2016年10月6日、東京で開催されたトライバルメディアハウス主催の「いちばんやさしいLINE ビジネスコネクトの教本 出版記念セミナー」。全3回にわたってお届けする今回のセミナーレポート第1弾は、LINEの上級執行役員コーポレートビジネス担当を務める田端信太郎氏が語った、企業がLINEを導入する意義と、LINE ビジネスコネクトがもたらすマーケティングの新たな可能性をレポートしたい。

LINE株式会社 上級執行役員 コーポレートビジネス担当 田端信太郎氏
LINE株式会社 上級執行役員 コーポレートビジネス担当 田端信太郎氏

時代はPCから、スマートフォンによるマーケティングが主流に

田端氏はLINEの話に触れる前に「どれだけ強調しても強調しすぎではない」として、30代未満では、スマートフォンの接触時間はもはやテレビの接触時間を超えているという現状を説明した。そして、大多数の企業ではいまだに広告の予算配分がテレビ寄りであり、企業の予算配分と生活者の現実に大きなギャップがある。イギリスではすでにテレビよりもネットにかける予算が上回っており、アメリカでは2016年中に、日本では2020年までにネットがテレビの広告予算を超すと予想されている。企業はスマートフォンによるマーケティング施策を検討・実施することが非常に重要であることを田端氏は強く説いた。

では、マーケティングの重点がスマートフォンにシフトすると何が変わるのか。田端氏はニールセンの調査を引用し、今、平均的な生活者はスマートフォンを1日2時間弱利用しており、そのうち72%はアプリ上で過ごしていることを示した。
これが何を意味するのか。田端氏は「これまでSEO(検索エンジン最適化)はデジタルマーケティングの基本中の基本であった。しかしスマートフォンの登場によってアプリ中心の世の中となり、ウェブの重要性が下降すると同時にSEOの重要性も下がってきている」と語る。

今までデジタルマーケティングの基本であったSEOの重要性も下降していると語る田端氏
今までデジタルマーケティングの基本であったSEOの重要性も下降していると語る田端氏

これまでのPC中心のインターネット社会からスマートフォンへの移行は、たとえば、あるコンテンツを友人とシェアしたい場合、PCユーザーはコンテンツのURLを送るが、LINEユーザーは画面をキャプチャして画像を送る。簡単に、そしてもっとも確実にコンテンツをシェアできる方法だ。こうした例を一つとってみても、PCとスマートフォンとは「サッカーとラグビーくらい異なること」だと田端氏は強調する。

多くの企業はスマートフォン時代に対応するため、自社アプリをリリースしてきた。その数は数十万とも言われている。しかしニールセンの調査によれば、ユーザーが月に10回以上利用するアプリ数は数十万のうちのたった9個。田端氏は「たとえ大手の企業といえども、この9個のなかに自社のアプリが入るのは絶望的です」と言う。

もう一つ、知ってほしい事実がある。それは電子メールの開封率だ。いまや企業から送られてくる電子メールの90%が開封すらされていないという。企業はメールの送信自体にはほとんどお金がかかっていないため、費用的な痛みは感じていないかもしれない。しかし、メールマガジンの制作コストや有効性を考えると大きな疑問符が付く。

毎日のアクティブ率7割を誇るLINEだからこそ、効果的なマーケティングが可能に

このような時代に、企業はどのようなデジタルマーケティング施策を行っていくことが有効なのだろうか。

田端氏は一つの回答として、自社のコミュニケーションアプリLINEを挙げた。
LINEは2016年1月現在で国内登録者が約6,800万人を超え、国内ユーザーの実に7割が毎日LINEを利用し、非常に高いアクティブ率を誇っている。さらに、LINEは日本全国の人口分布比率におおむね近しいユーザー分布となっていることも特徴だ。男女比や職業分布もほぼ重なっており、地域や学歴、収入といった分布に偏りがみられるFacebookやTwitterのようなSNSと比べて、LINEは幅広く利用されている。田端氏は「いまやLINEは国民の2人に1人以上が毎日利用しています。LINEはインフラとして認められていると言っていいのでは」と言葉に力がこもる。
「クーポンをゲットできるためだけのアプリ、あるいは店にチェックインするとポイントがもらえるだけのアプリなどを、ユーザーが思い出して使ってくれるかというと、そうはならない。その点、LINEは身近なインフラであるため自然に使わざるを得ないサービスとなっている。また、スマートフォンを買い替えた際、OSを跨ぐと、必要のないアプリは棚卸をされてしまうがLINEのなかのアカウントという形であれば、ブロックされない限り引き継いでもらうことができる。マーケティングはあくまでもユーザーの自然な利用の上に成り立つもの。だからこそ、7割というアクティブ率のあるLINEでは効果的なマーケティングができるのです」と田端氏は語る。

