文:山野愛美

コンテンツマーケティングやSEOなど、Webマーケティングにおける問題解決を行う株式会社Faber Company。今回は、同社エグゼクティブ・マーケティング・ディレクターである月岡 克博様(以下、敬省略)に主力ツールである「MIERUCA(ミエルカ)」の現状や今後の展望についてお話を伺った。
社名に込められた「職人」集団でありたいという想い
椎葉:Faber Companyさんとは、すでにプロジェクトでご一緒させていただいており、MIERUCAも活用していて、会社や業務内容についてもある程度は理解しているつもりですが、本日のインタビューは何も知らない前提に立って進めようと思います。
ということで(笑)、まず、社名の「Faber Company」にはどういった意味が込められているか教えていただけますか?
月岡:Faber Companyは今年の10月で13期目を迎えました。創業当初からFounderの古澤がアフィリエイト事業で培ったSEOやWebマーケティング技術を広く、いろいろなお客様に提供したいという想いがありました。もともとはセルフデザイン・ホールディングスという社名でしたが、2014年に創業10年の節目を迎え、社名変更とCIも設定し、Faber Companyになりました。
Faberはラテン語で「職人」という意味です。当社には海外SEO情報ブログの鈴木謙一などSEOをはじめ、様々な分野のプロフェッショナルがおり、彼らのことを「職人」と呼んでいます。専門的な知識やノウハウを保有した「職人の集まり」でありたいという想いから、社名をFaber Companyとしたんです。
椎葉:カタカナではなく、アルファベット表記が正式なんですね。読めない人も多いのではないですか?
月岡:そうですね。はじめての人には「フェイバー」と言われることもあります(笑)。CIを設定したのと同時に社名も決めましたので、かなりコダワリがあるんですよね。社名変更当初はカタカナで書いてしまう社員もいたのですが、厳しく訂正指導されましたよ(笑)。
曖昧だった「良いコンテンツ」の定義をMIERUCAで提示
椎葉:Faber Companyさんの主力ツールであるMIERUCAについてお聞きしたいと思います。MIERUCAをリリースされたのはいつ頃ですか。
月岡:2015年3月です。
椎葉:もっと前からのように思っていました。実は、弊社がFaber Companyさんを知ったのはクライアント企業からの紹介でした。コンテンツのテーマ出しなどに使えるツールがあるということで教えていただいたのが始まりです。使ってみたところ使い勝手が非常によく、他のクライアントでも活用させていただくようになり、弊社自身でも導入してオウンドメディアでのコンテンツ作りやクライアントへの提案などで活躍しています。
やはりわれわれ自身が知らないとクライアントにもおすすめできないですからね。
ちなみに、今、アカウントはどれぐらい発行されているのですか?

月岡:アクティブなもので800アカウントを超えました。
MIERUCAができた背景についてもう少しお話させていただきますね。
世の中でコンテンツマーケティングと言われ始めたのが今からちょうど3年ほど前です。その1つの要因としてGoogleアルゴリズムのアップデートがあり、従来のSEO手法が通用しなくなってきたことが挙げられます。「被リンクはダメだ、時代はコンテンツだ」となってコンテンツの重要性が語られるようになったんですね。
ただ、弊社は昔からコンテンツの重要性に気が付いており、力を入れていました。職人たちが検索される「言葉」に着目して研究し、実践を重ね続けてきた会社だという自負もあります。そこで培った「ノウハウ」や「職人技」をテクノロジーと融合させることで、広くWeb担当者さんに使ってもらえるようにしたいというのがMIERUCA誕生に繋がっています。
MIERUCAは良いタイミングでリリースできました。みな「ユーザーのためになる良いコンテンツを!」とは言うものの、どういったコンテンツが良いのかという判断基準を提示しているところは少なかったと思います。MIERUCAはツールとして、そこに一定の解を示すことができたのでご評価いただけているのだと考えています。
なので、SEOやコンテンツマーケティングについて取り組んできた方には、高く評価いただけることが多いですね。かなり作業が楽になるので(笑)、今後もどんどん活用していただきたいです。
椎葉:MIERUCAで何ができるのかについて詳しく聞かせてもらえますか。
月岡:MIERUCAには大きく分けて2つの機能があります。検索される言葉や評価されているコンテンツを分析し、ユーザーにとって有益な情報提供になるよう支援する機能が1つ。もう1つはGoogle AnalyticsやSearch Consoleなどの解析ツールと連携し、Webサイトやコンテンツの改善ポイントを素早く発見し、打ち手のヒントを提示してくれる機能です。
思いつきでコンテンツを作るよりも、ユーザーが検索している言葉をもとにコンテンツを作った方が検索ニーズに応えるコンテンツを作れます。多くのクライアントでは、コンテンツの企画制作や改善に役立てていただいています。
例えば「糖質制限 おやつ」と調べているユーザー向けにコンテンツを作るとします。
このテーマを1本のコンテンツで語るべきか、複数コンテンツで語るべきかというのは、ぱっとわからないと思うんですね。
MIERUCAではこれを見出してくれる「インテンショングルーピング」という機能があります。

