文:山野愛美

2017年12月7日に開催されたブレインパッド主催の「Probance Day 2017」。

レポート1で紹介したWOWOWに続いて登壇したのは、 高島屋 クロスメディア事業部カタログ・ネット・テレビ販売部 ネットチャネルグループ 次長 グループマネジャーの長峰崇氏だ。

レポート1同様、登壇者の長峰氏を主語として、講演内容をレポートしたい。

高島屋 クロスメディア事業部カタログ・ネット・テレビ販売部 ネットチャネルグループ 次長 グループマネジャー 長峰崇氏

ギフトNo1のサイトへの起爆剤に。Probance選択の理由と経緯

今は、Probanceを導入して半年が経過したところです。本日は、運用メンバーがなぜProbanceを選んだのか、そして、半年間運用してみての感想を紹介したいと思います。

まずは高島屋のサイトを紹介させていただきます。高島屋グループにおいて、商品を販売するECサイトは大きく分けると下記の6つとなります。

1.高島屋オンラインストア
2.カタログ通販:タカシマヤ通信販売
3.食品宅配:ローズキッチン
4.外商お得意さま:e-Salon
5.ファッション:タカシマヤファッションスクエア
6.モール出店:dショッピング、楽天市場、アマゾン

本日は、Probanceを導入した高島屋オンラインストアについてお話をしたいと思います。
高島屋オンラインストアはクロスメディア事業部のネットチャネルグループとシステムグループが協力しながら運営しています。
高島屋オンラインストアの売上は6年間(2011~2017)で2.5倍になりました。スローガンは、「Amazonさんや楽天さんと一線を画して、ギフトNo1のサイトを目指す」です。

Probanceに決めるまで

●2015年7月 MAツール導入の記事の閲覧
日経MJに千趣会のメールカスタマイズについての記事が掲載されていました。弊社では、まだMAツールの導入を見送っていて、3ヶ月あとの10月にシステムリプレイスを控えていていた中での出来事でした。
すぐにツール提供会社へアポイントを取り、経営にレポートしました。MAツールの導入について社内が前向きな空気となるきっかけとなりました。

●2015年10月 BIツールを導入
システムリプレイスに伴い、BIツールを新規導入しました。エクセルを使って手作業で行っていたデータ集計が効率化され、データを見る敷居が低くなり、みんながツールを使うようになった結果、さまざまなデータ分析を多面的に、かつ、深堀りできるようになりました。
例えば、高島屋オンラインストアのユーザーを「ギフトのみ」、「自宅のみ」、「ギフトと自宅用の併用」で分類すると、併用の人の継続率が高くなっていることがわかり、ギフトだけでなく、自宅用にも買ってもらうことが重要だと認識しました。
また、顧客とのコミュニケーションツールの中でメールの重要性を再認識しました。弊社では元々メール経由の売上シェア、メール許諾会員の売上シェアがそれなりに高かったのですが、今までは全顧客に対して一律の情報を手動で配信していました。そうした中、顧客毎にカスタマイズしたメールを自動で配信できるマーケティングオートメーションへの関心がますます高まりました。

●2015年12月 情報収集を活発化
資料請求やセミナー参加、MAツール導入済み企業へヒアリングをしました。
お酒のECサイト運営者の方からは、二回目のアプローチでは、クーポンやカート放置、ブラウザ離脱などは即効性があると聞き、MAには鉄板シナリオがあることを学びました。
また、すべてを自動化できるというのは幻想だということもあらためて認識しました。スポーツ系ECサイトでは、シナリオ作成などにもかなりの工数を割いていましたし、かなりスキルの高いエンジニアを配置していることなどもわかりました。

