2016年10月、SocketとVe Japanによる共催セミナーが東京で開催された。テーマは「CVR138%改善!メガネスーパーの導入事例に学ぶ ~FlipdeskとVePlatformの活用方法~」。
Flipdesk を提供するSocketの永田龍史氏、VePlatform を提供するVe Japanの河嶌佐登志氏、そして両ツールを導入したメガネスーパーの川添隆氏が登壇し、その活用方法と効果について解説したセミナーをレポートする。

まずはメガネスーパーが導入したウェブ接客ツールであるSocketの「Flipdesk(フリップデスク)」とVe Japanの「VePlatform(ヴィープラットフォーム)」の特徴について簡単に紹介したい。
Flipdeskは、例えば一度も購入をしたことがない訪問者に対して初回限定クーポンを出すなど、サイト訪問者の状況に応じた接客を実施するウェブ接客ツールである。
VePlatformは、サイトを離脱しようとしているユーザーへのポップアップ表示(※VePrompt)、サイトから離脱しそうになったユーザーへのパネル表示(VePanel)、離脱したユーザーにメールを配信する(VeContact)など、サイト離脱防止に特化したコンバージョン改善ソリューションである。
サイト内接客に強みを持つFlipdeskと離脱防止に強みを持つVePlatformは、2016年8月4日に業務提携を行い、両ツールの活用でより効果的にクライアントのコンバージョン改善を支援している。
※2016年12月現在、VePromptの機能はすべてVePanelへの切り替えを行っており、VePromptのご案内は現在しておりません。
最適なタイミングで、最適な接客を実現するFlipdesk

EC業界では売るための3大施策である「集客」「接客」「追客」が重要だ。「集客」はサイトにユーザーを連れてくること。「接客」は来訪したユーザーをコンバージョンに促すこと。「追客」はユーザーにメルマガなどでアフターフォローを行い、リピート促進をすることである。
「接客」は、従来であればランディングページ最適化(LPO)やサイト改善をしていくのだが、場合によっては新規ユーザーにわかりづらく、ヘビーリピーターには不要な情報の多いサイトになりかねない。そこで個々のユーザーに合わせたコミュニケーションを行い、「接客」の精度をより高めることが必要となる。それを実現するのがウェブ接客ツールだ。
ウェブ接客ツールでできることは「情報収集」と「グルーピング」、そして「アクション」と大きく分けて3つある。ウェブ接客ツールのFlipdeskでは、サイトに埋め込んだタグによって訪問者の行動を自動で解析し(情報収集・グルーピング)、状況に応じてクーポン発行、キャンペーン告知、チャットサポートなどの最適な接客(アクション)を行うことで、訪問者の購買意欲を高め、購買率を上昇させることができる。
「誰に対して」、「何をするか」、Flipdeskではこの組み合わせをシナリオと呼び、個々のユーザーに最適な接客を実現している。
「例えばサイト滞在時間が3分以上、商品詳細ページで1分以上閲覧中、カートにはまだ何も商品を入れていない、訪問回数は3回以上など、細かな条件の組み合わせで無駄のないターゲティング設計をしていただくことができる。クーポン施策もこのようにピンポイントなターゲティングであれば非常に有効です」(永田氏)。

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特に「接客」でコンバージョンさせたいのは新規ユーザーである。従来、ウェブ接客ツールでは、ユーザーの情報を収集してからでないと接客ができないという課題があったが、Flipdeskでは国内最大級の会員基盤数とデータ項目数を有するSupershipDMPによって、新規ユーザーに対しても最適な接客を可能としている。
「SocketはKDDIのグループ会社であり、同じグループ会社であるSupership株式会社のDMPを活用できます。これにより、タグに情報がたまっていない状態であっても20代女性、決済利用ランクが高いといった情報でターゲティングを実施することができ、最初から精度の高い接客を実現することが可能です」(永田氏)。
さらにFlipdeskでは運用サポート(有料)も実施し、Flipdeskを導入した40%の顧客が利用している。平均CVR改善率は運用サポートなしが105%、運用サポートありは120%、ツール利用継続率は運用サポートなしが70%、運用サポートありは95%と、運用サポート導入の方が効果・満足度ともに高い。
「お客さまのサイトに合わせてカスタマイズしていく。そうした運用力もFlipdeskの強みです」(永田氏)。
離脱防止に力を発揮し、コンバージョン改善を行うVePlatform

