B2B、B2CからB2E(Everything)へ

――「Adobe SUMMIT 2019ハイライト Webセミナー」レポート

2019/04/19
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文:大下文輔

2019年3月にラスベガスで行われたAdobe SUMMIT 2019のダイジェストを、YouTubeのライブ配信によって行うという試みが4月10日に行われた。

解説はアドビの日本人スタッフである祖谷考克氏と磯谷建兒氏の2人。
祖谷氏がSUMMITのオーバービューを中心に、そして磯谷氏が製品のアップデートを中心に話すという構成になっていたが、ここでは、祖谷氏のオーバービュー部分を中心に紹介したい。

アドビの日本人スタッフ 祖谷考克氏 磯谷建兒氏

今年のテーマはCXMによるビジネス変革

昨年のテーマは、エクスペリエンスを自分たちのビジネスとし、それを実現するためのエクスペリエンスメーカーになっていくことであった(Become an Experience Maker)。

そして、それに続く今年のテーマは、Business Transformation through CXM(CXMによるビジネス変革)である。CXMはCustomer Experience Managementの略語のことだ。
アドビのデジタルマーケティングに関わる基本的な考え方は、エクスペリエンスメーカーとして、お客さまのことを本当に考え抜いて、どんなエクスペリエンスが求められているのかを描き、それをうまくマネージしながらビジネス変革につなげていくということだ。

人々はモノを買うのではなく、購入を通じて得られる経験を買うのだ、という考え方が一般的になりつつある。
例えば、旅行業界でも、旅の最中(出発から帰宅まで)だけでなく、旅の前、旅の後を含めたトータルの体験をいかに提供できるかが、大きなテーマになっている。

お客さまの期待をどうやって超えていくのかと言うと、それは、Reimagining the Customer Journey(カスタマージャーニーを見つめ直す)ということだ。

お客さまの体験はデータによって、一人一人に合わせて提供できるようになってきてはいるが、それを大規模で展開していく(Personalized Experience at Scale)ことが求められている。
そしてそれらを、一つ一つのモーメントではなく、最初から最後までの一連のものとして、あらゆるチャネルをまたいですべてのお客さまに対して提供していこう、というのが今のマーケティングの大きなテーマになっている。

CXMの重要な要素

そのために必要なのがCXMである。
アドビは、改めてCustomer Experience Managementを次のように定義した。

・データから顧客一人一人を理解し
・包括的なカスタマージャーニーの
・すべてのモーメントにおいて一貫した
・顧客の期待を超えるエクスペリエンスを提供すること

CXMによる顧客の期待を超える体験に重要な要素を考えてみたい。

まずは、データを通じてお客さまを理解するということには相違ないが、必要なことはそれをリアルタイムで行うことだ。お客さまの状況は刻一刻と変わる。したがって、データから得られたインサイトを踏まえ、アクションにつながる、お客さま一人一人のプロファイルを即時に描いていくことが求められる。

それを大規模(at Scale)で行うためには、人工知能や機械学習を活用して、われわれの創造性や能力を拡張していくことが有効である。

顧客体験を考えるとき、ついつい企業目線、プロダクトアウトで見てしまうが、顧客中心の目線で物事を見ること(Customer Centricity)を忘れてはならない。

さらには、お客さまのEnd to Endのカスタマージャーニーをしっかりと定義して、どこでどのようなアクションをするか、それを整理する基盤(Customer Journey Framework)があるべきだ。

それらに加えて、アドビが重要と考えているのがコンテンツ提供のスピード(Content Velocity)である。
多くの方に、パーソナライズしたエクスペリエンスを届けようとすると、その分だけコンテンツを用意することを迫られる。そして、コンテンツは当然ながら卓越したものでなければならない。どんなにパーソナライズされたとしても、そのコンテンツが魅力的でなければ、決してお客さまの心を捉えることはできないからだ。
つまり、どうやって素早く大量の魅力的なコンテンツをお客さまに提供していけるかという能力も、極めて重要な要素であるとわれわれは捉えている。

アドビは、サイエンスとアート、コンテンツとデータ、その両方を同じプラットフォームで提供できる数少ないプレーヤーであり、Customer Experience Managementのソリューションを提供可能なベンダーだと自負している。

ニュースリリースの目玉はAdobe Experience Platform

実際にはアドビには3つのクラウドのサービス、すなわち、Experience Cloud、Creative Cloud、そしてDocument Cloudがあり、それらを活用してもらいたいが、Customer Experience Managementの推進を強固なものにするために、今回のSUMMITに合わせて、さまざまなニュースリリースが発表された。その主なものを取り上げたい。

