コンテンツを組み合わせて配信する。

図1.AIによるレコメンデーションモデル

図1.AIによるレコメンデーションモデル
( ※画像クリックで拡大)

(考察)リーンバックタイプの気軽さがカギ

上記のプレゼンテーションで筆者が気づいたことは、「隙間時間をプライムタイムに」というコトバが暗示するように、「テレビのような気楽さ」がTikTokの普及を後押ししているのではないかということだ。
AIの果たす役割は、見てもらいやすい動画を見繕って次々に提示することで、ユーザの「意思決定負荷」と、「ピアプレッシャー(知り合いに見られること)」の2つから解放してくれることにある。AIによって「見るコンテンツを自分で選び取る」という感じがなくなるし、「この人フォローしてみるか」という軽いノリでつながりやすい。つまり、つながっている人との「関係性・双方向性」が薄く、コトバによるメンションも少ないので対人ストレスが起こりにくいという特徴がある。

「リーンバック」つまり椅子にもたれて気楽に「見るだけ」でもいいし、その気になったら「踊る阿呆」にすぐなれる。シリアスさが少なく、開放感があるゆるいメディアであることが、デジタルネイティブに受けたのだろう。AIはある意味世話焼きでありお節介だが、黒子に徹してその役割を果たしている。

 

記事執筆者プロフィール

株式会社スペースシップ アドバイザー 大下 文輔(Bun Oshita)

株式会社スペースシップ アドバイザー 大下 文輔(Bun Oshita)

大学では知覚心理学を専攻。外資系および国内の広告代理店に18年在籍。メディアプランニング、アカウントプランニング、戦略プランニング、広告効果測定のためのマーケットモデリング、マーケティングリサーチの仕事に従事する。またその間、ゲーム会社にてプロダクトマーケティング、ビジネスアライアンスに携わるとともに、プロジェクトマネージャーとしてISPやネットワークビジネスの立ち上げに参画。
2011年よりフリーランスとなり、マーケティングリサーチやコンサルテーションを行っている。2015年12月よりMarketingBase運営の株式会社スペースシップ アドバイザーに就任。

 

株式会社スペースシップ 人材募集中!
タグ: