文:山野愛美

2017年7月13日、チーターデジタル主催の「Marketing Forward 2017 ~Summer~ マーケティングオートメーション活用最前線」が都内で開催された。

今回は、レポート第1弾として、パネルディスカッション(基調講演)「テクノロジー導入を先導するリーダーの在り方~先進企業が語るデジタルシフトを円滑に進めるための秘訣とは?~」と、チーターデジタルによる講演「マーケティングオートメーション導入・運用の実態~導入前に知っておきたい導入企業がすべき全業務を事例を基に徹底網羅~」の内容をご紹介する。

パネルディスカッションでは、オムニチャネルを実践している企業としてスターバックスコーヒージャパン デジタル戦略本部 デジタルマーケティング部 部長 長見明氏、パルコ 執行役 グループICT戦略室担当 林直孝氏、モデレーターの日経BP社 日経デジタルマーケティング/日経ビッグデータ発行人 杉山俊幸氏によってスターバックスジャパンとパルコそれぞれの取り組みの話が展開された。

パネルディスカッション(基調講演)の様子
パネルディスカッション(基調講演)の様子

投資効果とスピードを重視しつつ、顧客との直接的なコミュニケーションで信頼を築く

スターバックスジャパンの長見氏は、現状のデジタルマーケティングへの取り組みについて目指すところを3つ挙げた。
1つ目は、無料でお客さまと連絡が取れるリーチを最大化し、メディア投資効果をあげること。
2つ目はビジネスモデルを新たに構築すること。例えば、スターバックス カードやStarbucks eGiftは事前にお金をお預かりするのでキャッシュフローの効果が高く顧客の流出防止になる。また、オンラインストアやカフェ以外でのビジネスモデルも複数進めている。
3つ目がデータ精度を良くしてビジネスのスピードを上げることである。

一方、パルコでは、林氏によると、2012年あたりに経営から「お客さまとの接点がメールから直接やり取りして信頼を築くSNSにシフトしてきている」という話があったことがきっかけで、そのころから本格的にデジタルマーケティングの部隊を作って対応を始めたという。それまではデジタルは子会社が担っていて、社内には知見がなかった。
そして、SNSでお客さまとの信頼を築いているところを意識してLINE、Facebookなどを開始した。また、テナントのスタッフが自ら情報発信をできるプラットフォームを3,000店舗分用意してやりきった。また、ブログ上から直接購入できる「カエルパルコ」も始めた。

左:パルコ 執行役 グループICT戦略室担当 林直孝氏 右:スターバックスコーヒージャパン デジタル戦略本部 デジタルマーケティング部 部長 長見明氏
左:パルコ 執行役 グループICT戦略室担当 林直孝氏 右:スターバックスコーヒージャパン デジタル戦略本部 デジタルマーケティング部 部長 長見明氏

軋轢(あつれき)をなくし成果を出すため、組織体制は柔軟に変える

両氏はデジタルマーケティングを導入する上での組織体制についても語った。

まずパルコでは、林氏によると、4年前にWebコミュニケーション部を6名で作ったのが始まりだそうだ。しかし、マーケティングはデジタルとそれ以外で分けられるものではなく一緒にした方が良いことに気づき、2015年に既存のマーケティング部隊と統合。
また、運用していく中で、店頭からの情報を把握できるように組織体制を変更した。さらにその後、マーケティングとシステムの部門の壁で情報が遅くなることに気づき、デジタルマーケティングと情報システム部門を統合。まずスタートして、課題にぶつかった時々に組織を変革してきたのが5年間でやってきたことだと言う。

スターバックスジャパンの長見氏からも同様に、組織体制はどんどん変えてきたという話が出た。スターバックスジャパンのデジタルマーケティング施策は、もともとはすべてデジタルマーケティング部門で行っていたが、システムやマーケティング部門の繁閑なども考慮しつつ依頼を始めたとのこと。

はじめからベストな形があるわけではなく、組織体制はやりながらその時に一番良いやり方を模索していく必要があるということだろう。

自社の状況に合わせた施策の優先順位づけを

スターバックスジャパンの長見氏に対して、モデレーターの杉山氏から、「なぜスターバックスはアプリの導入が2016年になったのか」という質問があった。

長見氏によると、スターバックス カードやECなどのお客さま向けのサービスの方がアプリよりも優先順位が高かったからだという。人とお金が限られている中、他社がやっているからといって取り組めばいいわけではなく、スターバックスジャパン内で優先順位をつけてサービス改善に注力すべきと考えた。また、アプリは他の会社がやっているからこそ、他社と異なる形で作らなければならないと考え検討を重ねた。その結果として2016年になってしまったとのこと。
モバイルオーダーについても他国では導入されている国はあるものの、「製造が間に合うのか」、「店舗設定の意図は崩れないか」などの課題が出てくるため、日本ではどうするのかを模索しているそうだ。