■ツール導入失敗の教訓
MAツールではないですが、ツールについては苦い思い出があります。データ取得などで期待していたことができず、色々とベンダーに掛け合ったのですが「サポート外です」を連呼されてしまい、泣く泣く解約に至ったことがありました。
そのときの失敗から、ツールに何ができるかということよりも自分たちのやりたいことが実現できるかが重要であることと、自社リソースとベンダーサポートの確保が必須であることがわかりました。
また、ツールは、開発元と距離の近いベンダーから買うべきだと考えるようになりました。

■ツール選定のポイント
私たちは、今回は「自分たちのやりたいこと」と「ベンダーさんにしてほしいこと」を明確にしました。やりたいこととして自分たちが思い描いている接客パターンや各種データを具体的に提示しました。その情報をもとに、提案内容を詳しく確認したため、自分たちのやりたいことが本当に実現できるのかを判断することができました。

 

一方で、オンラインストアのサービス拡充にも取り組みました。
●2016年4月 送料無料クーポン導入
●2016年9月 LINE@スタート
●2016年10月 簡易MAツール導入。カート放置やブラウザ離脱へのメール送付(鉄板シナリオ)を開始

MAツール導入だけではマーケティングは未完成です。MAツールを使いながらPDCAを回すことが重要だと思っています。

●2016年12月 Probance Day参加
導入済み企業と開発企業であるフランスのプロバンス社の生の声を聴くことができたのが、大きなメリットでした。プロバンス社とブレインパッドとの距離感を確認できたのも有意義でした。このあたりから、関係者の間ではProbanceに心を決め、会社にどう通すかに注力し始めました。

●2017年1月 Probance導入を決定
Probanceを複数のMAツールの中から選んだ理由は、下記の通りです。
・私たちが考えるシナリオが実現できること
・データのインプット、アウトプットに拡張性があること
・サポート体制が充実していること
・ツールをひとつに集約することができ、効率的で効果的な業務運営につながること
・現場メンバーが使ってみて、使いこなせることを確認できたこと

Probanceをリリースするまで

2017年1月にキックオフをし、4カ月後の2017年5月にリリースしました。

「目的・シナリオ・誰に・いつ・何を」ということを詰めていき、あとは入念な検証を行いました。肝となるのは顧客毎にカスタマイズされた内容を自動で配信することですが、それはまさに接客です。お客さまに適切なタイミングで適切な内容を届けられるかには、とても気を遣いました。ユーザー軸、商品軸などさまざまな軸で検証しました。

具体的には、レコメンドテスト、ボリュームテスト、メッセージテストなど数多くのテストを行いました。

2017年5月30日についにリリース。父の日のシナリオから発動しました。前年購入実績なし・あり、母の日購入実績ありなどの条件でメールを配信しました。実際にツールを使ったのは、若手メンバーであり、エンジニアほどのスキルがなくても使いこなせるツールだと、再認識しました。

Probanceを運用して

現在のシナリオ数は60本以上です。

メール経由の数値(前年同時期対比)は、
・訪問数 +39%
・決済件数 +27%
・売上 +33%
というように大幅に改善できました。

全顧客に対して一律の情報を一斉配信するメールも継続していますが、顧客毎にカスタマイズしたメールのほうが良い数値を出しており、パーソナルな接客がうまくいっていると判断しています。

今後は、現在の結果に満足せず、より高みを目指していきたいと考えています。
具体的には、
・今の施策のチューニング(配信頻度、時間、コンテンツなど)
・多チャネル化の実施(LINEを通じてのパーソナルな接客など)
・サイトコンテンツのパーソナライズ化(サイトやメールの接客の一貫性)
・オムニチャネル施策の具体化(実店舗とECサイトのシームレス化)
などの施策を行いたいと考えています。

 

記事執筆者プロフィール

山野 愛美(Ami Yamano)

コンサルティングファームでIT・業務、経営戦略のプロジェクトを幅広く歴任した後、事業会社でWebサービスのプロデューサー職として事業の立ち上げを担当。その後に独立し、現在はデジタルマーケティング領域などでコンサルティングやライティングの仕事を行っている。