まずは、End to EndのCXMプラットフォームになったことである。
End to EndのCXMプラットフォームについて見ていく(図1)。

図1.End-to-EndのCXMプラットフォーム

図1.End-to-EndのCXMプラットフォーム
(※画像クリックで拡大)

昨年、アドビはMarketoおよびMagentoと一緒になった。それを踏まえて、Adobe ExperienceにMarketo EngageというB2Bを中心としたお客さまとのエンゲージメントを進めていくための製品が加わった。
また、Magento Commerce製品によるAdobe Commerce Cloudも立ち上がり、これらを総合して、Adobe Experience CloudはEnd-to-EndのCXMプラットフォームとしての能力が豊かなものとなった。

続いて、今回もう一つ目玉となった発表が、リアルタイムのCDPとして立ち上がったAdobe Experience Platformである。これは、Experience Cloudのデータレイヤーとして、さまざまな製品のインプットとアウトプットをサポートするものである。(図2)

図2.Adobe Experience Cloud

図2.Adobe Experience Cloud
(※画像クリックで拡大)

新しいパートナーシップや、進展のあったパートナーシップ

また、ServiceNowとのパートナーシップを組んだことの発表も注目された。ServiceNowは、IT、人事、セキュリティ、カスタマーサービスまで、企業全体の定型業務プロセスを簡素化し、自動化するシングルプラットフォームを提供しているグルーバルカンパニーだ。
このクラウドサービスを活用することにより、優れた従業員/顧客体験の提供が可能になる。
アドビのExperience CloudとServiceNow Platformの連携は、シームレスなデジタルワークフローをわれわれの顧客企業に提供することができるようになった。
同時に、ServiceNow自体が保有する顧客情報によって、より精緻なお客さま理解につながることが可能となり、結果としてよりよいパーソナライゼーションの実現に寄与できる。

そして、B2Bに関して、MicrosoftとLinkedInとのパートナーシップによるAccount Based Experienceという購買チームに向けられた新しいアプローチの発表もあった。
これはターゲットアカウントをより深くリアルタイムに把握すること、豊富なアカウントプロファイルを活用し、ターゲットオーディエンスをより効果的に特定すること、そしてかつてない精度を活かした、「人中心」のキャンペーンを展開するなどが実現可能となる。

アメリカでは、ストリーミングによる動画配信が広がりを見せているが、テレビへのストリーミングプラットフォームを運営しているRokuとのパートナーシップの発表があった。
それにより、Rokuでストリーミング視聴しているユーザーへ、自社データでのシームレスな動画広告のターゲティングが可能となった。いずれは日本でも強力なツールとなり、ダイナミックなデジタルマーケティングができるようになると期待している。

さらに、昨年発表されたアドビとSAP、Microsoft3社によるOpen Data Initiativeの進展についても発表があった。行動データやCRMのデータを、AIを使って分析した結果、どんなことができるのか、SUMMITではユニリーバのケースを元にした発表があった。

ビジネスはBtoEへ

祖谷氏のプレゼンテーションの最後は、基調講演のさまざまな登壇者の印象的なキーワードの紹介であった。その1つ、アドビのSVP、スティーブ・ルーカス氏はB2Eについて触れている。

B2EとはBusiness to Everythingを示す。BusinessにつながるものがBusinessまたはCustomer(B2B/B2C)に二分されるのではなく、マーケティングがあらゆる人(Everyone)や場所(Everywhere)など、すべてのもの(Everything)を包含してEnd-to-Endで展開されるということを象徴するコトバだろう。

 

記事執筆者プロフィール

株式会社スペースシップ アドバイザー 大下 文輔(Bun Oshita)

株式会社スペースシップ アドバイザー 大下 文輔(Bun Oshita)

大学では知覚心理学を専攻。外資系および国内の広告代理店に18年在籍。メディアプランニング、アカウントプランニング、戦略プランニング、広告効果測定のためのマーケットモデリング、マーケティングリサーチの仕事に従事する。またその間、ゲーム会社にてプロダクトマーケティング、ビジネスアライアンスに携わるとともに、プロジェクトマネージャーとしてISPやネットワークビジネスの立ち上げに参画。
2011年よりフリーランスとなり、マーケティングリサーチやコンサルテーションを行っている。2015年12月よりMarketingBase運営の株式会社スペースシップ アドバイザーに就任。

 

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