(※画像クリックで拡大)
このように「言葉のカタマリ(円)」が「ニーズのカタマリ」になるのですが、以下のように読み取れます。
- 「おすすめ」「チーズ」など、基本的な糖質制限おやつの情報(画像左上)
- 「市販」「通販」「コンビニ」など、どこでどんな糖質制限おやつが買えるか(画像下)
- 「手作り」「レシピ」など、自分で糖質制限おやつを作りたい(画像右上)
この3つのニーズに大別されるので、おおよそ3本のコンテンツを書けばユーザーニーズはほぼ網羅できるんじゃないかな、ということがわかります。
椎葉:なるほど便利ですね。少しツールの開発の話を聞かせてください。例えば今ご説明いただいた機能でもそうだと思うのですが、そのようなロジックを考え作り上げることと、それをシステム化することとは別の能力だと思います。どのようにしてロジックをツールに落とし込んでいるのですか?
月岡:私たちは「職人」が日々実践して成果を残してきたノウハウや技を、どのようにツール化できるかを考えています。そうした職人たちの存在と、新たなチャレンジにご協力いただける多くのクライアントさまがいるので、実際の「現場」を観察しながら高速で開発を進めて行く体制があり、それが強みです。
椎葉:このように数値化、指標化するのはそうたやすくありませんよね?
月岡:要素技術の部分では、大学の先生にもご協力いただいています。MIERUCAは産学連携で開発していまして、豊橋技術科学大学の吉田助教が共同研究者です。吉田助教との出会いもMIERUCA開発に大きく影響しています。いまでは明治大学の高木教授、東京大学の中川教授にも顧問になっていただいて、開発を進めています。
また、当社CAOである小川卓のWebアクセス解析ノウハウもMIERUCAに反映されています。アクセス解析といえば、Google Analyticsで行う会社が多いかと思いますが、どこをどう見たらいいのかわからないという方も多いのではないでしょうか。実際にいろんなWeb担当者さんとお話をしていても、PVやUUをチェックしている程度で、分析結果を改善のアクションにつなげられてないといった悩みもお聞きします。
MIERUCAでは「4つのチカラ(指標)」に絞って解析します。
多くのユーザーを集めているかを「集客力」、きちんとコンテンツが読まれているかを「閲覧力」、サイト内で回遊を生み出しているかを「誘導力」、最終的なコンバージョンに結びついているかを「成果力」としています。
それらをすべて偏差値でシンプルに表現し、どこに問題があるか、何を改善すべきかを発見しやすくしています。また、SEOレポート機能やベンチマークサイトのパフォーマンスもチェックできるので、レポーティング作業も軽減できるはずです。
最近だと、「AIで改善」という機能もリリースしました。Google AnalyticsやSearch Consoleで得られる大量データをMIERUCAが自動で解析、どのページをどのように改善すべきか教えてくれるものです。
今後は、プラットフォームとして、ツール、学習コンテンツ、コンサルティングの三位一体ソリューションに

