文:椎葉 宏

見込客、あるいは、顧客に知ってもらいたい数多くの情報を掲載しているウェブサイト。サイトを見てもらえれば、自社のブランド/商品に興味を持ってもらえるのに、理解を深めてもらえるのに、より好きになってもらえるのに……サイト運営者には、アクセスを増やしたいという強いニーズがあるだろう。

サイトへの流入経路には、他サイトからリンク、SNSでの投稿から、メールから、商品パッケージのQRコードからなどさまざま考えられるが、Googleなどの検索サービスからの流入も大きな割合を占める場合が多い。

このコラムでは、検索からの流入を増やすための2つの手法である「コンテンツSEO」と「リスティング広告」について関係を整理し、この2つの手法をどのように使い分ければ良いかについてまとめる。

SEMの一部としての「コンテンツSEO」と「リスティング広告」

Googleなどの検索サービスを活用したマーケティングはSEM(Search Engine Marketing)と呼ばれる。

図1. SEMの一部としてのコンテンツSEOとリスティング広告
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SEM(Search Engine Marketing)は、図1のように、SEO(Search Engine Optimization)とリスティング広告に分類できる。

検索結果ページ(SERPs : Search Engine Result Pages)で上位に表示されれば一定の流入を見込めるため、自然検索(Organic Search)での上位表示を狙うために施策を行うというのがSEOだ。
一方、リスティング広告は、特定のワードでユーザが検索した際に表示される広告で、「広告」の名の付く通り費用を掛けて行うものだ。

SEOは、さらに、内部対策と外部対策とに分けられる。内部対策は、上位表示させたいウェブサイトやページ内部の構造やコンテンツを検索エンジンのアルゴリズムに合わせて設定・チューニングする施策群であり、外部対策は、外部、つまり、他のサイトからのリンクを増やす(被リンク)施策群のことだ。

コンテンツSEOは、内部対策の中の一つで、良質なコンテンツを作成し、検索エンジンにわかりやすく伝えることで、検索結果ページでの上位表示を狙うものだ。

このように、コンテンツSEOもリスティング広告もSEOの一部となっているが、コンテンツSEOはコンテンツマーケティングの一部でもあり、リスティング広告は広告の一部でもあるので、図2のような関係になる。

図2. コンテンツSEOとリスティング広告の関係
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コンテンツマーケティングの文脈からコンテンツSEOを考える

コンテンツマーケティングとコンテンツSEOの関係についてもう少し整理しておこう。

コンテンツは幅広く捉えれば、TV、ラジオ、雑誌、新聞などのマスメディア上で展開される場合もあれば、街中の看板や店頭ディスプレイなどストリート上や店舗内のものもあり、それらはSEOとは関係が薄い。
また、ウェブサイト上のコンテンツについても、ブランドの世界観を伝えるため、顧客の利便性を高めるためなど、コンテンツ開発の主目的が検索からの流入ではないものも多く存在する。

そのため、コンテンツSEOは、コンテンツを軸にマーケティングを考えるコンテンツマーケティングの中の一部でしかない。

少し別の角度から整理しよう。

コンテンツマーケティングを基本から考える」のコラムでご紹介したように、コンテンツマーケティングを進める上では、コンテンツを「知ってもらうためのコンテンツ」と「深く理解してもらうためのコンテンツ」の2種類に分けるとわかりやすいと考えている。

図3. コンテンツマーケティングのフレームワーク
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そこでは、「知ってもらうためのコンテンツ」は、ブランドや商品のことを知らない人や、あまり関心がなかった人に、商品を知ってもらったり、興味関心を持ってもらったりするためのものであり、「深く理解してもらうためのコンテンツ」は、ブランドや商品をより深く理解し、親しみを感じていただき、「よし、これにしよう」「また買おう」と思ってもらうことで、購入にまでつなげていくものとした。

次に、この2種類のコンテンツと検索ワードとの関係について考えてみたい。

例えば、Googleでの「肉じゃが レシピ」の検索結果を見てみると、第1位に、キッコーマンの「ホームクッキング」のページが、第3位に、味の素の「レシピ大百科」のページが表示される(2019/2/8時点)。

検索したユーザは、肉じゃがを作ろうと思い、おいしそうなレシピを探している人が多いだろうと想像できる。それに対して、検索上位の記事はいずれも肉じゃがのレシピという答えを提示し、ユーザのニーズに応えている。
その上で、キッコーマンや味の素のページでは、自社のブランドや商品を認知してもらうきっかけにもなっている。つまり、遷移先ページが知ってもらうためのコンテンツとなっていると言えるだろう(もっとも、両社ともあまりにも有名な企業なので「思い出してもらうためのコンテンツ」と言った方が良いかもしれない)。
キッコーマンや味の素がこれらのページを作成しているのは、もちろん生活者に対する価値提供の側面もあるだろうが、一般ワードからの流入獲得も重要な目的となっていると考えられる。

一方、キッコーマンの「特選丸大豆しょうゆ」のページや味の素の「ほんだし」のページは、企業名や商品名での検索が多いだろうが、これら商品詳細ページは、深く理解してもらうためのコンテンツに分類できる。
ただし、こちらの方は、特にSEOのことを強く意識しなくとも自然に上位表示されることが多そうだ。

図3のフレームワークと、コンテンツマーケティング、コンテンツSEOの関係を示すと、次のようになる。

図4. コンテンツマーケティング、コンテンツSEOの位置付け
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コンテンツSEOとリスティング広告の関係

図4では、コンテンツSEOとして、一般ワードからの流入を狙って知ってもらうためのコンテンツを作成することについて述べたが、実際に成果が出るまでには時間が掛かることが多い。そのため、コンテンツSEOに取り組みつつリスティング広告も併用することをお勧めしたい。

なぜなら、リスティング広告とコンテンツSEOとには、それぞれメリットもデメリットもあるが、補完関係にあるからだ。

図5. リスティング広告とコンテンツSEOの関係整理
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リスティング広告では、設定した費用分の効果はすぐに成果として現れるため、短期的な成果のコントロールがしやすいというメリットがある。ただし、当然のことだが、出稿を停止すると見込客の流入が見込めなくなってしまうため、成果を出し続けるには常に予算を投入する必要がある。

一方で、コンテンツSEOの方は、コンテンツを企画・制作し、検索サービスからの流入数を確保するまでには、ノウハウも必要であるし、それなりのコストと時間も掛かるが、いったん自然検索からの流入が始まると中長期的にトラフィックが確保できるというメリットがある。

リスティング広告は消費的な側面が強く、コンテンツSEOは投資的な側面が強い。互いに性格が異なる2つの施策をうまく組み合わせることで、短期的な成果を確保しつつ、長期的な成長も狙うということが可能となる。

 

記事執筆者プロフィール

株式会社スペースシップ 代表取締役 椎葉 宏(Hiroshi Shiiba)

株式会社スペースシップ 代表取締役 椎葉 宏(Hiroshi Shiiba)

京都大学経済学部卒業後、アンダーセン・コンサルティング(現アクセンチュア)戦略グループ、ネットエイジ(現ユナイテッド)事業開発担当執行役員を経て、2000年11月にアルトビジョン(2012年に3社統合し、現チーターデジタル)を設立。アルトビジョンでは、各業界トップレベルの企業のメールマーケティングを、戦略、クリエイティブ、オペレーション、システムの各面から支援。2013年4月より、スペースシップにおいてデジタルマーケティングの戦略立案から実行支援までを行っている。

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