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文:森田裕美
2017年3月16日、シンフォニーマーケティングとブライトコーブの共催セミナー「BtoBマーケティングで成果を出す仕組みをつくる〜MA(マーケティングオートメーション)と動画を活用したデジタルマーケティングについて〜」が都内で開催された。
講演では、シンフォニーマーケティングから、BtoBマーケティングにおけるデマンドセンターと動画の活用事例が、日本オラクルから、マーケティング・オートメーション製品である「Oracle Marketing Automation (以下、Oracle Eloqua)」の活用方法が、ブライトコーブから、動画マーケティングとOracle Eloquaとの連携で可能なことが紹介された。
今回は、レポート第1弾として、シンフォニーマーケティング代表取締役の庭山一郎氏による、「売上に貢献するための『組織』と『コンテンツ』」について報告したい。
日本で広がりつつあるデマンドセンター
日本のマーケティングは、リサーチからブランディングへと大きな流れがあったが、現在は第3のマーケティングと言われる「デマンドジェネレーション」の重要性が注目されてきた。
市場調査・競合調査・顧客満足度調査や広報・PR、マーケティングコミュニケーションといったリサーチやブランディングのための活動はもちろん今でも有効だが、デマンドジェネレーションは、実際に案件や商談機会を作り、営業担当・販売代理店に案件を供給していくことであり、それを主管する部門として「デマンドセンター」を持つBtoB企業が増えてきているという。
当然のことながら、デマンドジェネレーションを実施する場合もリサーチやブランディングなどと同じように評価軸が必要だ。例えば、BtoB企業の場合は展示会で名刺やアンケートを収集しても、実際の案件につながり企業の売上や利益に反映されるまでには時間がかかる。そのため、デマンドジェネレーションではROMI(Return of Marketing Investment)、通称「マーケティングROI」という評価軸を用いる。具体的には、1年間のマーケティング予算に対して、どのレベルの案件を何件営業に渡したのか、つまり、パイプラインに入れたのかを計測することによって費用対効果を算出する。
展示会に出展し、名刺やアンケートを回収したのはよいが、そこで終わってしまう企業もまだまだ多い。営業に案件を渡すところまでを数値で管理していくことが必要となる時代に入ってきたのである。

日本と欧米の営業活動における環境の違い
庭山氏によると、アメリカでは2000年代の初めから当たり前のように行われてきたデマンドジェネレーションが、最近にわかに日本でも脚光を浴びはじめ、デマンドセンターを設立してデマンドジェネレーションを本格的に実施したいという企業が増加してきたという。では、なぜこれまで日本ではデマンドジェネレーションが欧米ほど発達してこなかったのだろうか。
日本は戦後60年間、既存顧客に既存製品が売れ続けた引き合い依存という特殊な営業環境下にあり、それでも戦後の高度成長期は問題がなく、マーケティングも必要とされてこなかった。
しかし、欧米では既存顧客に既存製品を売っていくことに早くから限界が見え始め、企業が成長していくためにマーケティングに取り組む必要性が出てきた。
結果的に、欧米では企業を成長させるためにマーケティングが早い段階から発達し、デマンドセンターも早期から確立され、日本の引き合い依存の営業活動と大きな差が出たのである。
デマンドセンターはデジタルでデータを管理
優秀な営業担当と優秀な製品やサービスだけで企業が成長する時代はすでに終わりに近づいており、営業は新しい顧客を探さなければならない状況になってきた。しかし、現在でも、データは各営業担当、各事業所が独自で管理しており、しかも自分の担当顧客以外については理解していないというような企業も多いようだ。
デマンドセンターは、このような状況を改善することが可能だ。企業内に眠っている全てのデータを統合管理することにより、デジタルでコミュニケーションを行うことが可能となり、新製品やサービスに興味関心がありそうな見込み客を見つけたうえで営業に案件を渡すことができるようになる。
例えば、メールマガジンを配信した場合、特定の記事に興味を持ち、ウェブサイトに訪問し深い階層まで閲覧し、そこにあった動画を最後まで、あるいは繰り返し閲覧しているということを把握することができる。営業担当がすべての顧客企業のすべてのキーパーソンを把握することは難しいため、デジタルでコミュニケーションすることにより、ウェブサイトやメールや動画の閲覧や視聴の履歴から案件になりそうな人を見つけ出し、案件を渡していくのだ。
