『マンガでわかるWebマーケティング 改訂版 ―Webマーケッター瞳の挑戦! ―』
発行日:2017/2/17
本文・マンガ原案・全体監修/村上佳代 著
マンガ作画/ソウ 作画
シナリオ/星井博文 著
発行:インプレス
デジタルマーケティングは変化が速い上、さまざまな用語が錯綜しており、体系的理解をすることが難しい。油断をすると、言葉を表面的に理解しただけで使ってしまいがちである。そのような中、本書は、デジタルマーケティングの本質を学びたい初心者、そして、あらためて知識を再整理したい経験者を対象に、デジタルマーケティングの全貌を体系立てて解説している。
マンガを通じて伝わる「マーケッターのリアル」
本書の各章の冒頭は、架空のマーケッター「三立 瞳」(みた ひとみ)を主人公とするコミカルかつリアルなマンガとなっている。デジタルマーケティングのプロがしばしば直面する課題が描かれており、マーケッターとして働くとはどのようなものなのかをイメージすることができる。課題の例を3つ紹介したい。
1)目標の立て方が間違っていた!
PV、CVR、UU、CPA、ROASなど、デジタルマーケティングでは多数の指標がある。マーケティングプロジェクトはKPIを設定するところから始まるが、KPI策定は業種、業態、商品により大きく異なり、どの指標を基にKPIを設定するかによってプロジェクトの成功・失敗が左右されてしまうこともある。KPI設定には慎重にならなければならない。
2)コンサルタントが理解できない!
クライアント企業の担当者にとって、マーケティングコンサルタントは働き方、報酬体系、提供される価値といった点で未知の部分がある。その結果、担当者がコンサルタントを毛嫌いしたり、反対にコンサルタントもそのような担当者をリテラシーが低いと見てしまったりすることがある。このような平行線状態は避けなければならない。プロジェクトの成否を左右するのは双方の担当者間の信頼関係とコミットメントなのである。
3)トラブルが発生した!
デジタルマーケティングのトラブルには、個人情報流出、SNSの炎上、メール誤送信、ウイルス感染など多様なものがあるが、ITの力で不特定多数者を一気に相手にしている以上その影響は甚大になりやすい。本書は、トラブルの中でも、事後対応しかできず後味の悪いメール配信事故について、発生時の考え方や再発防止策、ダメージを最小限に抑える施策を掲載している。
成功するプロジェクトに必要なものとは?
マンガの主人公「三立 瞳」は、成功するマーケティングプロジェクトに必要な要素を読者に伝えてくれている。本書の中での設定である不動産会社のモデルルームへの集客プロジェクトでは、それを以下のように総括する。
“成功の要因をひとことで言うと、「お客様の立場に立った(顧客視点)ネットからリアルへの一気通貫マーケティング」です。”
デジタルだから何か特殊なことがあるわけではなく、顧客がスムースに目的達成をできるような体験設計をすることがもっとも重要であるのだ。本書は、デジタルマーケティングを解説した本であるが、このマーケティングの本質がベースに敷かれている。
本書は同時に、安易にデジタルツールに依存することに警鐘を鳴らしている。顧客体験の設計が十分にされず、業務要件定義が甘い状態でツールを入れてしまうと、ツールに担当者が合わせることとなり、現場の営業やオペレーションに負荷がかかってくる。導入時には、ツールが本当に必要なのか、なぜ必要なのかをマーケティング施策の目的にまでさかのぼって考えるべきだとしている。
マンガ部分は読みやすく、一気に読めてしまう。著者も、初心者に対してはマンガの部分だけをまずは読んでみることをすすめている。一方で、マンガに続く解説部分は、今日のデジタルマーケティングの全体像を把握するのに必要かつ十分である。ビッグデータ、CVR、PDCA、AIといったバズワードが飛び交いがちなデジタルマーケティングについて、本質的な理解を進めるのに最適な一冊になっていると感じた。
<構成>
序章:Webマーケティング?デジタルマーケティング?
第1章:瞳を取り巻く環境とWebマーケティングで使われる指標
第2章:KPIなしでは語れないマーケティング
第3章:お客様はどこからやってくるのか?
第4章:クライアントとコンサルタントのすれ違い
第5章:デジタルマーケッターたちの今
第6章:Web、デジタル時代のトラブル。正しい付き合い方
第7章:デジタル時代のデータ活用マーケティング
第8章:成功と失敗の間で
第9章:Webマーケティングからデジタルマーケティングへ