Flipdeskが「接客」で力を発揮するツールであるのに対し、Ve Japanが提供するVePlatformは「追客」で力を発揮する。Ve Japanのデータによると、カートや決済ページに進んだユーザーの76%が離脱。さらにカート以降で離脱したユーザーの92%以上は、二度とそのサイトには訪れないという。VePlatformはこうしたユーザーの離脱抑止(追客)に力を発揮し、コンバージョンを改善していく。

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VePlatformの大きな機能として、VePanel(離脱直後の防止)とVeContact(リマーケティングメール・カート放棄メール)がある。
VePanelはユーザーがサイトから離脱しそうになった時に、ブラウザの右側からページ上へ違和感なくパネルがスライド表示されるものだ。
「パネルが右側からスライドのように出てくるサービスは日本初の提供であり、世界でも唯一。ポップアップ表示から弊社のスライドパネルに変えたクライアントさまでは、コンバージョン率が177%に上がりました」(河嶌氏)。
さらにVePanelの「SNSシェア機能」も世界唯一である。これはさまざまな使い方が考えられるが、離脱したユーザーに「SNSのシェアで25%OFFのクーポン発行」など、SNSによる拡散で集客に結び付けることができる。離脱防止から集客へと発想を転換した機能だ。
また、「関連商品表示」も世界唯一であり、フィード(データ情報)不要、タグの設置のみで離脱した商品に近い商品を表示することができる。

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VePanelが表示されるタイミングはユーザーが「ブラウザを閉じる」、「タブを閉じる」、「URLを打ち込んで異なるページに離れる」、「ブックマークでページを離れる」、「マウスの動き」、「一定時間放置」した場合である。「マウスの動き」に関しては、マウスのスピード、そして上部とマウスの距離を換算して離脱予測を行い表示されるもの。導入箇所に関しては、LP、TOPページよりも、商品詳細やカート、ログイン、決済配送、確認ページなどで使用するのが効果的である。ページごとにデザインや内容を変えることも可能で、各ページに応じたものを表示することができる。
離脱防止の効果としては、いくつかのECサイトを対象に「商品詳細ページ」から、コンバージョン直前の「購入内容の確認ページ」までの各ページにVe Panelを設定した結果、CTR (VePanel内のリンクボタンをクリックする率)は36.3%、CVR(クリックからコンバージョンする率)は6.2%という結果になった。総離脱数の1~2%をコンバージョンへ導き、この数値は全体のコンバージョン数の8~15%に相当する割合となっている。
VeContactは、情報入力ページでメールアドレスを入力したにも関わらず、コンバージョンにいたらなかったユーザーを対象に、手続きの完了を促すリマーケティングメールを自動配信するもの。通常、リマーケティングメールは会員向けに送るが、VeContactは、主に新規のユーザー、未会員のユーザーに対してメールを送るというものだ。日本でこれができるのはVeContactだけであり、開封率は実に4割以上という結果が出ている。
「VePlatformは完全成果報酬型モデルで、初期導入費用、運用費用が不要であることも特徴です。導入はひとつのタグを実装するだけで可能。Flipdeskと連携したことで、将来的にはひとつのタグを導入するだけで両ツールを利用できるシステム連携まで考えています」 (河嶌氏)。
リスクが少ないなら導入。低コストで使いやすいことが重要

メガネスーパーは、全国で約330店舗を展開し、メガネ、コンタクトレンズ、補聴器を販売。アイケアカンパニーとして眼の健康寿命を伸ばすために必要な解決策を、商品やサービスを通して提供している。川添氏は2013年から同社のEコマース事業における改革を実施し、EC事業全体で約3倍、メガネスーパー公式通販サイトの月商を約5倍まで成長させた。
「単にモノを売るのではなく、体感していただくことにビジネスの力点を置き、一人ひとりに合った商品をご提供するため、店頭での接客や検査に力を入れた販売をしています。ECに関してはコンタクトレンズのシェアが高く、他社との差別化は価格ではなく、メガネスーパーの信頼感の土台の上に、定期購入や決済手段、コンビニや店頭受け取りを増やすなど利便性を強化しています。そうした施策をさらに活かすためにFlipdeskやVePlatformを導入しています」(川添氏)。
川添氏はEC事業において「販売手法」と「MD(マーチャンダイジング・戦略的に品揃えを行う活動)」と「集客」の3軸をそれぞれ強化することでEC売上アップを図っている。これらはEC事業の成長に必要なメソッドであり、「販売手法」の部分にウェブ接客ツールであるFlipdeskと離脱防止のVePanelを、「集客」の部分では離脱後のリマインドにVeContactを利用している。

