1月27日、Ginzamarkets主催のイベント「第3回FOUND Conference in Tokyo 2016」が開催された。コンテンツマーケティングに先進的に取り組む9社が登壇し、3つのテーマについてパネルディスカッションが行われた。

第3部のテーマは「コンテンツをターゲットユーザーに届けるための集客方法」。今回はSEO、外部ニュースサイト配信、バイラルマーケティングと、主な集客手法の異なる3社に、具体的なテクニックや進化するプラットフォームへの対応を聞いた。
パネラー:
リクルートライフスタイル ネットビジネス本部ネットマーケティングユニット SEOストラテジスト 酒井 亮平氏
弁護士ドットコムニュース 編集長 亀松 太郎氏
ラフテック 代表取締役 伊藤 新之介氏
モデレーター:
Ginzamarkets 日本カントリーマネージャー 黒瀬 淳一氏
コンバージョンにつなげるためのSEO集客
リクルートライフスタイル
リクルートライフスタイル(以降、RLS)は、「じゃらん」、「ホットペッパー グルメ」など、日常消費領域に特化した約30のサイトやアプリを運営している。
集客手法は、RLS全体で一本化されていない。それぞれのサイトやアプリがどんなカスタマーを集めたいのか、何を実現したいのかという目的に沿って、マーケティング担当者がそれぞれの施策を行っている。
RLSのようなビジネスモデルでは、コンバージョンが重要視される。例えば「じゃらん」に紐づくコンテンツメディアをつくるのであれば、実際の宿泊予約につなげることがゴール。
「宿泊先の予約をしたい」と考えている人を狙うのが効率的で、そういった人たちを取り込むために望ましい流入経路は何か、という観点で集客手法を考えるという。ニュース系メディアがよいのか、SNSで「バズる」のがよいのか、何かを探して検索する人を誘導するのがよいのかを検討し、検索流入が望ましい場合はSEOでの集客を軸に置くということだ。
酒井氏が集客に携わるコンテンツの制作において、最初の工程はメディアに関係するキーワードを集めること。
「キーワードを集めたら、検索回数や表示順位データを参考にして、制作するコンテンツのキーワードを絞りこんでいきます。ユーザーに検索されていないキーワードでコンテンツを制作しても意味がないですし、コンテンツ系のメディアが上位に表示されづらいキーワードもありますので、データと照らし合わせながら絞りこむことが大切です」。
モデレーター 黒瀬氏の「変化していくプラットフォームにどう対応していくべきか」という質問に対し、酒井氏は「SEOはコンテンツマーケティングブームが起こる前からある手法なので、得られる情報が非常に多い。施策の結果として表れる一つひとつの細かい数値に一喜一憂せず、Google が今後どこに向かっていこうとしているのかを理解することが大事。そのためには、Googleのヘルプや検索エンジン頻出ガイドラインをしっかり読みこむことが必要だ」と話した。
その上で、「どういうコンテンツやどんなプラットフォーム、CMSを選んでいくべきなのかを見極めることが大切」と締めくくった。
ニュース配信で外部サイトからの流入をはかる
弁護士ドットコム
亀松氏が編集長を務める「弁護士ドットコム ニュース」は「弁護士ドットコム」内のコンテンツメディア。今現在、弁護士を必要とするトラブルを抱えていない人にも「弁護士ドットコム」を知ってほしいという目的でつくられたものだ。時事ネタを、法律という視点を交えて発信していて、現在右肩上がりのアクセスを記録している。
「弁護士ドットコム ニュース」の集客手法の大きな特徴は、「Yahoo! ニュース」をはじめとした外部サイトに記事を配信して、そこからの流入を図っているところだ。
そもそも「弁護士ドットコム ニュース」を立ち上げたきっかけは、「Yahoo! ニュース」に大手新聞社や出版社以外の記事も掲載されているのに気づいたことだという。自社でもニュースを配信をしていけば「Yahoo! ニューストピックス」(以降、ヤフトピ)に載るのではと考え、ニュースコンテンツをつくってYahoo! に働きかけた。
「Yahoo! ニュース」では、記事の最後に配信元へのリンクが表示されていて、このクリック率は1割前後だという。ヤフトピに取り上げられると配信元サイトのPVは、少ない記事でも10万、多いと数百万に達するというからインパクトはかなりのものだ。
