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2016年7月8日にブライトコーブ主催のイベント「PLAY 2016」が東京で開催された。1日かけて行われたこのイベントでは、米国のブライトコーブ本社の担当者や、日本で動画を活用してビジネスを展開する企業の担当者らが登壇し、動画コンテンツビジネスの現状と今後や、活用事例などを紹介した。
今回のレポートでは、会場を「メディア」「デジタルマーケティング」「テクノロジー」の3トラックに分け、各3セッションずつ行われたうちの「デジタルマーケティング」をセッションごとに分けてお伝えする。
「デジタルマーケティング」の第1セッションに登壇したのは、動画の企画制作から配信までを手がけるViibarのセールスディレクターである堀野勝也氏。「あの会社の最新事例から読み解く、動画キャンペーンの戦略と効果」というテーマで、企業が動画を使う理由や、5つの動画活用の戦略モデルと実際の活用事例について話した。

オンライン動画をマーケティングに使うべき理由
「企業が動画を使う背景には、動画を活用せざるを得ないという“必要性”と、動画を活用できるようになったという“可能性”の、大きく2つが存在します」と堀野氏。
動画を活用せざるを得ない現状には、20~30代男性の1/3、10~20代女性の1/4がテレビをほぼ見ないこと、また、10~20代の約半数がテレビよりもオンライン動画を好んでいるということが背景にある。認知の拡大にはテレビCMの活用だけでは不十分とし、オンライン動画の必要性を強調した。
米国の調査では、動画はテレビ用のクリエイティブよりもオンライン専用のクリエイティブの方がより深い態度変容を起こせることがわかっており、実際に米国広告主の動画予算に占めるオンライン専用コンテンツの比率は年々上がっていると指摘。さらに、動画はテキストやバナーに比べてクリエイティブの表現の幅が広いこと、テレビCMに比べてはるかに少額の予算で制作できることなどから、オンライン動画の可能性をアピールした。

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オンライン動画の5つの戦略モデルと活用事例
オンライン動画の活用方法は、目的別に下記の5つの戦略モデルに分類されるという。
(1)Star動画 (バイラル動画)
(2)Help動画(ハウツー系動画)
(3)Habit動画(ネット番組)
(4)Insert動画(動画広告)
(5)Persuasion動画(説明動画)

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自社サイトや自社のFacebookページなどへの誘導を目指し、“コンテンツ”として目を惹き、好感を生み出すための(1)Star動画、人々の疑問に答えてブランドへの好感を高めるための(2)Help動画、何度もウェブサイトを訪れさせ、愛着を持ってもらったりファンを育てたりするための(3)Habit動画、YouTubeやFacebookなどのペイドメディアで宣伝を行うための(4)Insert動画、自社サイトを訪問したが購入には至っていないユーザーの不安を解消して背中を押すための(5)Persuasion動画だ。
堀野氏は、パーチェスファネルにおけるそれぞれの動画戦略の概要と効果を、実際の事例を取り上げながら説明した。

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(1)Star動画(バイラル動画)
ブランド認知、ブランド好感、さらにロイヤリティの醸成へとつなげたければ、Star動画が効果的だ。これはSNSなどで人に紹介してもらうため宣伝色をできるだけ抑え、驚きや共感を主体にしたクリエイティブで作成する。いわゆる、バズる動画だ。
すぐに購買行動を促すことには向いていないが、「いいね」やコメントがつき話題になりやすいという特徴がある。
事例として、資生堂の「ビノラボ」の動画を紹介。内容は、8人8様のメイクや服装をした女性たちが、メイクを落とすと実は全員同じ女性だったことがわかるというものだ。
成功を判断するKPIはエンゲージメント率。メイクで印象が自由自在に変えられることに驚いた視聴者からコメントが多数つき、テレビ番組でも話題になったことで、再生回数が155万回を超え、資生堂のサイトPV数は3~5倍にアップした。

