わかりやすい文章の書き方 10のコツ」という記事では、ライティングスキルをパワーアップするための方法について一般論をまとめた。

実際にライティングしたテキストは、最終的に必ず何かしらのメディアに掲載されてユーザーに届けられる。
本、雑誌、新聞、ポスター、パンフレット、チラシなどの紙媒体はもちろん、音声化や映像化されて届けられると考えればラジオ、テレビにおいてもテキスト情報は重要だろう(シナリオ、台本、テロップなどの存在を思い浮かべていただきたい)。
また、インターネットとの接触時間が長い今の状況においては、デジタルメディアの存在感は非常に大きく、テキスト情報は画像や動画と共にコンテンツを構成する基本的な要素となっている。

今回は、デジタルメディアにおけるライティングのポイントをメディアごとに解説する。

多種多様なデジタルメディアの存在

今日、デジタルメディアには多種多様なものが存在する。大きく分類すれば、ウェブサイト、メール、SNSなどである。

さらに細かく見れば、ウェブサイトと言っても、コーポレートサイト、サービスサイト、ECサイト、採用サイト、ブログ、コミュニティサイトなど、種類により目的やターゲットが異なるさまざまなものがあり、ライティングのポイントも異なってくる。

メールは、件名と本文とで構成され、プッシュ型であるという構造、特性を意識する必要がある。

SNSの場合、ユーザー同士のコミュニケーションが行われている中に企業も参加しているような状況と考えてよいと思うが、Twitter、Facebook、LINEなどサービスごとにそれぞれ異なるコミュニケーションが要求される。

デジタルメディアごとに、順に見ていこう。

ウェブサイト上でのライティングで気を付けること

まず、どんなウェブサイトであってもその目的とターゲットユーザーが設定されていることを確認したい。ウェブサイトの位置付け、役割によってはさまざまなユーザーをターゲットとしている場合もあるだろうし、ターゲットユーザーをさらに詳細に分類することもできる。

ターゲットユーザーを明確にし、コンテンツやメッセージを最適化するためには、ペルソナ設定を行うことが有効だ。これは具体的であればあるほど良く、その個人の反応が思い浮かぶくらいに対象を絞る。その対象に応じて、細かくかみ砕いて説明をしたり、専門用語を使ったりというようなバランス調整を行う。

ウェブサイトのライティングでは「書き手の常識は読み手の非常識」と考えたい。知らないこと、知りたいことがあるからこそ、当該サイトにたどり着き情報を閲覧しているわけで、情報の非対称性は前提だからだ。
また、ウェブサイトの場合、紙媒体と比較すると明確な目的意識を持って閲覧する人は少ないため、書き手側がモチベーションを高めていく必要があることにも注意すべきだろう。

ウェブサイトの種類を問わず、ユーザーの理解を促し信頼を得るため、表記を統一するなどの細かい点にも気を付けよう。同音同意味の語句について、異なる文字表記がされることがないようにする。「お客様」「お客さま」、「売上」「売り上げ」などは表記が不統一になりがちなので、専用辞書を作成し定義しておくとよいだろう。

ウェブサイトの種類ごとに、気を付けるべきことを4つに分けて説明する。

1.コーポレートサイト

コーポレートサイトの目的は、訪れたユーザーに企業や事業に関する情報を正確に伝えること。そのため情報は正しく、端的に、わかりやすく記載する。固有名詞はすべて正式名称を用いる。Googleマイビジネスに登録している場合、コーポレートサイトの情報を完全一致させると「信頼性が高い」と評価される。

コーポレートサイトで気を付けるべきことは、ユーザーが多岐にわたることだ。顧客、見込客はもちろん、株主や投資家、就職や転職を考えている方、取引先、従業員やその家族、行政機関、地域社会などすべてのステークホルダーが閲覧する可能性も考えなければならない。
ライティングの際には、誰にとって重要な情報なのか、その人は何について知りたいだろうかということを意識する必要がある。ユーザーにとってわかりやすい用語を使用すべきだ。

企業や事業、製品やサービスに関する情報は、自社サイト以外にもインターネット上に数多く存在するが、ユーザーが疑問を持った際に、またはより詳細な情報を知りたいときに訪れるのがコーポレートサイトだろう。それゆえに、コーポレートサイトの情報は常に正しく、最新でなければならない。

2.製品・サービスサイト

コーポレートサイトのステークホルダーの中でも、売上に直結する顧客、見込客というのはとりわけ重要だ。また、企業によっては、製品やサービスの種類が膨大なところもあり、そういった場合には、コーポレートサイトとは別に、製品・サービスサイトを構築していることも多い。

製品・サービスサイトの目的は見込客の育成と顧客接点の獲得をすることだ。
製品やサービスのスペックや特徴を正しく記載することに加え、バリュー、メリット、ベネフィットまでわかりやすく伝える。製品やサービスが、見込客、顧客のどのような課題を解決するのかという顧客視点からのライティングが求められる。
ユーザーが購入、利用後の未来をポジティブにイメージできる表現にすると良い。常に「ユーザーを行動させること」を意識しよう。


3.採用サイト

採用希望者へリクルート情報を提供し、企業の魅力を伝える。企業側としては有望な人材の獲得を目指すことが目的だ。
リクルート情報を正しく記載することに加え、できるだけ明確に入社後のイメージができる表現にする。ここで気を付けるべきなのが、表面的な良い条件ばかりを並べてはいけないということ。ネットネイティブ世代は検索して出てきた情報を読み取り、想像する能力が比較的長(た)けている。そのため現実味を感じられないと、不信感を抱いてしまう。
これを防ぐためには「弊社は、皆の仲が良い明るくにぎやかな会社です!なので、静かな環境で一人モクモクと作業したい方には向かないかも……」といったように表現を調整する。むやみに取り繕うのではなく、自社のありのままを伝える。
応募者数を増やすことも求められるが、それよりもスクリーニングの精度を上げることの方が重要だろうから、採用担当部署と緊密に連携して言語化を進めたい。

4.ブログ

企業から発信する情報でありながら、ややフランクな内容や表現が許されるのがブログだろう。とは言え、もちろん企業の打ち出している方向性から外れたり、品格を傷つけたりするようなものにならないようにする必要がある。さまざまなメンバーが順に記事を書くスタイルにするとしても、広報的なチェックは必須と考えるべきだ。

ブログやまとめ記事は「集客窓口」として機能すべきなので、ライティングではSEO(Googleなど検索サービスでの上位表示によるトラフィック創出)を意識すべきだろう。一方で、ユーザー目線で役に立つ、ためになる、悩みを解決する、面白い情報が得られる記事になっていないとせっかく来たユーザーをがっかりさせてしまうことになる。

ターゲットユーザーと達成したい目標を設定する際には、ブログやまとめ記事の場合は抽象的で良いだろう。数字を固めてしまうのではなく「料理初心者の方にこの記事を読んで当社製品のフライパンに興味を持ってもらう」などの定性的な目標だ。

SEOに強い記事を作成するためには、検索クエリを意識したキーワードを選定する必要がある。代表的なツールとしては、Googleキーワードプランナー、ウーバーサジェスト、MIERUCAなどが挙げられる。
また、そのキーワードを含めた記事タイトルをつける。Googleの検索結果には30~35文字程度しかタイトルが表示されないため、キーワードは30文字以内に含めると良い。
見出しと本文にも含めるべきだが、無理に入れてわかりづらい文章にならないよう注意する。

構成は記事を書く前に決めておこう。こうすることで、内容の抜け漏れやダブリを防いで伝えることができる。一般的に、記事の流れは下記のようなものが多い。

〈例〉
タイトル→画像→導入→目次→結論→理由→まとめ
(※この「結論→理由→まとめ」の部分に、見出し、小見出し、本文、画像などが入る)

構成が決まったら、要点を箇条書きにしてからライティングに移る。
要点は見出しにもなる。これからライティングする内容を思い描いて要点を書きだし、本文を最後まで書いてから見直す。その本文の中から一言で表せる、あるいは引きの強そうな箇所をピックアップして、見出しとすると良い。

ブログやまとめ記事は、他のメディアよりも比較的長い時間「文章を読む」もの。
ひらがな、カタカナ、漢字の割合を工夫し、流し読みできるくらいにユーザーがストレスを感じないようにする。黄金比は、ひらがな7割、漢字2割、カタカナ1割だ。ウェブ上の記事のみでなく書籍や新聞でもこの割合が意識されている。

メール(メルマガ)のライティングにおけるポイント

メールにおけるライティングを考える際に重要なのは、メールの構造だろう。仕事上のやり取りであれば読まないということはないだろうが、企業が送るメルマガなどの場合、ユーザーはまずメールの差出人や件名を読んで気になれば開封して本文に進む、という流れになる。
そのため、まずは開封してもらうための件名の付け方が重要であり、十分に考慮する必要がある。一般的に件名に書いてある情報については、開封してからも読んでもらえる可能性が高い。読ませたい情報は必ず件名に盛り込もう。

また、メールは情報をプッシュ型でタイミングよく送ることができる一方で、多くの情報を掲載できないため、詳細情報の提供や購入や問い合わせの仕組みは、メールから遷移したウェブサイト側の役割となる。
本文のテキスト文書だけを読んで行動を起こしてくれる人はほとんどいない。CTA(コールトゥアクション)という行動喚起エリアをかならず設けて、文言と遷移先URLを設置する。遷移先の情報がユーザーにとって「役に立ちそう」「ためになりそう」「悩みを解決してくれそう」と思わせるライティングにしよう。

