『誰のためのデザイン? 増補・改訂版 ―認知科学者のデザイン原論』
著者:D.A.ノーマン
出版社:新曜社
出版年月日:2015年4月20日
価格3,300円 (税別)
ISBN 978-4788514348
文:大下文輔
サブタイトルは「認知科学者のデザイン言論」である。同じタイトルの日本語訳初版は1990年1月に出版された。英文のオリジナルタイトルは『The Psychology of Everyday Things(日用品の心理学)』であり、頭文字を並べて「POET(詩人)」として親しまれた。ほどなくPsychologyはDesignに置き換わり、今では「DOET」と呼ばれている。
この本は、モノが使えないとすれば、それは使い手のスキルやリテラシーが不足しているからだ、と何となく思われていたことを、そうではなくデザイン(設計・仕様)が悪いからだ、と主張している。今の感覚ではごく当たり前のことだが、25年前には読者に衝撃を与えた。認知心理学の研究者として、心理学の知識を交えてはいるものの、その理論的側面よりも、製品はユーザーのためにあるのであり、デザインは人間中心であるべきだということを具体的に解き明かしたことの影響が大きい。
4半世紀の歳月を経て、デザインを巡る状況は変化した。デザインは今や、ビジネスとより深いつながりを見せ、ますますその重要性が増している。
改訂版では、昨今話題となっているビジネス思考の章を新たに設けたほか、デザインにおける感情の重要性や、シグニファイアという概念の導入などにより大幅改訂がなされている。そして、バックボーンである人間中心デザインの思想はモノのデザインを超えて、サービスのデザイン、はたまたマーケティングを含むビジネスの諸活動に深く広く浸透してきている。
デザインにおいても成功の秘訣は、何が本当の問題かを理解することである(p.303)
上記の金言が、デザイン思考について書き起こした章の冒頭で強くアドバイスされており、印象に残った。
記事執筆者プロフィール
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株式会社スペースシップ アドバイザー 大下 文輔(Bun Oshita) 大学では知覚心理学を専攻。外資系および国内の広告代理店に18年在籍。メディアプランニング、アカウントプランニング、戦略プランニング、広告効果測定のためのマーケットモデリング、マーケティングリサーチの仕事に従事する。またその間、ゲーム会社にてプロダクトマーケティング、ビジネスアライアンスに携わるとともに、プロジェクトマネージャーとしてISPやネットワークビジネスの立ち上げに参画。 |