「最初から化粧品の説明をすると見てもらえませんが、コンテンツに寄せたクリエイティブにすることで、認知を広げるという狙いが達成できました」。ただし単発の動画で終わるのではなく、その先も連続した施策をプランニングするべきと堀野氏は語った。
(2)Help動画(ハウツー系動画)
ブランドへの好感を持たれやすいのは、Help動画だ。商材に関連するトピックだが商材そのものの紹介ではなく、視聴者の疑問や悩みを解消することに焦点を当てたコンテンツを作成する。検索の上位表示を狙ったり、悩みを解決することでブランドに好感を持ってもらったりできる。
事例として紹介されたのはfreeeの動画。同社は中小企業向けにマイナンバー管理のシステムを提供しているが、動画は同システムの紹介ではなく、マイナンバー自体を解説したものだ。視聴者の役に立つこと、内容をきちんと伝えることを優先し、シンプルな表現を採用した。
結果、著名人のSNSやメディアなどで紹介され、再生回数はHelp動画としては異例の14万回を突破した。

旬な話題だったことが功を奏した。「このように、旬の話題にまつわる疑問に答えることでメディアやSNSで注目されることは十分に考えられます」。
(3)Habit動画(ネット番組)
Habit動画は、すでに自社のサイトやチャンネルを訪問したことのあるユーザーに対して再訪を促したりロイヤリティを醸成したりして、一部の濃いファンを育てることを目指して作成する。ブランドを繰り返し思い出してもらい、愛を育てるよう、継続的にリリースする必要がある。
ここで紹介されたのは、エイリムのスマホ向けゲーム「ブレイブフロンティア」のプロモーション動画だ。この動画は、利用継続意向の向上を目的としており、制作するにあたって、当該ゲームのファンが投票できる動画コンテストを実施。複数のViibarクリエイターが制作した動画の中から、投票で1位に選ばれた作品をシリーズ化したものである。
コンテストは好評を博し、シリーズ化した動画の視聴者は2~4万人、エンゲージメント率は3~4%と高水準で推移した。

堀野氏は「今回はすでにファンのコミュニティがあったため、コンテンツを生み出す過程から巻き込むことでいい結果につながりました」と言う。また、今回のようにシリーズ化する場合には、視聴者が付いてきているか、エンゲージメントが保てているかをコンスタントに注視する必要があるとも述べた。
(4)Insert動画(動画広告)
ここまではコンテンツ系の動画だったが、ここからは広告系の動画の紹介となる。Insert動画は、商品の認知から関心の醸成を目的とし、YouTubeなどの動画配信サイトの広告枠などで配信するものだ。他サイトのユーザーが視聴しようとしている動画の冒頭などに差し込まれることが前提のため、各メディアの文脈や視聴者の好みに沿うよう意識することが重要だという。
紹介された事例は都市再生機構の「UR賃貸」の動画広告。ターゲットの好みの動画の傾向を分析し、クリエイティブに落とし込んだ。
動画広告にはスキップされやすい特徴があることから、きちんと視聴してもらえること(視聴継続率)にも配慮して制作した。その結果、平均完全視聴率は23%と、業界平均の12%を大きく上回った。

「従来のトンマナにあえてとらわれないようにしたことで、これまでのUR賃貸のイメージが変わったというコメントを多数いただきました」と堀野氏。ネットカルチャーを踏まえてブランドのトンマナの殻を破るチャレンジも大切と説いた。
(5)Persuasion動画(説明動画)
Persuasion動画は、商品の購入やサービスの利用を検討しているユーザーの不安を解消して背中を押すことが目的である。
事例として紹介されたのは、電子楽器の販売などを行うローランドが提供する、電子ドラムのレッスン動画だ。ドラムは習う機会が少ないことや場所を取ることなどから、興味はあっても初心者が購入を決断するまでのハードルは高くなりがちだ。そこで動画では、ドラムのビートなど基礎から紹介することで、始めるまでのハードルを下げ、購入を後押しするようにした。

成功の指標は再生回数の規模ではなく、コンバージョンの後押しになっていることが重要。販売店からは「接客の際にも役立った」と思わぬ効果があり、オンラインだけでなくオフラインでも役立つ可能性が示された。
動画はパターンを使い分け、適切な指標で評価すべき
堀野氏はこれまでの話をまとめ、「面白い動画、バズる動画がすべてではありません。動画を作成する目的や狙いを整理してクリエイティブに落とし込み、パターンを使い分けていくことが重要です。また、動画は再生回数だけで評価せず、評価軸の幅を知ったうえで適切に評価していってほしいと思います」と締めくくった。