多くの企業はより良いサービスを提供するべく、膨大な数のユーザーを有するLINEの公式アカウントを導入し始めた。LINE公式アカウントは、企業がLINE内にアカウントを持ち、「友だち追加」したユーザーに「トーク」機能でユーザーに情報発信できるもの。LINEはCtoCのコミュニケーションのチャネルとしてだけではなく、BtoCのチャネルとしても浸透してきている。
マクロミル社の調査によると、LINEではメッセージを読んだ人(既読者)は過半数を超え電子メールの開封率を大きく上回り、クーポン利用やサイトへの訪問、サービスや店舗を利用したというユーザーも非常に高い確率となっている。さらに消費者が企業からの情報収集に使うツールはLINEが1位であり、電子メールやアプリのプッシュ通信に比べて、マーケティングに非常に効果的である。

ユーザーがLINEの公式アカウントで企業と「友だち」になって実践したことでは、「メッセージを読んだ」が56.5%と電子メールの開封率を大きく上回る結果に。
ユーザーがLINEの公式アカウントで企業と「友だち」になって実践したことでは、「メッセージを読んだ」が56.5%と電子メールの開封率を大きく上回る結果に。

「LINEは単なる広告配信手段だとは思っていません。もっと双方向で、かつ単なるブランド意識の醸成や、認知獲得だけではなく、実際のユーザー獲得からサービス提供、その維持、ロイヤリティの醸成、そしてカスタマーサポートまでも含む、一貫したコミュニケーションの基盤となりうるものです」と田端氏は胸を張る。

その一貫したコミュニケーションの基盤を実現するのがLINE ビジネスコネクトである。

ビジネスにインパクトを与えるLINE ビジネスコネクト

LINE ビジネスコネクトはLINEが提供するAPIを経由して「友だちごとの個別配信」や「友だちごとの双方向コミュニケーション」ができるサービスだ。利用企業が有する顧客データやメッセージ配信システムとLINEのAPIが連携することにより、企業とLINEユーザーとのOne to Oneで、双方向のコミュニケーションを可能にした。レコメンドやコミュニケーション、キャンペーン、カスタマーサポートなどで大きな力を発揮し、導入した企業はそれぞれのビジネスに大きな成果をもたらしている。
LINE ビジネスコネクトの特徴はLINE自体が企業の業務システムや顧客データベースなどを預かるのではなく、あくまでメッセージなどのデータを双方向に配信する役割だということ。田端氏はLINEの役割を「LINEは透明なパイプにすぎません。消費者とつながりやすいパイプを提供しているのです」と表現した。

APIと連携することにより、企業とLINEユーザーとのOne to Oneで、双方向のコミュニケーションが可能に。
APIと連携することにより、企業とLINEユーザーとのOne to Oneで、双方向のコミュニケーションが可能に。

田端氏はLINE ビジネスコネクトの仮想敵として「電子メール」、「電話」、「ネイティブアプリ」の3つを挙げた。
「電子メール」はゆっくりだが確実にウエイトが減ってきている。
「電話」は飲食店や歯医者、美容院などの予約には利用されているが、航空券やホテルの予約などは通話レスで行われている。今後は飲食店や歯医者、美容院、あるいは銀行に住所変更を知らせる際などにもLINEが利用されるようになるだろう。LINEのチャットサポートならコールセンターで働いている人も仕事量が減り、通話中で待たされる顧客のストレスも減るだろう。
「ネイティブアプリ」は、各企業が消費者とつながるためにリリースしてきたが、アプリの開発費、インストールしてもらうためのプロモーションコストなど費用対効果を考慮すると、満足している企業はほとんどない。

田端氏は「LINE ビジネスコネクトを通じて訴えたいのは、単なる広報や宣伝的な情報伝達の手段だけではなく、企業のマーケティングをゼロベースで見直す変革のきっかけにもなるということ。LINEをひとつのOSと捉えていただき、LINE ビジネスコネクトの公式アカウントを自社のサービスとして実装していただくことで、ビジネスにインパクトが生まれるでしょう」と語った。

IoT連携とAIの進化で新たなコミュニケーションを生み、ビジネスに大きな可能性を

LINE ビジネスコネクトがリリースされて約2年。導入企業は現在100社まで広がってきている。
IoT時代のなか、今後はLINEを通じて、デジタルデバイスと消費者がコミュニケーションをしていくことが可能になるという。すでにLINEと連携したIoT自販機が登場し、車であれば位置情報と連動したドライブスルー、冷蔵庫であれば、多忙なワーキングマザーが外からLINE上で冷蔵庫の中をチェックし、仕事帰りに足りないものだけを買っていくことができるなど、これから多様な形でLINEとのIoT連携が実現してくるだろう。

さらにローソンのLINE公式アカウント「ローソンクルー♪あきこちゃん」と日本マイクロソフトの女子高生AI「りんな」との連携など、AIを使用したLINE ビジネスコネクトの活用も進んでいる。AIによるLINEの会話は、使い勝手のいいプラットフォームとしてユーザーから大きく支持されている。「今後、3~5年を見据え、AIによって擬人化されたブランドやサービス企業がLINEを通じて消費者とつながり、新たなコミュニケーションの形が生まれてくるでしょう。利用企業のマーケティングはもちろん、マーケティング以外の部分でもビジネス効果が上がっていくようになればと思っています。これからも企業のみなさまにさまざまな提案をしていきたい」と田端氏は今後の展望を力強く語った。

企業と消費者とのより最適なコミュニケーションは、LINEビジネスコネクトを通じてまだまだ進化していく。