1月27日、Ginzamarkets主催のイベント「第3回FOUND Conference in Tokyo 2016」が開催された。コンテンツマーケティングに先進的に取り組む9社が登壇し、3つのテーマについてパネルディスカッションが行われた。
第2部のテーマは「良いコンテンツを発信し続ける仕組みと体制」。良質なコンテンツを発信し続けている3社に、どのような体制でサイトを運営しているのか、またその体制で運用していく上でのポイントを聞いた。
パネラー:
インテリジェンス キャリアディビジョン マーケティング企画統括部 DODA編集部 広告宣伝グループ 森本 大氏
ぐるなび 企画開発本部 コミュニケーション部門 副部門長 伊東 周晃氏
楽天市場 サーチエンジンマーケティング グループ グループマネージャー 近谷 康氏
モデレーター:
アイ・エム・ジェイ CMO / 事業構想大学院大学 教授 江端 浩人氏
ビジネスへの貢献を可視化して、外部パートナーと共有
インテリジェンス
インテリジェンスが提供する「キャリアコンパス」は、まだ転職を考えていない潜在層に向けたオウンドメディアだ。コンテンツを活用して20代ビジネスパーソンの認知向上を主目的(メイン指標)としたサイトで、サブ指標として「DODA」の登録者数向上に関する数値目標を持っている。
「キャリアコンパス」の運営体制はアウトソーシング型。制作・編集・開発・SEOコンサルティング・代理店の5社と協働していて、外部で関わる人数は10名ほどだ。この体制で月に50本程度のコンテンツを制作している。同社には求人広告を制作する部署はあったものの、潜在層向けのコンテンツを制作できるリソースが少なかったため、外部パートナーに委託している。
潜在層向けで、かつコンテンツを使用したアプローチは、即座に結果が表れるものではない。それゆえ外部パートナーは「自分たちの仕事に意味はあるのか」「商況が悪くなったら予算がカットされてしまうのではないか」と考えてしまいがちだ。そんな不安を払拭し、クオリティの高いコンテンツを制作してもらうため「『キャリアコンパス』のコンテンツが『DODA』の登録数に与える影響を中長期的に分析し、可視化して共有している」と、森本氏。アウトソーシング型のコンテンツ制作では、外部パートナーのモチベーションコントロールが重要であると語った。
クリエイターと直接やりとり、ヒットする法則を言語化
ぐるなび
「みんなのごはん」は、ぐるなびが運営するグルメ情報コンテンツサイト。ドラマ化した『女くどき飯』や書籍化した『胃弱メシ』は、このサイトから生まれたものである。
「みんなのごはん」は専任に近い担当者が2名で、平日は毎日コンテンツを更新しながら、常時20名ほどのクリエイターと直接やりとりをしている。運用開始当初は編集プロダクションを間にはさんでいたが、自分たちの意図がクリエイターに伝わらないケースもあったため、クリエイターと直接コミュニケーションをとる機会を増やすようになったという。
クリエイターと直接やりとりする理由は他にもある。それは、新たに発掘したクリエイターを「みんなのごはん」でデビュー、ヒットさせ、広告にコストをかけずにサイトへの再訪サイクルをつくりだすため、という。伊東氏は「SNSで拡散されやすい『マンガ』や『レポート』形式のコンテンツは、今のメディアを取り巻く環境と相性がよい」と語る。「きっかけはコンテンツでも、指名で使ってもらえる状態はサービスとして最も強いと思う」と続け、手間をかけてオリジナルコンテンツをつくることの重要性を強調した。
運用に関してもっとも大切にしているのが、ヒットするコンテンツの法則を言語化して共有することだ。社内では毎週、「みんなのごはん」以外のサイトを含むコンテンツ担当者が記事を振り返り、話し合うという相互レビューを行っている。
「コンテンツ制作は、感覚的なものになりがち。そのため言葉で議論し、ロジックに落とし込んで『発見』と『法則』をつくるようにしている」と、伊東氏。言語化した法則にもとづきPDCAを回し続けることで、常に質のよいコンテンツを制作している。
新たなキーワードを提示して、毎年恒例の企画を新鮮に
楽天
登壇した近谷氏が担当するのは「楽天市場」のサーチエンジンマーケティング。リスティング広告及びSEOは、ランディングページがあってこその集客手法であるため、集客する上で適したランディングページがなければ、コンテンツを制作するところから関わることもある。
ランディングページは大きく2つに分けられ、「お正月」「バレンタイン」などの季節特集と、定期的に行われるセールなどキャンペーンに関するものだ。制作はプロデューサー、ディレクター、デザイナー、コーダーを1ユニットとして行う。季節特集は企画からサイトへのアップまでおよそ4ヶ月と長期で制作し、同時に複数の企画が動くことになるため、さまざまな調整がしやすいインハウスという体制をとっているという。
季節特集は、どうしても過去のものと似てしまいがちだ。近谷氏はマーケティング担当の立場から、企画段階でコンセプトの軸となる新たなキーワードを精査して提案しているという。「キーワード調査ツールを使い、テーマと掛け合わせて検索されがちなキーワードを抽出してグルーピングするという地道な作業が必要。その上で、企画会議で新たなキーワードを提示することで盛んなブレストが行われることが大切だ」と、近谷氏。毎年恒例の企画だからこそ、新鮮に見える工夫には労を惜しまないようだ。
広げたキーワードを絞り込んで方針が決まった企画は、ペルソナが設定され、実制作に進む。近谷氏は「企画の柱とペルソナを意識し、仮説を立てて制作することで、ページを振り返る際に大きな収穫が生まれる」と続け、今後も良質なコンテンツ制作に取り組みたいと締めくくった。
【第2部まとめ】
成果をデータとして可視化する、他部署との相互レビューを行いヒットする法則を言語化する、企画段階でSEMの観点からキーワードを提案するなど、三者三様のコンテンツ制作方法が紹介された。
モデレーターの江端氏は「共通するのは何のためのコンテンツなのかを突きつめ、目的にあった運用方法を見出している点だ」と指摘した。
現場の試行錯誤を含め、コンテンツを活用したオウンドメディア運用を考える上で、先進的な企業の取り組みは大いに参考になった。