PR

前回のレポートに続き、2016年7月8日に東京で開催されたブライトコーブ主催「PLAY 2016」でのセッションの内容をご紹介する。

「デジタルマーケティング」の第2セッションに登壇したのは、ブライトコーブ本社の北米デジタルマーケティングセールスディレクターであるマット・チャイルズ氏。テーマは「動画を活用した“Digital 1:1 Conversation”~MA連携、インタラクティブ、パーソナライズ」として、カスタマージャーニーの各ステージにおける動画を使った顧客とのコミュニケーション戦略について、海外の事例を用いて説明した。

動画を使った顧客コミュニケーション戦略について解説するチャイルズ氏
動画を使った顧客コミュニケーション戦略について解説するチャイルズ氏

マーケティングにおける動画の有用性とは

「動画は、マーケティングに適切に応用することで大きな効果を発揮します」とチャイルズ氏。その効果をカスタマージャーニーに沿って簡単にみると、動画を掲載したウェブサイトは動画掲載前に比べ、検索流入は157%、サイト滞在時間は105%、コンバージョンは2倍に増加するという。

今日のネット動画の利用はモバイル端末やSNSを通じて拡大しており、マーケティングにどのように動画を取り入れるかがマーケターにとっての重要な課題となってきた。さらに動画は、顧客との間だけでなく、自社の社員やそのほかのステークホルダーとのコミュニケーションにも有効、と説いた。

海外の事例にみる、カスタマージャーニーの各段階での動画活用戦略

チャイルズ氏は、カスタマージャーニーのさまざまな場面で適切に動画を活用することの利点として、少ないリソースで大きな成果が見込めること、SEO的に有利になること、リードジェネレーションやリードナーチャリングに効果的であること、コンバージョンの増加につながることなどを挙げた。
そしてカスタマージャーニーの(1)AWARENESS(認知)、(2)ENGAGEMENT(関心・好感)、(3)CONVERSION(コンバージョン)、(4)RETENTION(既存顧客の維持)、(5)ADVOCACY(信頼関係構築)の各段階における動画を使った先進的な取り組みについて、海外の事例を用いて説明を行った。

カスタマージャーニーの各段階の全体像
カスタマージャーニーの各段階の全体像
(※画像クリックで拡大)

(1)AWARENESS(認知)
まず、AWARENESS(認知)の事例として取り上げられたのは、企業の課題解決を支援するアナリティクス・ソフトウェアとサービスを提供するグローバル企業のSAS。同社は形のない自社の“技術”の価値をより効果的に知ってもらうため、インパクトのある動画を手法として選んだ。

動画では、2015年4月25日に発生したネパール地震で、SASが自社の分析技術を使って必要な救援物資の内容や数を把握し、被災者の支援につなげたという内容を、ストーリー仕立てで紹介。ストーリーのうえでは自社の貢献内容も盛り込んだが、それよりも重きを置いて丁寧に描写したのは、現地の様子だ。SASには、全世界の視聴者に被災地の人々の現状を知ってもらうことで救援物資を円滑に運搬して到着を早め、支援を強化したいという狙いがあった。

「こうした取り組みは、ブランディングにもつながっていきます」とチャイルズ氏は語る。

ネパール地震の被災地の様子を動画で伝えるSASのウェブページ
ネパール地震の被災地の様子を動画で伝えるSASのウェブページ

(2)ENGAGEMENT(関心・好感)
次にENGAGEMENT(関心・好感)の事例として、出版やコンテンツ制作を行うWILEYが挙げられた。WILEYは自社のマーケティングのために制作していたハウツー本を、5分の動画にまとめて自社のウェブサイト「DUMMIES B2B」に掲載した。そのうえで動画を配信しているBrightcove Video Marketing SuiteのアカウントとMAツールを連携し、個々の視聴者をトラッキングできるようにした。視聴者が動画の80~90%を見ると、営業がコンタクトを取る仕組みだ。

動画にはチャプターを設け、視聴者が見たい場面にすぐ飛べるようにした。WILEYの方ではこのチャプター機能を通し、視聴者が重視している項目を把握してどのような人が見ているかを分析し、営業につなげた。
結果、数十万ドルの利益に結びついたという。

