2016年12月8日、ブレインパッドの主催で「Probance Day 2016」が開かれ、BtoC向けマーケティングオートメーション「Probance(プロバンス)」の活用企業3社が登壇し導入の経緯や成果などを語った。

レポート1のコーセーに続いて登壇したのは、ゲオ 事業企画部 マーケティング課の鈴木健生氏だ。ゲオは、DVDやゲームなどのレンタル・販売・買取を行う総合メディアショップを全国に展開している。オンラインでは公式スマホアプリも運営し、2016年8月時点での累計会員登録者数は384万人。またメルマガには約60万人が登録している。
顧客の利用履歴は、レンタル・販売・買取の際に提示されるPontaカードを通じて管理しているという。

課題解決に向け、MAツールと予測分析システムを導入

マーケティングオートメーション(MA)を利用してOne to Oneマーケティングに取り組み始めたのは、趣味嗜好のカラーが強く押し出されている昨今のゲームや映画に関する情報を、その趣味嗜好に合致するターゲットに向けて十分にプロモーションできていないのではないかと考えたためだ。

イベント参加者に軽く質問をして場をあたためるゲオの鈴木氏
イベント参加者に軽く質問をして場をあたためるゲオの鈴木氏

Probanceには、操作がわかりやすく気軽に始められるProbance One(プロバンス・ワン)と、大量のデータから高度なキャンペーンを実施できるProbance Hyper Marketing(プロバンス・ハイパーマーケティング)の2タイプがある。ゲオは現在、後者のProbance Hyper Marketing(以下、Probance)と、同様にブレインパッドが扱っているビッグデータ対応 機械学習・予測分析システムのSAP® BusinessObjects™ Predictive Analytics(エスエーピー・ビジネスオブジェクツ・プレディクティブ・アナリティクス、以下、SAP PA)を導入している。他社ツールに保存している顧客の購買データやアプリのログデータをSAP PAで分析し、その結果に基づいた施策をProbanceで実行するという構図だ。

データを活用したマーケティングを始めるにあたり、まずいくつかのデータ分析ソリューションを検討したところ、ブレインパッドが扱うSAP PAは高度なスキルを持たなくても使いやすいといった点や、これまでの豊富な実績からブレインパッドならばゲオのビジネスを理解したうえでのサポートが得られるという点から導入を決断。
次に、分析したデータを用いてOne to Oneマーケティングを実現させる仕組みを構築するため、MAを比較検討したところ、Probanceが比較的安価で一通りの機能が使えることから、POC(試用)を経て導入に至ったという。

Probanceを活用した3つのマーケティング施策とその成果

続いて、ゲオがProbanceを用いてこれまでに行ってきたマーケティング施策が3つ紹介された。

(1)顧客データに基づくレコメンドメール
レンタルや来店を促進するため、購買履歴をSAP PAでアソシエーション分析し、その結果を用いて顧客ごとにカスタマイズした内容のメールを配信した。個別にカスタマイズされた内容であることが顧客にもわかりやすく伝わり、Probanceで実現しやすいという観点から、「件名に顧客の名前を入れる」、「購買履歴をもとに自動でピックアップされるおすすめレンタル商品を5つ掲載する」、「来店されやすい曜日・時間帯の3時間ほど前に送信する」という3点を実装した。

件名に顧客の名前を入れた場合の効果を開封率で測定するため、ベンチマークとして既存のメルマガの一部をHTML化して配信したところ、開封率は1.5倍に向上した。
もっとも効果的だったのは、来店されやすい曜日・時間帯の3時間ほど前に送信したことで、購買履歴をもとにレコメンドしたレンタル商品以外に、ゲームなどの販売・買取もともに伸びたという。反対に、返却タイミングのリマインダーとしてもメールが働いたためか延長料金の売上は下がったが、「総合的な売上金額へのインパクトは、想像をはるかに上回りました」と鈴木氏。

(2)アプリのプッシュ通知
ゲオの公式アプリはこれまで、プッシュ通知を一つのキャンペーンで顧客ごとに出し分けることが仕様上難しかったため、ABテストが行えていなかった。また、開封率の取得にも数日かかっていたことから効果検証しにくく、データに基づいた改善もできていない状態だった。
しかし、Probanceの導入後はABテストが簡単に行えるようになったことから、一つの施策のなかで文言を変え、その効果の差を見て、すぐに改善することができるようになった。実際、アプリにレコメンド機能を追加したときの告知や、イベント告知の文言をプッシュ通知で3パターン試したところ、リアクションに大きな差が出たという。

(3)顧客育成
以前から、ライトユーザーが海外テレビドラマシリーズを利用すると、優良顧客化しやすいということがわかっていた。そこで、優良顧客の育成を図ろうと海外テレビドラマシリーズの第1巻をすべて無料レンタルできるというキャンペーンを行った。キャンペーンの主な利用者は高校生や大学生で、その利用履歴を追ってみると、複数タイトルの第1巻はレンタルしているものの、その先の利用にはつながっていないことがわかった。また、レンタル商品の特性として一時的に在庫を厚くすることは難しく、各店1,2本しかないシリーズも多かったことから、見たくてもなかなかレンタルできないという弊害も発生していた。

この結果を踏まえ、SAP PAを利用してこの先3カ月間の海外テレビドラマのレンタル日数を予測し、レンタル日数が多くも少なくもない会員を抽出した。これらの会員に半額クーポンを3枚配布し、Probanceから顧客の来店タイミングに合わせてプッシュ通知を出したところ、継続利用されるようになったという。

これについてもABテストを行った結果、1カ月の利用金額はコントロール(効果を比較するために施策を実施しないユーザー群)に対して2.5倍以上となった。さらに、クーポンを利用しなかった顧客に対しては、少し時間を置いてから日本のテレビドラマのクーポンを配布するなど、Probanceを利用してシナリオに沿った育成を進めている。

趣味嗜好のカラーが強い商品は、適切なターゲットに向けてプロモーション

現在では、趣味嗜好のカラーが強く出た新作ゲームなどを興味がありそうなターゲットに向けてレコメンドし、予約を促すといった取り組みをProbance とSAP PAを用いて行っている。ターゲットは過去に類似商品を3つ以上利用したことがあるという条件で絞り込んだ。また予約を促すため、新作ゲームの特設コンテンツを送るプロジェクトも進行中だ。

最後に、鈴木氏は「お客さま一人ひとりに少しでも幸せになっていただきたい思いで、One to OneマーケティングやMAに取り組んでいますが、少し振り返ってみるとデータをこねくり回してわかった気になっていただけということもあるかと思います。もしお客さまのことがよくわからないなと思ったら、直接お客さまに会いに行くことも必要なことです」と語り、講演をまとめた。

 

イベント日時:2016年12月8日
場所:御茶ノ水ソラシティカンファレンスセンター

本記事で取り上げたゲオさまのご講演内容は、イベント主催者のページでもご覧いただけます。
・Probance Hyper Marketing 導入事例
株式会社ゲオ様
http://www.probance.jp/report/161208probanceday2016-2/