さらに、デマンドジェネレーションをしていく中で、最近重要になってきた考えは「アカウントベースドマーケティング(ABM)」である、という話が続く。
今後はアカウントベースドマーケティング(ABM)へ
まず、アカウントベースドマーケティングとは何だろうか。シンフォニーマーケティングの定義によると、全社の顧客情報を統合し、マーケテインングと営業の連携によって、定義されたターゲットアカウントからの売上最大化を目指す戦略的なマーケティングである。
企業の中には様々な部署があるが、部署単位をアカウントと考えるのではなく、企業を一つのアカウントとして捉えマーケティングを行なっていく。そのためには、営業担当がターゲットとしている企業の部署、役職などの「属性情報」と、自社の製品やサービスのウェブページや動画などのコンテンツを訪れる人、すなわち課題解決を模索している人の「行動情報」とを細かく把握し、この2つの軸で評価の高い顧客情報を営業担当に提供することが重要となる。
現在のテクノロジーを活用すれば、自社のウェブサイトに訪問した人の行動を詳細に解析することが可能なため、例えば15分の動画を3分で離脱したのか、半分もしくは最後まで閲覧したのか、さらには繰り返し見たのかを把握することができる。そして、それらの訪問データをもとに、インサイドセールスから電話でニーズを確認し、デモを見たい、実機が見たい、評価用のサンプルがほしいという話であれば営業に案件を渡していくことができる、と庭山氏は説明する。
動画を活用し、営業により精度の高い案件を
次に、庭山氏はシンフォニーマーケティングで実際に手掛けた動画コンテンツを利用した2社のマーケティングウェブサイトの事例を紹介した。
課題の解決方法を探している人に向け、様々な事例をコンテンツとして紹介し、製品導入前後の変化を数字でも説明して説得力を持たせたうえで、解決方法や解決する製品も紹介している。そこから他の活用事例にも誘導し動画を見せることで、最終的に誰がどの動画を見ているかまで確認して、興味関心のレベルを数値で計測している。
「通常であれば、ウェブサイトの深い階層まで見た人、長時間滞在した人、繰り返し見た人がターゲットだと思うかもしれないが、それだけでは不十分であり、深い階層まで見た人の業種、企業規模、所属部署、肩書や役職までをも把握し、それが営業に渡せる案件なのかどうかを判別する必要がある」と庭山氏は語る。
この2社の事例では、動画はブライトコーブのソリューションで管理しており、誰が、どこまで見たのか、繰り返し見たのか、途中で離脱したのか、最後まで見たのかをすべてスコアリングしているという。
デマンドジェネレーションとデマンドセンターの歴史的背景から、企業の営業スタイルの変化、データ統合、プラットフォーム(マーケティングオートメーション)の導入、動画の活用までを40分という短い時間の中で事例を交えながらの庭山氏の話は、BtoB企業の担当者にとって大変参考になるものだった。
最後に、シンフォニーマーケティングがこのようなデマンドセンターを立ち上げるために提供しているサポートや、実際にクライアントがシンフォニーマーケティングをどのように活用しているのか、ということが紹介された。
シンフォニーマーケティングでは、MAツールの選定から導入、社内デマンドセンターに必要な人材の選定、ツール導入後のサポート、内製化の支援などを行っており、今後はグローバルマーケティングの支援も増えてくるという。
なお、このセッションで話された内容については、庭山氏の執筆した4冊の書籍でも解説されていて、初心者から上級者まで参考になるだろうとのことだった。
- 『サラサラ読めるのにジワッとしみる「マーケティング」のきほん』
- 『ノヤン先生のマーケティング学』
- 『BtoBのためのマーケティングオートメーション 正しい選び方・使い方 日本企業のマーケティングと営業を考える』
- 『究極のBtoBマーケティング ABM(アカウントベースドマーケティング)』
記事執筆者プロフィール
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森田 裕美(Hiromi Morita) プログラマからキャリアをスタートし、外資系企業でマーケティング・コミュニケーション業務全般を経験した後、ウェブ制作会社や広告代理店でウェブプロデューサーとして制作・広告プランニング・分析などを経験。2012年12月に日本初のインバウンドマーケティングエージェンシーであるマーケティングエンジンに参画、セールス&マーケティングを中心にHubSpotのコンサルタント、テクニカルサポート、プロダクトやマニュアルの翻訳などを経験。その後はフリーランスで企業のマーケティング・コミュニケーション業務のサポートやスタッフの教育を中心に、インバウンドマーケティングのサポート、取材やブログの執筆なども行っている。 |