ヤフトピに取り上げられる本数を増やすため、自社メディア上で月10本程度の配信だったニュースコンテンツ数を、亀松氏の編集長就任とともに改善。2013年ごろから、月100本を配信するようになった。また、ヤフトピが記事をピックアップする基準である媒体の「オリジナル性」のクリアを目指した。
法律という切り口は十分にオリジナル性があるが、内容が大手メディアとぶつかれば負けてしまう。これらを踏まえて、なるべく大手が扱っていないニュースを取り上げ、自社でしか出来ない切り口でニュースコンテンツをつくることが「弁護士ドットコム ニュース」のセオリーとなった。
クリック率に大きく関わる記事タイトルも、こだわるべき編集ポイントだ。毎日膨大な量のニュースコンテンツが溢れるなかで、ヤフトピなどのプラットフォームやユーザーに選ばれるためには「タイトルが目に入ったときに絵が浮かぶか」、「浮かんだ絵にユーザーが興味をひかれるか」を考えているという。「毎日意識しながら発信し続けるとユーザーに響くか響かないかが感覚的にわかってきて、社内でも共通認識ができてくる」と語った。
SNSごとのユーザー特性を理解してバズを狙う
ラフテック
「笑うメディアCuRAZY」(以降「クレイジー」)は、月間4,000万PV、MAU700万を誇り、「より良い暇つぶしを届ける」ことを掲げるエンタメ系コンテンツメディア。集客は、主にコンテンツをSNS上でバイラルさせる方法で、SNSからの流入数が全体の60%以上を占めていることが特徴だ。 ラフテックには、もともとエンジニアも多く在籍していたこともあり、メディアをつくりながらSNS分析ツールの開発も行っている。
伊藤氏は、以前から娯楽やエンタメ系のコンテンツは、SEOとの相性が悪いと考えていた。「それならばSNSはどうだろう、と考えだしたときに当時話題になり始めていた『バイラルメディア』に注目した」と伊藤氏。
国内外の事例を研究し、「バズっているコンテンツ」のメソッドを自社のフォーマットに落としこむことを試みた結果、「クレイジー」は立ち上げ初月から900万PVを達成した。
現在、主に施策を打っているのはFacebookとTwitterだが、両者は違う性質を持っているため、コンテンツの出し分けをして効率的な集客を行っているという。
「Facebookでつながっている友達同士はリアルな世界でも交流があることがほとんどなので、あまりにも個性的な内容や、ネガティブな内容はユーザーの反応を得られません」と伊藤氏。ユーザーがシェアしたりコメントしたりすることで、周りの友達にどう見られるか、が重要なポイントのようだ。
一方Twitterでは、趣味関心でつながっているユーザーが多く匿名性も高いため、マニアックなネタやネガティブな話題も「バズり」やすい傾向にある。
そのほか、最近注目しているのはLINEのタイムラインだという。「Facebookほどいい子にしていなければならない雰囲気ではないが、Twitterよりは周囲を気にする雰囲気」と印象を話す。10代~20代前半のユーザーのタイムラインはかなりアクティブで、個人の投稿が3,000シェアを超えることもあるという。分析ツールがないため、高校生のタイムラインを見るなどして研究している。
「バズらせるコンテンツ」を生み出すためには、コンテンツの出し分けのほかに、制作工程でもコツがある。
ポイントは、まずフォーマットを決めることだという。リスティクル(「~な◯◯、10選」など、箇条書きにまとめた記事形式)が代表的なフォーマットの例だ。
フォーマットに沿って制作することのメリットは、ユーザーがタイトルを見たときに、どんなコンテンツか想像できること。さらにコンテンツを開いたときに、それが期待通りの内容であればシェアされやすくなるのだという。
また、編集者のスキルアップのため、「編集部内では国内外の記事を集めて、そのシェア数を当てるクイズを行っている」と伊藤氏。「コンテンツがきちんとSNSで反応されるかどうかの判断力を養うのにも役立ち、おもしろいコンテンツをつくるためのトレーニングになっている」と、「バズる」ことへ貪欲な姿勢を見せた。
第3部まとめ
カンファレンスの最終節は、具体的なテクニックにまで話がおよんだ内容の濃いものとなった。共通していたのは、それぞれのメディアの性格や目的を定義したうえで、最適なフィールドで集客を行っている点。また、コンテンツの制作工程から集客手法を見据えていることも3社に共通していた。
コンテンツの制作と集客手法は、切っても切れない関係。この2つをうまく接続することが、コンテンツマーケティングを成功に導くための大きなポイントとなりそうだ。