チャプターを選んで視聴できるWILEYのプロモーション動画
チャプターを選んで視聴できるWILEYのプロモーション動画

(3)CONVERSION(コンバージョン)
CONVERSION(コンバージョン)では、ウェブセキュリティ製品を企業と個人の双方に提供するSymantecの事例が紹介された。Symantecは、初めてサイトを訪れた視聴者からもコンタクト情報を引き出せるよう動画を設計。それには、ブライトコーブのインタラクティブ動画を使用した。

動画を再生すると、途中でセキュリティへの関心などを問うアンケートがいくつか表示される。視聴者は動画を見ながらそれに回答していき、最後まで見ると個人情報の入力フォームが現れるようになっている。入力された情報は連携したMAツールに落とし込まれ、営業に活用されるという。

「この事例では、視聴者の関心とコンバージョンの両方を得ました」とチャイルズ氏。視聴者と企業の双方向のコミュニケーションを構築することでセキュリティへの関心を高め、顧客情報の獲得からコンバージョンへとつなげることができたと、動画の新たな可能性を示した。

視聴途中でアンケートが現れるSymantecのプロモーション動画
視聴途中でアンケートが現れるSymantecのプロモーション動画

(4)RETENTION(既存顧客の維持)
RETENTION(既存顧客の維持)の事例では、クルーズ船のツアーを提供する旅行会社のGrand Circle Travelが紹介された。同社は子どもから手が離れた55歳以上の人をターゲットにしており、顧客の70%がリピーターだという。ビジネスの要となる既存顧客の維持を、同社は動画とMAツールを駆使して行っている。

仕組みは、顧客が一度訪れたページにもう一度訪れるとMAツールからメールが送られ、ツアーを探し始めた顧客の興味を動画で後押し。動画を見てさらに興味を持った顧客が、ツアーで回る場所やホテルの情報を閲覧していくという流れだ。動画では、ツアーの内容や訪れる土地の紹介をいくつもの動画に分けてさまざまな角度から描いている。

こうしたアプローチで、同社は高いリピート率とコンバージョン率を維持しているという。

複数の動画でツアーの魅力をアプローチするGrand Circle Travelのウェブページ
複数の動画でツアーの魅力をアプローチするGrand Circle Travelのウェブページ

(5)ADVOCACY(信頼関係構築)
ADVOCACY(信頼関係構築)の事例として挙げられたのは、AccuWeather.comだ。世界中の天気情報を提供する同サイトでは、天気にリアリティを持たせたいとして動画コンテンツへの取り組みを始めた。

同サイトで紹介する気象関連の動画は、AccuWeather.comが選んだもののほか、ユーザーが投稿したものもある。例えば、嵐などのユーザー体験をシェアすることによって他のユーザーにとって「どこかで起こっていること」が「現実に起こっていること」と感じられるようになるのを目指したものだ。
これによりトラフィックは63%増加。ユーザーの投稿によってコンテンツも増え、動画を投稿するユーザーはロイヤルユーザーとなった。

動画でユーザーの支持を集めるAccuWeather.comのウェブページ
動画でユーザーの支持を集めるAccuWeather.comのウェブページ

顧客向けのみならず、社内でも有効活用して効率アップへ

Dunkin’ Donutsはドーナツを中心としたファストフードブランドで、グローバルに店舗展開を行っている。同社では、レシピ変更をしたときなどに社内情報を全世界の店舗に伝達し、最新の情報をわかりやすく伝えることができるとして、動画を活用している。オンデマンド配信からスタートさせたが、現在ではライブ配信も行っているという。顧客向けのみならず、社内でも動画を有効活用する好例だ。

ブライトコーブ自身も動画を使ってトレーニングをしたり、人材採用で会社紹介をしたりとあらゆるところで有効利用して業務の効率アップにつなげている。

最近では、ライブ中継したイベントを、イベント終了後すぐにオンデマンドに切り替えて配信できるようになった。これによりイベントに参加できなかった人々に動画を案内したり、イベントを見返したりということにすばやく取りかかれるようになった。
チャイルズ氏は、「ブライトコーブは70カ国でおよそ5,000社の企業と協業しています。これからも顧客企業の課題解決のため、技術を発展させていきます」と、セッションを締めくくった。