コナカ事例:店舗とオンラインをまたいでシームレスな顧客体験を提供する”DIFFERENCE”

――「Probance Day 2019」レポート1 コナカ

2019/03/22
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文:山野愛美

2019年2月28日、ブレインパッドが主催する「Probance Day 2019」が都内で開催された。
顧客一人ひとりに合わせたコミュニケーション実現のためBtoC向けマーケティングオートメーション「Probance(プロバンス)」を活用しているコナカ、マイナビ、九州旅客鉄道(JR九州)の3社の担当者が、導入背景や実運用で見えてきたこと、その成果について講演を行った。

最初のセッションは、コナカとオールアバウトによる「オーダースーツブランド“DIFFERENCE”急成長のカギはCRMにあり。店舗とオンラインをまたいでシームレスな顧客体験を提供するCRMシステムとは。」だ。

前半では、コナカ ディファレンス事業部 ゼネラルマネージャー 中嶋 傑氏が、“DIFFERENCE“のコンセプトと、それをどのように顧客体験に反映させているかを、後半では、CRM施策をサポートするオールアバウト メディアビジネス本部 プラットフォーム開発部 マネジャー 橋本 智明氏が、CRMのシナリオ作りとProbanceを活用した顧客コミュニケーションについて説明した。

オーダースーツブランドDIFFERENCEのコンセプトとその展開

コナカには、以下の3つの業態がある。

  1. 紳士服のコナカ:郊外型紳士服専門店。売場面積は、150坪程度/店。
  2. SUIT SELECT:都市型スーツ専門店。売場面積は70~80坪程度/店。
  3. DIFFERENCE:オーダースーツ専門店。売場面積は、18~20坪程度/店。

このうち、Probanceを導入しているのは、新事業のDIFFERENCEだ。

DIFFERENCEについて説明する、コナカ ディファレンス事業部 ゼネラルマネージャー 中嶋 傑氏

DIFFERENCEについて説明する、コナカ ディファレンス事業部 ゼネラルマネージャー 中嶋 傑氏

DIFFERENCEは、オーダースーツ需要の高まりを受けて立ち上げられた。
2016年10月に表参道にDIFFERENCE1号店(青山店)をオープンさせ、セミナー開催時の2019年2月28日では54店舗を展開しており、3月には55店舗目(北千住マルイ店)がオープンする。

紳士服のコナカ、SUIT SELECTは、店舗でスーツを売っていくというビジネスモデルだが、DIFFERENCEにおいては、「ショップ/ウェブ2つのツールを融合」させ、オーダーブランドというよりは「オーダーシステム」のサービスを展開していくことにした。分かりやすく、簡単で、誰もが自由に楽しめるオーダーシステムを提供し、今までのスーツ作りとはすべてが違う革新的なオーダースーツブランドを目指す。

このコンセプト実現に向けては、「サイズ感」と「仕上がりイメージ」という2つの課題があったが、サイズ感については、初回は来店してもらいプロのテイラーがフィッティングすることで、また、仕上がりイメージについては、CG技術を活用し、生地素材、着衣時の全身像、対面時の距離感という3つの視点をウェブ上で見せることで克服した。

店舗で採寸して、オンラインでオーダーを楽しんでもらう。単にスーツを売るのではなく、スーツを購入する体験を提供するということを重視したフローとなっている。

ブランド展開におけるキーワードは以下の3つだ。

  1. パーソナライズ:顧客一人ひとりに対して、購入の仕方、接客対応、お渡し方法、着こなしの相談をカスタマイズして行う。
  2. プロセスエンターテインメント:来店から販売までという従来の店舗での対応プロセスを拡張し、採寸の予約から始まり、オーダースーツを渡ししたあとのアフターフォロー、そして再来店までを一連のプロセスと捉える。
  3. アプリケーションスタイル:オーダースーツは「分かりづらい」というイメージがあるので、アプリを導入することによって購入履歴、サイズデータを自分で管理できるようにする。

One to Oneのマーケティングを実現するために、O2Oやマルチチャネルを越えてオムニチャネルが必要だと考えた。ハードの部分であるショップと、ソフトの部分であるオンラインとの両方を、違和感なく顧客に使ってもらうことを目指している。

オーダーは、テイラーと顧客とのコミュニケーションから一つのものを作り上げていくサービスだ。既成品を売る店舗よりも顧客との間に深いつながりがないとこのビジネスは成功しない。
逆に言うと、テイラーと顧客との信頼関係が確立すると、リピート率は非常に高くなる。
そして、その高いリピート率を実現するためには、パーソナライズしたコミュニケーションが必要であり、CRMのシステムを導入する必然性があった。

現在は、さらなるオムニチャネルを実現するために、「AI画像採寸アプリ」を開発し、来店しなくてもオーダー体験ができるサービスを提供しようとしている。

2年後の再購入を見据えたCRM戦略立案とProbance導入

オールアバウトがDIFFERENCEのCRMを支援することになったきっかけは、新ブランドの認知拡大を目的とした、男性向けウェブマガジン「For M(フォーエム)」でのタイアップだった。

その後、「スーツは一度買うと次を買うまでに2年間くらい間が空く。新規のお客さまにブランドを知って買っていただくことも重要だが、一度買ってもらったお客さまにまた次買っていただく2年間のコミュニケーションも非常に重要になる。」という話があり、2年間の顧客とのコミュニケーション、いわゆるCRMの戦略立案や方針策定も支援することになった。