1.関係構築が目的

見込客との関係構築が目的の場合、企画する際には雑誌記事が参考になる。コーナーを設けてシリーズとして連載したり、連続するコンテンツを分けて配信したりするなど、前後のメールとのつながりを持たせる。
一通一通のメールでも、本文の各ブロックにストーリー性や関連性を持たせると良い。自然とユーザーが次のブロックを読み進めたくなるように工夫する。

2.セール案内が目的

記載したい情報がセール案内の場合、実店舗やECサイトに誘導する効果的なライティングを心がける。件名の例を挙げるので比較してみてほしい。

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いかがだろうか。具体的に「開催期間」「値引き率」をわかりやすく提示することが重要だ。スマホで閲覧した場合にはメール一覧で表示できる文字数が減るため、より短い表現で伝える必要がある。

3.商品紹介が目的

商品紹介が目的の場合は次のことが言われている。
一般的に女性向け商品は「他者からの評価がどう変化するか」「感情を揺さぶる」ライティングであると良いとされている。
反して男性向け商品は「機能や性質がどう優れているか」「論理的な」ライティングであると良いとされている。※もちろん傾向の話でこれに限ったことではない。
どちらも商品の良さをアピールし、ユーザーに寄り添って悩みを解決しようとするものだが、書き方ひとつで受け手が持つ印象は変わる。

SNSでのライティングで注意すべきこと

ファンやフォロワーとの関係構築の場として有効なのがSNS。ほかのメディアよりも距離が近いことから、楽しんでもらえる、共感してもらえる投稿をすることが重要だ。
SNSでのライティングでは以下の要素に注意したい。

・簡潔、役に立つ、タイムリー、共感、親近感、話題性
・良い「情報発信」と「交流」

一方で、SNSに適さないとされるものもある。一般社団法人SNS エキスパート協会が定める「炎上さしすせそ」を紹介する。こういった内容には十分な注意を図ろう。
さ:災害・差別
し:思想・宗教
す:スパム・スポーツ・スキャンダル
せ:政治・セクシャル(LGBT含む)
そ:操作ミス(誤投稿/誤爆)

1.Twitter

Twitterではユーザーの感情を意識し参加型にすると良い。
文面は強めに言い切る。例えば「~な人は気に入ると思います」より「~だったら絶対におすすめ!」という書き方にする。
情報の正確さも大切だが、タイムリーさとコミュニケーションが要となる場面もある。仮にもし間違っていてもリプライ欄が盛り上がり(=参加型のツイート)、ほかのユーザーの目にとどまるきっかけとなるのもTwitterの面白いところだ。
下記の説明をサンプルツイートとして紹介する。これをぜひ、タイムラインに流れていると想像して読んでみてほしい。

(※画像クリックで拡大)

いかがだろうか。非常に簡潔で、スクロールやスワイプで閲覧していても自然と目にとまるのではないだろうか。ツイートの幅を縦にとれば、その分タイムラインで目立つことになる。

2.Facebook

投稿にはタイトルをつける。一行分の文字数である25文字以下が望ましい。改行と空行を適度に使い読みやすい文面を心がけよう。また、ややフォーマルな雰囲気を持つSNSのため情報の正確さはマスト。
Facebookに関しては、「共感したらいいね!やシェアをしてね」などのアクションの呼びかけは控える。実はFacebook独自のアルゴリズムにより、表示優先度が不利になるのだ。

3.LINE

LINEの公式アカウントは、実際の友だちとまったく同じように表示されるフラットさがあるため、その距離感の近さを利用する。情報を押し売りするのではなく「友だちだから有益な情報を教えるね」といった姿勢でライティングしよう。
また実質上の削除であるブロックをされないようにする。具体的な策としては、「通知が多いと感じた方はOFFにしてね」と最初にメッセージを送る、定期的にお得なクーポンを配布するなどが挙げられる。
ファーストビューは最後のメッセージ(最新のメッセージ)だということも忘れないようにしよう。公式アカウントでは画像が使われることが多いので、最初のメッセージは埋もれてしまい、スワイプなしでは見られなくなってしまう。どんな順でメッセージを送るのか考慮する。

以上のように、一言でデジタルメディアと言っても各媒体によってライティングで気を付けるべきことに大きな違いがある。わかりやすい文章を書くことに加えて、効果的な文章を書くということにチャレンジしていただきたい。

ここに挙げたこと以外にも、実際に各媒体の文章をチェックして共通項やポイントとなる部分をあぶり出すとよいかもしれない。良いコンテンツには必ず、良いなりの理由が存在する。ぜひその「理由」を見つけ出して、ウェブライティングのノウハウを向上していってもらいたい。

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