椎葉:MIERUCAはいろいろなことができるので、具体的なワークフローとセットでないとなかなか導入しづらいのではないかと思うのですが、そのあたりはいかがでしょうか。
Faber Companyさんのビジネスという視点で、MIERUCAからの離脱を阻止するためには、ツールと合わせてワークフローのパターンも提供し、ある程度自走できるようになるまではコンサルティングも行うということが求められるのではないかと思いました。
クラウドサービスの場合は継続率が重要でしょうから、新規のアカウントを増やしつつ継続率も維持し、ツール提供の収益で回していくのが御社の理想とするビジネスモデルなのでしょうか?
月岡:そうですね。継続率は重要ですね。継続していただくためには、MIERUCAユーザーのみなさまには成果を出してもらわなければなりませんので、専任チームの「カスタマーサクセスチーム」がクライアントさまの支援を行っています。個別のフォローはもちろん、「ミエルカ大学」というコンテンツ制作のイロハをお伝えするユーザー限定セミナーやSEOが学べるセミナーなども数多く用意しています。その効果もあってか次々に成功事例が生まれてきているので、それらを共有、公開したり、ユーザー会で発表してもらったりなどの活動も大事ですね。
椎葉:こういう課題がある場合には、こういう使い方で成功しているという具体例が出てくると、クライアントにも提案しやすいです。
月岡:はい。それらも考慮しまして、MIERUCAは単なるツールとしてではなく「SEOプラットフォーム」として今後事業展開していきます。
最近はWebマーケティングやコンテンツ制作体制を「インハウス化」したいというご要望も多くいただいており、そうした流れもあると感じています。当社は「ツール」提供だけではなく、クライアント担当者さんがご自身でSEOやコンテンツについて学ぶことのできる「学習コンテンツ」、ハンズオンで支援する「コンサルティング」の三位一体でインハウス化を支援し、“日本一活用される”SEOプラットフォームを目指したいですね。
Webサイトを訪れた1ユーザーにどのような「おもてなし」ができるかが鍵になってくる
椎葉:アカウント数、成功事例ともに増えてきていると思うのですが、次のステップに向けての動きはあるのでしょうか?
月岡:今後は、Webサイトを訪れた1ユーザーに対してどういった「おもてなし」ができるのかがキーになっていくはずです。そこまで見据えたソリューションにしていきたいですし、ツールとしても新機能を開発しているところです。
椎葉:Googleをはじめとする検索サービス自体もまだまだ変化しそうです。すでに見えてきているものとして、音声検索と検索結果のパーソナライゼーションが挙げられると思います。
iPhoneのSiriはすでに使っているユーザーも多いでしょうし、Google HomeやAmazon Echoなどのスマートスピーカーが普及してきそうです。また、例えば、「和食」と検索する場合でも、ランチタイムの赤坂と、夜の銀座とで違った結果を表示するというようなことは、位置情報や検索時刻などの情報を活用すればすぐにできそうです。
このような検索サービスの進化への対応はどのように考えていますか?

月岡:ユーザーがどういう意図で検索しているのか、どのような情報を求めているのかを突き詰めて考えていけば、Googleの発表に右往左往しなくてもいいと思っているのですが、「検索のあり方」は変わっていきますよね。
Google Homeの話もありましたが、すでに全世界の20%ほどは音声検索になってきているそうです。日本でもGoogleがCMをやっていますが、音声、つまり話し言葉での検索が増えるということは考慮できることじゃないでしょうか。そうした変化には対応していかないといけないですね。
椎葉:検索サービスの進化に合わせてツールをアップデートするだけでも大変ですね。
月岡:そうですね。やはり「スピード感」は大切にしています。ただ音声検索にしてもパーソナライズされた結果表示にしても、「ユーザーにとって最高の検索体験を提供したい」というところは変わりません。結局は「ユーザーのためのコンテンツやWebサイト」を作り、改善していく機能を充実させていくことが重要だと考えています。
ただ「コンテンツ」を自動で作るのはまだ難しい。ユーザーニーズ調査や分析など時間はかかるが重要な作業はツールに任せられて、ヒトはコンテンツ案を作ったり、打ち手を考えたりするところに時間を使ってもらえるようにしていきたいと思います。先ほどの「AIで改善」機能もその一環で開発されたものです。
椎葉:MIERUCAもまだまだ進化しそうですね。これからも楽しみにしています。
株式会社Faber Company
https://www.fabercompany.co.jp/
コンテンツ&SEOプラットフォーム「MIERUCA」
https://mieru-ca.com/
記事執筆者プロフィール
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山野 愛美(Ami Yamano) コンサルティングファームでIT・業務、経営戦略のプロジェクトを幅広く歴任した後、事業会社でWebサービスのプロデューサー職として事業の立ち上げを担当。その後に独立し、現在はデジタルマーケティング領域などでコンサルティングやライティングの仕事を行っている。 |