また、パルコの林氏によると、パルコではアプリはデジタルマーケティング施策の中でも優先順位が高いと考えて、もともとの予定よりも早い2014年にローンチをしたという。ニールセンのデータで、スマートフォンの時間の使い方は、Web3割、アプリ7割と言われていたためリリースの予定を早めたと言う。

他社や他国がやっているからやるというのではなく、「自社で本当に優先順位の高い施策なのか」、「現場のオペレーションは問題ないか」など、さまざまな要素を勘案した上で施策を実行すべきということだ。

テクノロジー導入を進めるリーダーは、幅広く勉強すべき

最後にテクノロジー導入を進めるリーダーの要素について意見を述べられた。

スターバックスジャパンの長見氏によると、「デジタルマーケティングはプログラムで動いており、それを知らないでは済ませられない。また経営についても、経営者と同じレベルの知識範囲は必要」との話があった。テクノロジーを先導するリーダーは、同時に経営ができるくらいのノウハウや知識のある人である必要があり、その人をどうやって育成していくのかが課題とのことであった。

パルコの林氏によると、テクノロジーを先導するリーダーは、パートナー企業との関係の築き方が重要になるため、どのように関係性を築いているかが重要とのことであった。また、「パートナー企業と対等に会話できるだけの専門知識があるべき」とのことであった。

長見氏、林氏ともに、「リーダーは勉強しなければいけない」ということで話がまとまった。

続いて、チーターデジタル クロスチャネルマーケティング部 ソリューション営業 マネージャー 是枝達彦氏による講演「マーケティングオートメーション導入・運用の実態~導入前に知っておきたい導入企業がすべき全業務を事例を基に徹底網羅~」では、導入~ローンチ~運用の道のりの中でMA導入のポイントが紹介された。

MA導入における3つの成功ポイント

チーターデジタル クロスチャネルマーケティング部 ソリューション営業 マネージャー 是枝達彦氏
チーターデジタル クロスチャネルマーケティング部 ソリューション営業 マネージャー 是枝達彦氏

1)MA導入の目的、必要なスキルとリソースは明確に
是枝氏によると、MA導入が失敗するプロジェクトは、目的が「MAの導入」になってしまっていることが多いという。導入の目的は、「レコメンドメールを送りたい」などの手段でもなく、まず「顧客が求める情報を配信することで長期的な関係を構築する」などの目的があるべきで、その後、施策の実行、最適化と順を追って考えていく必要がある。
そうでないと、運用体制やKPI設定などを誤り、プロジェクト自体が失敗する可能性が高くなってしまう。つまり、MAを導入する目的を明確にした上で、ツールや機能を理解しつつ実施施策を企画すべきで、そのためのスキルやリソースを予め社内で準備する必要があるということだ。

2)MAベンダーから受けられるサポートを把握しよう
またMA導入の目的が明確になったら、MAベンダーから受けられるサポートをしっかり把握しておく必要があるとのことだ。特に、運用フェーズに入ってから、すべてのサポートが有料であったり、サポートセンターが海外にあるため質問の回答に時間が掛かるなど、せっかくコストをかけて導入したMAツールの効果的な活用を妨げる要因が多数考えられる。そのためMAベンダーのサポート範囲・内容を事前にきちんと把握することが重要である。

3)外部ステークホルダーは極力集約しよう
さらには、MA導入にあたって、ツール提供・導入サポート・運用サポートをそれぞれ別のベンダーから受けるケースがよく見受けられる。この場合、それぞれの企業との間でコミュニケーションコストが発生したり、導入サポート時に要件定義されたことが運用フェーズで実現できないなどのリスクが発生することがある。そのため導入から運用までのサポートを全て一社から受けることが好ましい。さらには、導入後も一貫したサポートが受けられるかもあらかじめ把握しておきたい。

チーターデジタルなら一気通貫で運用フェーズもサポート可能

チーターデジタルは、導入時のサポートから運用時のサポートまでを一社ですべて対応している。ビジネス要件定義の段階からプロジェクトをクライアントと一緒に進行しているため、運用フェーズでの施策実施の際も本来達成したい目的を多角的に分析した提案を行うことができる。またサポートセンターも国内且つ自社内に保有しており、メールだけでなく電話の問い合わせにも無料で対応する。

さらには、「コンサルティング」、「クリエイティブ制作」、「運用代行」の3つのプロフェッショナルサービスを提供しているのも特徴の一つであり、実際にMA導入後にスマートフォンのクリエイティブ改善を支援し、CTRや売上をアップすることに成功した事例などが紹介された。

続くレポート第2弾では、実際にMAを導入した企業の体験談をご紹介する。

 

記事執筆者プロフィール

山野 愛美(Ami Yamano)

コンサルティングファームでIT・業務、経営戦略のプロジェクトを幅広く歴任した後、事業会社でWebサービスのプロデューサー職として事業の立ち上げを担当。その後に独立し、現在はデジタルマーケティング領域などでコンサルティングやライティングの仕事を行っている。