DIFFERENCEのブランドコンセプトや戦略に基づき、CRMの方針は「オーダースーツ体験の価値を向上させるために、顧客ごとに最適なタイミングで最適な情報を提供する」と設定し、モノのレコメンドではなく、あくまで体験やサービスの最適化を方針として決めた。

DIFFERENCE 方針

CRMを実施していくにあたってはツール導入が必要だったが、その中でもProbanceを選定、導入した理由は以下の通りだ。
  ・ブランドが考えるパーソナライズを実現できること
  ・事業フェーズに応じて拡張できること
  ・導入までしっかりサポートしてくれること

2017年2月にProbance導入を決めたのち、ゴールデンウイークまでの春夏の商戦期になんとしても間に合わせたいという事情があり、運用開始を2017年3月下旬と設定して急いで進めた。かなりタイトなスケジュールではあったが、ブレインパッドの細かく丁寧なサポートもあり、なんとか予定通りに運用を開始することができた。

フォローメールによるエンゲージメント強化

運用を開始して最初に実装したのは、オーダースーツの購入顧客に対するフォローメールだ。商品を受け取ってから15日後に、実際に対応したテイラー(名前、顔写真付きで)から顧客宛てにメールを配信するというシナリオを作成した。

メールに購入アイテムを入れ、パーソナライズするということに加え、1番のポイントは、メールの下部に「仕上がりに関しまして気になる点がございましたら、ご購入後1年間は無料で再調整をいたします」という文面を付けたことだ。単にありがとうございましたというだけではなく、より良いブランド体験をしていただくという趣旨を込め、何かあれば再調整するのでまたぜひご来店いただきたいということを伝えた。

このメールのKPIである開封率は、60%を超えている。また、顧客から「〇〇さんありがとうございました。非常にスーツ気に入っています。」といった返信が多く来るようになり、顧客とのエンゲージメントを確立できているという自信となった。

その後、プロセスエンターテインメントをより実現していくために、購買からフォローメールの間のシナリオを追加。購買→N日(商品受け取り)→N+1日(マイページ紹介)→N+2日(シャツおすすめ)→N+7日(コーディネート紹介)→N+15日(フォローメール)という流れとした。

設計する際に重要視したのが、各タイミングで顧客がどういった情報を求めているかということだ。購入直後のタイミングでは、よりサービスを知ってもらうためにマイページの使い方などをご紹介し、さらに翌日には、スーツを買った顧客にだけ、スーツに合ったシャツのおすすめとオンラインでのシャツの購入方法をご案内。N+7日後では、スーツのコーディネートの紹介と、それに関して不明点やご相談ごとがあればぜひ店舗までお越しくださいというご案内。その後、先ほどのフォローメールにつながるようになっている。

現在は、商品を受け取ってから30日後、60日後というところまでの一連の流れを設計し、順次実装を進めているという状況だ。

キャンペーンの企画、実施でCRMを高度化

フォローメール以外にもさまざまな企画やキャンペーンを実施している。

例えば、DIFFERENCEで実施した顧客アンケートの回答の中に、アプリやウェブに関する要望が多数あったため、アプリやウェブの使い方をご紹介するメルマガを送ることにした。
このメールには来店や購入を促すようなメッセージは一切入れていないにも関わらず、結果として、メールからの予約が非常に多く発生した。

また、「月末最終金曜日の夜はDIFFERENCEへ!」というプレミアムフライデーキャンペーンでは、さまざまな企業がキャンペーンを行う中で、DIFFERENCEに来てもらう動機をどう作るか、ということで、以下の2パターンのキャンペーンを企画し、反応を見てPDCAを回すことにした。

  A. スーツオプション無料:ご来店いただいてスーツをお仕立ていただくとオプションが無料になるもの
  B. 来店でクーポン提供:ご来店いただくと、後日クーポンをご提供しますというもの

結果、Bの方がAの3倍の予約率となった。
これだけを見るとオプションよりもクーポンの方が良かっただけのように思われるが、実はBのキャンペーンではもう一つ別の仕掛けを作っていた。

商品の購入者と未購入者(会員登録済み)でDIFFERENCEに期待するブランド体験というのは違うのではないかという仮説のもと、それぞれに対して異なる内容のメールを送ったのだ。
具体的には、購入者には、DIFFERENCEのアイテムを着用して来店していただいたらクーポンを差し上げます、という内容を送り、一方で、未購入者には、店舗に来てはじめての採寸をしませんか?というような内容とした。
このように、一つのキャンペーンの中で相手ごとに異なるブランド体験、最適なブランド体験を提供したところが受け入れられたのではないかと考えている。

Probanceを導入して約2年の運用で、今はメール配信を中心に施策を回しているが、今後はメール以外のチャネル、例えば、アプリのプッシュやその他広告などさまざまなチャネルを使い、顧客ごとにパーソナライズされた最適な体験を提供できるような環境を作っていきたい、として講演をまとめた。

 

記事執筆者プロフィール

山野 愛美(Ami Yamano)

コンサルティングファームでIT・業務、経営戦略のプロジェクトを幅広く歴任した後、事業会社でWebサービスのプロデューサー職として事業の立ち上げを担当。その後に独立し、現在はデジタルマーケティング領域などでコンサルティングやライティングの仕事を行っている。

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