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Flipdeskは「買い物カゴ」までの接客部分で利用し、新規ユーザーとリピーターへのクーポンの出し分け、またコンタクトレンズのページでは定期便や即日配送商品、メガネのページでは無料試着、カラーコンタクトは人気ランキングを表示するなど、商品ごとの買い方に応じて表示の出し分けを行っている。
離脱部分に関してはすべてVePlatformを利用し、「商品ページ」ではVePanelによる離脱防止レコメンド、「買い物カゴ」以降は離脱防止ポップアップを表示するVePromptを導入し、さらにゲスト(新規)で離脱したユーザーに向けて、VeContactによるカート放棄追跡メールを送っている。

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川添氏のツール導入の考え方は「リスクが少ないならまずは導入してみる」という姿勢だ。
「FlipdeskやVePlatformのようなツールの良いところは、初期費用が安く、成果報酬なので導入のリスクが少ないこと。さらに運用を簡単に開始することができ、とりあえず使ってみてから継続するかどうかの判断ができる。初期費用に数十万円掛かるような料金プランでは、そうしたことはできません」(川添氏)。
FlipdeskとVePlatformの実力を川添氏はどう考えているのだろうか?
川添氏がFlipdeskから受けた最初の印象は使いやすさだった。
「他の担当者も難なく運用できるかという観点で、まずは使いやすさが重要でした。Flipdeskの運用サポートも導入していたのですが、オペレーションやコンサルティングのレベルも非常に高い。それにWEBマーケティング関連の施策として他社から提案いただくものは一般的に実現困難なものが多くなりがちですが、Flipdeskの運用サポートは実現可能で具体的なシナリオを提案していただける。非常に大きな信頼感を持っています」(川添氏)。
「ツールというものはある程度の時間が経つと他社との性能に大きな差はなくなり、最終的には誰が手を動かすのかによって効果に差が出てきます。Flipdeskでは、そうした人の手による運用面も強化し、他社との差別化を行いながら成果を生み出しています」(永田氏)。
メガネスーパーではECサイトだけではなくコーポレートサイトでもFlipdeskを使用し、例えば店舗検索で近くに該当する店舗がない場合は、通販を薦める表示を出している。
「熊本大震災のときには、災害緊急支援として熊本の店舗でコンタクトレンズを無料配布したのですが、そのご案内をSupershipDMPにより、熊本在住というセグメントでピンポイントに実施しました。Flipdeskは大きな施策だけではなく、細かなセグメントでもシナリオを作ることができます」(川添氏)。
川添氏が評価するFlipdeskの特徴
・低コストで始められる
・テキストとURLがあれば即設定可能
・有料運用サポートのクオリティの高さ
※メガネスーパーでは2015年1月に導入。接客経由と非経由の購入率を比較すると4~40倍の効果。
一方、VePlatformの強みは離脱防止の他に導入ハードルの低さと運用が不要な点にあると川添氏は言う。
「そもそもサイト会員のお客さまにリマーケティングメールを送ってコンバージョン率が高いのは当たり前だと捉えています。当社としてはゲスト(新規)の方々のコンバージョン率を上げたいのです。注文や登録完了に至らなかったお客さまへのリマーケティングメールなど、非会員に向けた離脱防止ができるのは、日本ではVePlatformしかありません。さらに導入はサイト内に一行のタグを設定するだけで簡単にできる。メールのクリエイティブもお願いできるため、非常にスムーズな運営ができています」(川添氏)。
「ポップアップ表示を日本で最初に導入したのはVe Japanです。離脱防止パネル、リマーケティングメール、さらにリターゲティング広告やオーディエンス広告など、一つのタグでさまざまなソリューションができるのも弊社にしかない強みです」(河嶌氏)。
現在、メガネスーパー全サイトの新規ユーザーの比率は約30%だが、VePlatform経由の新規ユーザー比率は最も高い月で約75%もの割合を占めた。
「離脱防止効果と新規ユーザーの獲得を実感するとともに、スマートフォンとの相性の良さも感じています」(川添氏)。
川添氏が評価するVePlatformの特徴
・ゲスト(新規)のターゲティングが可能
・導入カンタン&運用不要
・1タグで複数機能が使える
・コストは成果報酬のみ
※メガネスーパーでは2015年7・8月と2016年1月以降に活用。リマインドメール、離脱防止に活用し、サイト全体の新規ユーザー比率が35%ほど上がった。